第24話 精霊さん力を貸してくれッ!
もう日が傾いてきていたので、この日はハルカの家に泊めてもらうことになった。
村長さんが「うちに来い」みたいなことを言っていたが、なまっていて意思の疎通が困難なのでハルカの家に行くことにした。
ハルカとモモカに案内されながら歩いていると、胸元の精霊石が鳴った。
チチィー……。
評価が始まったようだった。
魔物との戦いの後には常にこれがある。
精霊石の向こうにいる精霊さんが、さっきの私の戦いっぷりを評価して投げ魔力を送ってくれるのだ。
戦いで消費した魔力はこの投げ魔力で補充することができるし、戦いっぷりがすばらしければ、消費したぶん以上の魔力がもらえるのだ。
さて、
私の瞳にメッセージが浮かんだ。
『雑魚狩り。魔力:+0』『オーバーキル。魔力:+0』『おつかれ。魔力:+150』
まぁー。分かっていたけどあんまりいい評価じゃないね。
雑魚敵を過剰な魔力で吹っ飛ばしたりすると、精霊さんは退屈して低評価をつけてくるのだ。
で、さっきはとっさの出来事だったので、オーバーキルをしてしまった。
ハルカとモモカを助けたときは、生命力50の魔物を魔力100の攻撃で倒した。
村長さんを助けたときは、生命力100の魔物を魔力200の攻撃で瞬殺した。
だから低評価になった。
消費魔力-300と獲得魔力+150で、差し引き-150だ。
『チエリー・ヴァニライズ
魔力:6290』
私の魔力は6440から6290へ低下した。
でもさあ……、今日の戦いは瞬殺しかないと思うんだけど? 急な人助けに、華麗な駆け引きとか期待されても困るんだけどな? 他にどうしろって言うのよ?
などと心の中でぼやいていると、
「どうしただ?」
立ち止まっている私に気づき、ハルカが戻ってきた。
「あっ、なんでもない。ちょっと戦闘後の手続きがあって……。先に行っててくれる?」
「わかっただ。家はあそこだよ」
ハルカは前方の蔦だらけの丸い家を指差してから、小走りで去って行った。
さて……。
今もらった投げ魔力ではこの先どうにもならないので、私は
それは自分から精霊石に語りかけることで投げ魔力を要請する、積極的な魔力獲得法だ。
上手く精霊さんの心を掴めれば、大量の魔力をもらえる。
私は精霊石のチョーカーを胸元から引っ張り出し、語り始めた。
「精霊さん、お願いがある――。
私は今まで、自分の生活のために働いてるところがあった。楽な仕事、実入りのいい仕事を最優先だった。おかげでしょぼい仕事ばっかりやってたと思う。
でも、心を入れ替えた。生活のための仕事は辞めた。
魔道士の力を――人助けのために使うことにした。
いまはこの通り、辺境の貧乏な村にやって来た。
貧乏で報酬がめちゃくちゃ少ない村だから、赤字覚悟の奉仕活動だ。
討伐報酬は往復の宿賃で完全に赤字だ。
往復60日もかけて歩いて、全然儲けにならないんだ。
こんなに清い仕事をすることはなかなかなかったと思う。
もし往復60日の間、別な仕事で働いていたら、60万ゴールドは稼げたと思う。
それをただ移動に費やしただけなんだ。
これってすごくない?
ただ働きどころかマイナス働きだ。
60万ゴールドあったら何ができたかなぁ……。
王室御用達のスフレを食べに行くのは間違いないし……。おしゃれ工房のティーセット買っちゃうかもな。あと、夏用のワンピースも欲しいんだ。家の引っ越しもできたな。一階が酒場だからうるさいんだよなあ……。
おっと、そんなことはどうでもいいんだ。
精霊さん、沢山魔力を恵んで欲しい……。
この私の清らかな魔物討伐に力を貸してくれッッ……!」
私は祈った。
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