第7話
木下さんに呼び出された場所は、校庭の隅の方にある体育倉庫だった。
呼び出されたとはいえ相手は木下さんだし急いで行く理由は無い(というか行きたくない)ので普通に歩いて向かう。
遠くから僕に向かって手を振る姿が見えたので、ため息を吐きつつ近付く。
「遅いよ、あおちゃん!何してたのー!」
「購買寄ってパンとコーヒー買って、ラノベの新刊検索して、2、3個試し読みしてから来た」
「放課後をめっちゃ満喫してる!?というか急いで来てって書いたよねぇ!?」
「アホか、運動部でもないのに教室棟からここまで5分で来れるかよ」
まだ文句を言い続ける
「で、彼女はなに?」
「ひっ‥」
ただ目を向けただけなのだが少女に怯えられる。
愛想の無さは自覚しているが初対面でここまで怯えられると悲しくなる。
「あーっ!あおちゃん、何怖がらせてるの!?」
今にも泣き出しそうな様子に、怒ったような顔をする木下さん。
僕の方が泣きそうなのだがそれは見えないのだろうか。
言い訳するか迷っていると。
「ち、違うんです舞先輩。男の人が来ると思わなかったからびっくりしちゃったんです」
意外にも少女が誤解を解いてくれた。
舞先輩と言うことは1年生だろうか。
というか今の発言に他にも気になったことがある。
「おまえ、僕が来るって伝えてなかったのかよ」
「え?僕が狂ってる?あおちゃんは変な子だし変人だし変態だけど狂ってないよっ!」
「はっ倒すぞ」
流れるような罵倒に思わず手が出る。
愛も勇気も友達もないゲンコツに、頭を押さえてうずくまる木下さん。
「いったぁぁぁぁぁぁ!?可愛い悪戯をした女の子にする仕打ちじゃなくない!?あおちゃんのバーカっ!」
「もう1発行くか?」
「ごめんなさいっ!」
「‥ふふっ」
そんな僕らのやりとりを見て、クスクス笑う少女。
僕の視線に気付くと慌てて口を押さえる。
「ご、ごめんなさいっ!笑っちゃって‥」
「いや、それは別にいいけど。で、アンタは?」
「あっ!わ、私は舞先輩の後輩で
ペコっどころか、グワって擬音が付きそうな勢いでお辞儀する彼女。
しかし、"さいろ"さんか。
変わった名前だとは思いつつも、目の前の少女に妙にしっくりくる気もする。
「風戸さんね。僕は新田だ」
「あおちゃんでいいよっ!」
「‥もしその名前で呼んだらこのバカを引っ叩くからそのつもりで」
「なんで!?」
シャーと威嚇する木下さんは無視。
何が面白いのかわからないが、また風戸さんはクスクス笑うと困ったような顔をして僕を見た。
「‥実は舞先輩、そして新田先輩にお願いしたいことがあるんです。」
言葉を切ると、小さく震えて僕を見た。
そして口を開く。
「実は‥ウチの部室、幽霊が出るんです」
1日1時間の魔法使い!~同級生が魔法少女というどうでもいい事実~ 橘田 露草 @Tsuyukusa-kitta
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