第34話★精霊さんって何者なの?そして王国の歴史紹介

(チエリーさんのイラストその3)

https://kakuyomu.jp/users/fuwafuwaso/news/16817330651254991024



「最近はギルド畳むのちょっと考えています……」


 受付嬢は力なく言った。


「それは困る、それは困るぞ。私、また変なギルドマスターに引っかかるの嫌だし。私はきみとやっていきたいんだよ」


「私もチエリーさんとやっていきたいです」


 受付嬢は顔を上げた。その瞳は涙で潤んでいた。なんならちょっと痩せたようにも見えた。


 私がモコッチ村へと遠征している往復3ヶ月近く、その間の苦労がしのばれた。


 これはいけない。私に元気をくれていた受付嬢がこんな調子になってしまっては見過ごせないぞ。


 私は唇を尖らせた。


「よし、決めた。次の仕事はお金儲けしよう。報酬がめちゃくちゃ大きい依頼受けて、仲介手数料もいっぱい払えるようにしよう」


 モコッチ村の穴埋めをしたかったし、運営で困ってる彼女の力になりたいと思った。


 私はステータスを確認した。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:11000』


 今の魔力は、騎士22人ぶんほどの戦力に匹敵する。


 これならそこそこ稼げる仕事はできるだろう。


「でもでも。お金目当ての仕事をすると、修行の邪魔になったりしませんか?」


 受付嬢は心配そうに聞いてきた。


 そう――。私は楽な仕事や儲かる仕事を優先させてしまい、精霊に嫌われた過去がある。


 今はその出直し修行の最中。


 人助け最優先で、精霊の信頼を取り戻そうとしているところだった。


「まあ確かに、その不安はあるんだけどさ……。どっちみち私にはゴールドが必要なんだよね」


「財布の中身3000ゴールドですからね……。モコッチ村の帰りで使い果たした感じですか?」


「いや、帰りの旅費すら足りなかった。だから道中で依頼こなしながら帰ってきたんだ」


「それで帰りが遅かったんですね。てっきり吟遊アイドルやってたのかと信じてました」


「やらんから、そんなの」


「チエリーさんがフリルで笑顔で踊ってるところ、すごい想像してました」


「やめてくれ、もぞもぞする」


 私はちょっと体温が上がってしまい、汗を拭った。


「――で、冗談はさておき。私は帰り道も、困ってる人最優先で依頼を受けてきたんだ。行方不明の子どもの捜索とか、野犬ハウンドの討伐とか、いろいろやってきた。そして気がついたんだけど、本当に困ってる人はお金もないんだよね……」


 私は息をつき、渇いた喉をハーブティーで潤した。


 長話をしている間にだいぶぬるくなっていた。


「そこは難しい問題ですねえ……。私も受付嬢しててもやもやしてたんです。お金がない人の依頼は報酬も低いから、依頼が後回しになったり流れたりしてしまいます」


 受付嬢もちびちびとハーブティーをすすりながら言う。


「そういうことなんだよねぇ……。本当に助けが必要な人に、助けが届かないことがある」


「もやもやしますよねえ……」


「で、私は考えた。両輪でやっていけばいいかなって」


「両輪?」


「修行のために、報酬度外視の人助けをやる。その活動資金を作るために、お金儲けの仕事をやる。人助けとお金儲け、両方こなしていけばいいんじゃないかなって」


「あっ、それはすばらしいですねえ……。修道院だってお菓子を作って売ってますし、冴えたアイディアだと思います」


 受付嬢はぱっと表情を明るくした。


「でも精霊さんに理解してもらえるかなあ。そこが不安だ……」


 私は胸元の精霊石を覗き込んだ。窓からの薄明かりを反射して、湖面みたいに輝いている。


「中に精霊さんが見えるんですか?」


 受付嬢は興味深そうに聞いてきた。


「いや……。この向こうがどうなってるかは分からないんだ。私も精霊さんを見たことはない」


「そうなんですね、意外です」


「魔法学園の先生も、精霊教会の司祭様も、誰一人精霊さんを見たことはないんだ」


「へぇ~~」


 唯一精霊に会っていそうなのが、シャフトロニカ王国の初代女王、メルン・シャフトロニカだ。


 メルンの時代、人類は苛烈な魔物の脅威に脅かされ、ほとんど滅びる寸前だったという。


 そこをメルンは精霊と契約を結ぶことで、精霊石と投げ魔力スパチャリオンの仕組みを作り上げた。


 それによって強大な魔力を操る魔道士が生まれ、人類は魔物に立ち向かえるようになったのだという。


 それが学校で習った知識。


 実際私に分かるのは、精霊さんは辛口で厳しいが、心から願えば私の味方をしてくれる――。ただそれだけだった。  




 チチィー……。


 精霊石が共振する。


 私の瞳に、精霊のメッセージが映った。




『両輪、イイネ! 魔力:+50』『心配だ。魔力:+0』『お金稼ぐと人は変わるからな……。魔力:+0』『チエリーを信じる! 魔力:+150』




 何かちょっと心配されてる感じだったけど……。


 半分は応援はされているのが分かった。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:11200』


 私の魔力は、11000から11200に上昇した。 


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