第5章ー6 嘘

 ……嘘だと、知ってはいた。

 いつまでも続く嘘ではないと思っていた。

 僕は少し狂っているのかもしれないと感じていた。夢を見ているのだと自覚していた。


 本当は気付いていた。

 僕はそれに気付かないことにしてたんだ。


 ……秋山さんが初めて来たあの日、検査結果を気にしていたこと。

 ピクニックに行ったあの日、帰りの車で、芽衣がとても疲れた顔をしていたこと。

 お母さんが何度か、芽衣を研究所に連れていっていたこと。


 自分に嘘をついていた僕は、何も分かっていなかった。


 そして、いつか来る終わりと向き合うことに、何も準備はできていなかった。

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