第43話 告白の結果は? そして騎士ゴーレム召喚

「何です? サボる言い訳にわけの分からないこと言うんじゃないですよ?」


 ククは上目遣いに怪しんでくる。


 今後のこともあるので私はきちんと説明することにした。


「我々魔道士は、精霊さんから魔力をもらって魔法を使うんだ。それを投げ魔力スパチャリオンという。私が首から下げてるこの精霊石が精霊界に繋がってて、語りかけることで精霊さんにアピール出来るんだ」


「ふうん……? ホントですぅ?」


 ククは私の胸元の精霊石を覗き込んでる。


「では、今から始める――」


 私は一呼吸置き、精霊石に手を触れながら語りかけた。


「精霊さん、お願いがある――。


 私は精霊さんに認めてもらえるように、弱きものを救う修行をしている……。


 しかし報酬度外視で依頼を受けてるから、さっぱり金にならなくて、私自身も生活が苦しい――。


 所属ギルドも運営が下手くそで、今にも潰れそうな勢いだ――。


 人助けのためにも資金が必要なんだ。


 この危機を解決するために、宝探しにやって来た。


 建国時代の聖者、ニャニャンの作ったダンジョンだ。


 私はこの探索に挑もうとしているが、圧倒的に魔力が足りない――」


「話長いですぅ! さっさと終わらせるですよ!」


 ククが落ち葉を蹴りながら口を挟んできた。


「いや、ちょっと黙っててくれ。大事なところだから」


「ホントに精霊なんかいるですか? 何も見えないですぅ~~」


 びいん! 


 ククは私のチョーカーを引っ張った。


「おい、無茶するな! あっち行っててくれ!!」


 私はククの方に顔を寄せて、チョーカーが切れないようにした。


 私の瞳の中に、精霊たちのメッセージが降ってきた。


『あっち行っててくれだと? 魔力:-300』『黙ってろ、とも言ったよ? 魔力:-500』『なんか無礼だな。魔力:-700』


 ククに言ったセリフに反応してるっ! しかも失礼な感じになってるゥ――!


「すっ、すまない精霊さん、今のは何でもないんだ。依頼人の女の子が割り込んできて、ちょっとおかしな感じになって――」


 精霊たちに向かって弁解する。


「それは悪口ですか? あたしの悪口を言ってるですか? あたしの頭がおかしいと言ったですぅ!」


 今度はククが反応した。


「あっ、いや。今のは精霊さんたちに説明しただけなんだ。決してきみのことをおかしいと言ったわけじゃ」


「嘘をつくな! 精霊の声なんか聞こえないですぅ! おまえはあたしを頭のおかしな子だって言ったですぅ!」


「そうじゃなくて! これは私の瞳だけに見える情報で!」


「くだらない小芝居をやるなですぅ! インチキ占い師の手口ですぅ! 嘘の儀式で追加料金を取ろうとしてもそうはいかないですよ!」


 ホントひねくれてるなこの子!


「ククさん、落ち着いてッ!」


 マリモが後ろからククを羽交い締めにして、引き離しにかかった。


 ククはチョーカーを握りしめて離さないものだから、私まで一緒に引っ張られた。


「いててててててて! チョーカーが切れる!」


「あっ、すみません、チエリーさん!」


「こいつは信じられないですぅ!」


「ククさん、いい加減にして下さい! 護衛の者を信用しなくてどうするんです! そんなことでは宝は手に入りませんよ!」


「おまえまでこいつの味方をするのかっ! いくらもらったんだッ!」


「何てことを言うんです! もらうわけないでしょう! そのひねくれ心、お直しなさいッ!」


 ギャー!! ギャー!! ギャー!! ギャー!! ギャー!!  ギャー!! ギャー!!  ギャー!! ギャー!!  ギャー!!


 二人は口論を始めた。


 チョーカーは相変わらず握られたままなので、私は至近距離で口論を聞かされて耳が痛くなった。


 瞳に光が走り、精霊のメッセージが届いた。


『話はまとまってからすること。魔力:-100』『チエリーさあ……。魔力:-300』『何か大変だね。魔力:+100』


 なんとなく精霊も察してくれたらしい。


 同情票もちょっとだけ入ったようだ。


 しかし――。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:3900』


 私の魔力は5700から3900へ減少した。


 これ、大丈夫なのか……? 先がだいぶ不安になってきたぞ……。




土人形召喚サモン・ゴーレム!」 


 私は呪文を詠唱した。


 ゴゴン……!


 地面の枯れ葉をかき分けて土人形がせり上がる。


 それは土塊でできた騎士型のゴーレムだった。背丈は私よりも高く、重装備の鎧をまとった騎士そのものだった。


 兜のバイザーの穴からは、眼光のように魔力の光が漏れている。


 召喚に魔力は1000ほど消費した。かなりの消費だが、騎士一人分の働きくらいはしてくれるだろう。


 私はたいまつに火を付け、ゴーレムに持たせた。


「さあ、行くぞ!」


 ククとマリモに声をかけた。


 魔力不足に悩んでいてもしょうがない。手持ちの魔力で何とかやるしかないと思った。


「まあ!」


 マリモは騎士ゴーレムに感心して目を輝かせている。


「コヒュー……!」


 ククは驚きのあまり、喉から変な音を出していた。




 こうしてダンジョン探索が始まる――。


 そしてこれは、底辺魔道士チエリーさんの最後の冒険譚となるのだった――。


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