第6話
次の日の朝。
僕は机に伏せていた。
顔色は蒼白、気分は最悪、脈は天上天下唯我独尊ってばかりに高低差。意味わかんねぇ。
「おーい、大丈夫か蒼生」
ペシペシと頭を叩いてくるソイツにジト目を向ける。
派手な金髪をハーフアップにした少女はニヤニヤした目で僕を見ていた。
「これが大丈夫に見えるのかよ、
1年の時からの付き合いで、きっかけは名前が『ながせ』と『にった』なので席が近く自然と話すようになったからだったと思う。
それから何度席替えをしても、前後左右どれかに詩音がいるという不思議な関係が今も続いてる。
「大丈夫よ、蒼生。あたしが大丈夫って言ったらあんたはきっと大丈夫よ」
「魔法の言葉より購買のパンが欲しい」
「全部吐ききったしね」
早朝。
冗談だと思ってたらマジでウチに来た木下さんに連れてかれ空中浮遊にて教室に来たのがかれこれ1時間前。
僕が本気で嫌がったのはアイツ‥木下さんはマジで魔法が下手なのだ。
火を出す魔法を使ったら火炎放射器クラスの炎が出るし、物を投げる魔法を使ったら地平線の向こうまで飛んで行き今生の別れだ。
その癖、身体強化など自分の体だけのことなら完璧にこなすから不思議である。
空を飛ぶのも僕を呼ばずに1人だったら上手なのになぜ一緒に飛ぼうとするのやら。
まあそんなわけで酔いに酔いまくった僕がトイレで嘔吐するのを、全く気にせず男子トイレに入ってきた詩音に介抱してもらい教室に戻ってきて今に至る。
「ほら、購買じゃないけどコンビニのパン」
ポイっと彼女が投げたのはメロンパンだった。
空腹感に耐えかねて急いで封を開けかぶりつく。
「わふぃふぁ、ふぃおん(悪いな、詩音)」
「はいはい、何言ってるかわかんないからさっさと食べて150円寄越しなさい」
寄越せと言ったくせに勝手に僕の鞄をあけ、財布を取り出す。
サラリと100円玉が2枚取られた気がするがまあ別にいいや。
「そうだ、アンタが吐いてる間に舞から連絡が来てたわよ」
「木下さんから?というかまた勝手にスマホ見たのかよ」
「アンタのものはあたしのものよ。大体どれだけあたしに借りがあると思ってるのよ」
「それに関してはぐうの音も出ない」
見かけや言動からは全くそうは見えないが詩音はめちゃくちゃ面倒見がいい。
それだけに面倒ごとにもよく巻き込まれているのだが、それは彼女の力技や彼女への借りへの返済に追われる僕を利用したりで上手に乗り切っている。
木下さんとは去年の1年生で僕、木下さん、詩音が同じクラスになった時に仲良くなったらしくクラスが分かれた今でもよく連絡を取り合っているらしい。
そんな説明はともかく、自分のスマホを見る。
そしてメッセージアプリを開くと。
「‥はぁ」
面倒ごとに巻き込まれることを察した僕は、思わずため息が出てしまうのだった。
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