第49話 聖者戦3:無敵騎士召喚呪文


 ドズゥゥン……!


 ドズゥゥゥゥン…………!


 重低音が近づいてくる。


 分かってきた。


 それは超巨大な足音だった。


 波を引き起こしながら、それは闇から姿を現した。


 騎士姿の巨人――。


 背丈は教会の鐘楼ほどの高さはある――。いや、もっとだろうか? 建物10階分ほどの高さはあるかもしれない。


 巨大な建造物が鈍色の鎧をまとい、大剣を握って歩いてくるようだった。


 兜のバイザーの向こうのがらんどうの空間に、魔力の光が灯っている。


 私はこの騎士が何なのか理解出来た。


 こいつは土人形召喚呪文サモン・ゴーレムの最高位呪文。


 無敵騎士召喚呪文アルマダ・ナイトリアの騎士ゴーレムだ。


「ごくり……」


 私は騎士ゴーレムを仰ぎ見ながら、手のひらを目の前に持ってきて、人差し指と中指の間から透かし見て、ステータスを確認した。




『ニャニャン式・無敵騎士ゴーレムアルマダナイト

 戦力:1000000

 耐久:1000000』


  


 あ―――――っ! ダメだこれ! 絶対かなわない!


 あの戦力1000000を受け止めるには、こちらに耐久1000000の防御が必要だ。そしてあの耐久1000000を削りきるには、こちらに戦力1000000の攻撃力が必要だ。


 つまりまともに渡り合うには、魔力:2000000が必要になってくる。


 私が目標としている普通コモン級魔道士の魔力が50000だから、普通コモン級魔道士40人ぶんの魔力がいる。 


 私の今の魔力は?


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:6430』


 絶望的な戦力差だった。桁が3つほど違う。


「チエリーさんッ!」


 マリモが水しぶきをあげながら戻ってきた。大盾と長剣を装備して、指示をうかがうように身を寄せてくる。


「あいつには絶対勝てない。戦力差が300倍もある」


 私は首を振った。


 ドオオオオオオオン…………!


 また一歩、無敵騎士ゴーレムが距離を詰めた。城をぶった切れそうな大剣の間合いに入るのも時間の問題だった。


 ザアアアアアアアッ!


 ククは磔のまま大波をかぶった。


「っ……ぷは! マリモ! チエリー! おまえたち邪魔ですぅ!」


 ククは声を張り上げた。


「今助けますよ、ククさんっ!」


 マリモは今にも猫の足跡を越えそうだった。


「うるさい! 邪魔だから消えろと言ってるですぅ! コヒュー! あたしは自力で抜け出すですぅ! あたしには秘密の力があるですぅ! コヒュー!」


 ククはマリモを牽制するように言った。


「秘密の力? 何ですかそれは!」


「あたしには精霊がついてるですぅ! おまえも知ってるはずですよ! あたしは王家だから! 精霊の力で抜け出すですぅ! コヒュー! コヒュー!」


「ククさん! それはっ!」


「精霊は他の人がいると出てこないですぅ! おまえたち、足手まといだからとっとといなくなりやがれですぅ! ハアハア!」




 その言葉に、精霊さんたちがざわついている。


『どういうこと? 魔力:+1000』


『誰かが守護してるの? 魔力:+1500』『誰の守護なりや? 魔力:+1900』


『あれは嘘だぞ! 魔力:-2000』『我らの名を騙るか? 魔力:-2800』


『違うの! あの子は偽の手紙を書いてるの! 魔力:+3000』


『何々? 魔力:+100』『説明! 魔力:+1000』『今来た。どうなってるヨ!? 魔力:+500』


精霊さんは事情が分からなくて、投げ魔力の評価も賛否分かれていた。




「ククさんっ!」


「早くッッ! ダンジョンの外まで去りやがれッッ!! マリモ! 命令ですよ! あたしは主ですよ!」


「~~~~~!」


 マリモは盾を構え、駆け出した。


 猫の足跡ラインを越えた。


 マリモが水しぶきを上げる。巨大なかぎ針がマリモに向かって吹っ飛んでくる。私は魔法の呪文を詠唱する。


耐久付与呪文ディフェンス・エンチャント!!」


 全ては同時だった。


 


『チエリーヴァニライズ

 魔力:0』


 私はありったけの魔力をマリモに注ぎ込んだ。


『マリモ・マリメッコ

 耐久:10630』


 マリモの身体は魔力の光で包まれて、耐久が10630に上昇した。


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