第13話 聖地巡礼
「着いた――!」「すごいっ」「「「「「わぁ――――ッ!」」」」」
前の方で歓声が上がった。
「……?」
ずっと先に目を凝らす。
道は緩い上り坂になっていて、坂の頂点で森が開け、青空がのぞいていた。
その青空の中に巨大な岩山がそそり立っている。
いや、岩山にしては表面がなめらかだし、まるで傘が開いたキノコみたいな形をしている。
「あれが封印された魔物なの……」
シバリンが感嘆混じりに言った。
「魔物? あれが魔物なのか?」
「
「ええ~~。キノコっぽいと思ったら「
私はため息を吐いた。
いにしえの聖者である闇魔道士クロエが魔物を封印した場所――。
てっきり地下とか魔法陣の中に封印したのかと思っていたが、魔物をそのまま石にして封印していたとは。
おそらく
岩山と見間違うような大きさの魔物を、何百年も保つ封印をするとは、いったいどれだけの魔力を使ったのか。
聖者の偉業に気が遠くなる思いだった。
「「「「「わぁ――――い!」」」」」
生徒たちは次々と駆けていき、上り坂の向こうに消えていく。
「シバリンも行くの――!」
彼女も私のそばを離れ、駆け出していった。
道の脇の木陰に、案内板が立っていた。巡礼者用に聖地の解説が書いてある。
私は聖地に足を踏み入れる前に、しっかりと読んでおくことにした。
巡礼とか観光って、こういうのをちゃんと読んだ方が楽しめるってもんだよね。
『聖地案内
シャフトロニカ王国歴一年。
王国を恐怖に陥れていた魔物、
闇魔道士クロエは、封印を長持ちさせるために、石化した魔物の前で大きな音を立てたり、手荒く扱ったりしないようにと土地の者に言い残しました。
以来、その言いつけは受け継がれ、この森は
巡礼の際には決して大きな音を立てないようにしてください』
「へぇ――……」
たぶんあいつらも聖地を知ってるっていうことは、この言いつけも知ってるんだろうけど。
さっき思わず歓声を上げてたりしたから、注意した方がいいかもしれないな。
巡礼の作法は守らないとね。
私は引率の先生だしね、一応それくらいしたほうがいいよね。
私は上り坂を駆け足で上っていった。
青空にそそり立つ、石化した
「ほお~~……」
思わず声が漏れる。巨大なものを見たとき、人は無心になってしまうよね。
坂の頂上から下を見る。野原が窪地状になっていて、
「ふぇぇえええっ?」
私は変な声を出してしまった。
「がぁッッ! がぁッッ! がぁッッ! がぁッッ! がぁッッ!!」
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
ウルミが叫びながら、木剣で
「ちえ――――ィッッ!!」
ガガンッ!
シバリンが
「ア"ッ!」「せえィ!」「ア"――――ッ!!」
ガガガン! ガンガン! ガガガン! ガガガン!
他の生徒たちも木剣を振り回して
「放てェ―――ッ!」
「「「応ッ!」」」
ドドドドン! ドドドドッ! ドドドドッ! ドドドドンッ!!
駆け回りながら、ボウガンの斉射で
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
ガガンッ! ガガガン!
ガンガン! ガガガン! ガガガン!
ドドドドン! ドドドドッ! ドドドドッ! ドドドドンッ!!
こいつら……!
こいつらッ……!!
トレーニング用の砂袋代わりに好き放題に叩きまくってる!
「声が小せェ――――――ッ! もっと声出せェ―――――――ッ!」
ウルミが叫んだ。
「「「「「「「応――――――ッッッッ!!!」」」」」」」
全員が吠える。
「ア"ア"――――ッ!!」「ぢェィ―――!」「ライライライライライ!!!」「キェ――――ッ!!」「キャ――――オッッ!」「しゃス! しゃス! しゃスッ!!」「イ"イ"イ"イ"イ"イ"――――ッ!!!」
窪地の底は、奇声の博覧会みたいになった。
生徒たちは奇声を発しながら
何てことをしてるのキミたちッ……!
案内板に、静かに巡礼しなさいって書いてあったよね!?
いや……!
あいつらの脳みそは筋肉製だから、そんなもん読むわけないか……!
私は口がからからになってしまい、声が出なかった。
巡礼の言いつけを破ったらどうなるんだろ……?
私はおそるおそる顔を上げた。
ギョロ!
「ひぃッ!」
封印が破れてるッ!
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