010 神賦使徒
特別な力を持って生まれ落ちる特異体質者。その確率は十万人に一人と言われている。様々な人ならざる能力を扱える彼らの中に、さらに特殊な異能力を持つ存在が極稀に現れる。
自身の持つ能力を、一線を画した次元へ昇華できる超人。
名を神賦使徒(グル―シェイカー)。ただでさえ稀少な特異体質者の百人中一人から発現する神からのギフト。
その力は一国の軍隊を単独で相手にできるほどとも語られる、まさに神通力の使い手。
発動から早四時間。発光した部屋中の家具たちは未だ光を放ち続けている。
「マジで今まで気付いてなかったのかよ、てめぇ」
メアは光を放つカップを手に、眩しそうに目を細める。うっとおしそうに中身をすすると、目の前の彼女を見つめた。
複雑そうな表情で手のひらに眼を落としている。
「知るわけないでしょ……。特異体質の検査も受けたことあるけど何も言われなかったし……」
「埋もれ過ぎてて見落としやがったんだろ。教師も無能なら医者も同類かよ。てかてめぇこれ消せねぇのか? どこ見てもピッカピカで眩しくてしょうがねぇ。ここは劇場じゃねぇんだぞ」
「だっ、だって消し方分かんないんだもん! アンタ詳しいんだったら教えなさいよっ!」
常時発光し続ける部屋と自分たち。醸し出されるコメディの気配にシーナは恥ずかしくなった。
「いつ誰が詳しいなんて言ったよクソガキ」
「いろいろ教えてくれたじゃんっ! 先生たちに何時間教わってもなんにも変わらなかったのに、アンタの言う通りにした途端直ぐできちゃったよ! 他にもいろいろ知ってるんでしょ!? てかもしかして専属講師!?」
「ちげぇよ」と前置きして、メアは言った。
「俺の師匠の教えだ。ダラダラ長ぇ文章読むより分かりやすかったから、それもそのまま言っただけだ」
いつもより覇気のない様子の彼。
シーナは首を傾げた。問いかける前にメアの口が開いた。
「とにかくだ。強ぇ力があるに越したことはねぇ。お前はこのまま能力の特訓を続けやがれ。お前の上達次第だが、早ければ今週末にも動くぞ」
「ちょ、まさかもう乗り込む気!? そんなにアタシ最強なの!? チャンピオン!?」
案の定、デコピンが額を打つ。
「イキんな。空のクソ要塞に行くにはまだまだカードが足んねぇ」
悶絶するシーナは顔面を押さえながら目を向けた。
「じゃあなにをするのよ! 空飛ぶ魔法の絨毯探し!? それとも武器商人でも捕まえて殺戮兵器作らせるの!?」
「どっちもハズレだバーカ。これから俺たちがやんのはなぁ――」
メアはニヤリと歯を剥いた。
「――ウサギ取り、だ」
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