第31話 戦いの行方

魔力充填呪文チャージ!」


 歩き樹木ギリーマンたちは混乱している――。


 が、進撃が止まることはない。


 一度攻撃状態に火が点くと、壊滅するまで動きは止まらないのかも知れない。


 だから、立て続けに呪文を唱える。


球雷投擲呪文グリッチビット!」


 ドオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!


魔力充填呪文チャージ! 球雷投擲呪文グリッチビット!」


 ズウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンッ!


魔力充填呪文チャージ! 球雷投擲呪文グリッチビットッ!」


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!


 3発目、4発目、5発目と撃ち続けた。


「………………」


 魔力15000の球雷を5発も撃った後には、動くものはほとんど見えなくなった。


 歩き樹木ギリーマンの群れには、最初は森が移動してくるような圧力を感じたものだが、いまはもう山火事のあとの炭林みたいになっている。


 畑で、川で、耕作放棄された川向こうの土地で――。


 倒れた歩き樹木ギリーマンが炎と煙を上げている。


歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:15』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:0』『歩き樹木ギリーマン。生命力:20』『歩き樹木ギリーマン。生命力:50』『歩き樹木ギリーマン。生命力:10』


 わずかに残った歩き樹木ギリーマンは、闇に紛れて消えていこうとしていた。


 壊滅状態を理解して、遁走しているのだ。


 さすがに全滅するまで攻めては来ないらしい――。


 私はほっと息を吐いた。


「終わったよ~……」


 家の前で輪になっていた村人たちに語りかける。


「本当に!?」「「「わぁっ!」」」「すごいだ!」「きゃっ!」「おお……」「@#!」


 村人たちは歓喜の声を上げる。


 私は煙突掃除用の手すりを掴み、屋根を降りていく。


 地面に着地して、言った。


「あらかた討伐したけど、ちょっとだけ逃げたやつもいる。これに懲りてもう当分は攻めては来ないと思うけどね」


 わぁっ、と再び村人たちは声を上げる。


「%%$#&!」


 村長さんがぎゅっとハグしてきた。しわだらけの頬が涙に濡れていた。


「ありがとうだぁ~」「魔道士さんありがとうだべ~」


 おばあちゃんたちが次々に抱きついてくる。


「「魔道士さん! 魔道士さん!」」「すごい光ってた!」「聖者様みたいっ!」「あのね! あのね! 私ちゃんと見張ってたよ!」「私も見張ってたよぉ!」


 子どもたちもしがみついてくる。


 小さい子はおばあさんの足をくぐってなんとか私に抱きつこうとするし、ぴょんぴょん跳ねてるし、ハルカはおばあさんたちの上から無理矢理私に抱きつこうとして、私は首が引っ張られて大変なことになった。


「く、苦しい……」


 2重3重に抱きつかれ、よろめいてしまう。


 私は照れくさくも、嬉しかった。下水道のスライム討伐とか薬草採取でこういう目に遭うことないからね。あんまり褒められ慣れてないもんでね……。


 ひとしきり喜びを分かち合ったところで、私は言った。


「今夜は一応警戒して、みんなで一緒に寝ようか。何かあったらまた私が守るよ……」




 そして攻撃の足場にした家に村人全員で泊まった。


 着の身着のままで、万が一に備えて靴も履いたまま、ぎゅうぎゅうで寝た。


「みんなで寝るの楽しいね!」


 モモカは逆に喜んでいた。子どもたちも皆、妙に嬉しそうだった。


 床の上でキツキツで同じ毛布に入って寝ているのだが、それがいつもと違って楽しいみたいだ。


 普段両親がいない寂しさの裏返しだろうか。


 にぎやかに身を寄せ合って過ごす夜に、なかなか寝付けないようだった。




 天井を眺める私の視界に、メッセージがちらちらと降り落ちる。


 精霊が戦いを評価して、投げ魔力を送ってくれているのだ。


『おつかれ……。魔力:+500』『ほっとした。魔力:+700』『お疲れ様。魔力:+1500』『イイネ! 魔力:+800』『討伐完了? 魔力:+500』『朝まで油断するな。魔力:+1500』『守り切れ。魔力:+2000』『また魔物が来たらこれを使うですよ! 魔力:+5000』




『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:12500』


 私の魔力は950から12500へと充填されていった。


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