第3話

「アイツ‥魔法使ってないか?」


バレーコートの木下さんを見るがよく見たら彼女が拾おうとした瞬間僅かにボールが動いて彼女の伸ばした腕の上に来ている。

トスをする時も小さな体を補うためか微妙に空中に浮いている。

どこの猫型ロボットだ。


「あーっ!舞、魔法使ってるー!」


と、相手側のコートの女子が声を上げる。

そりゃまあバレるだろうと思ったが、ズルしたのに周りのみんなが笑顔なのは彼女の人望故か。

軽く先生に怒られてコートに戻る木下さん。


「お、蒼生。お前の番だぞ」

「あいよー」

「木下さんの方見過ぎて怪我すんじゃないぞー」

「するかっ」


結局僕は木下さんを一切見ることなく、無難な感じで授業を終えたのだった。



そして放課後。

帰りの会を終えた僕は、家で待つ漫画にアニメにラノベたちのために即帰宅しようと––––したのだが。


「どうしてこうなった‥」

「友達なんだから助けてくれてもいいでしょー?」


新学期も始まったばかりで部活もまだやっていない。

誰も居ないはずの体育館になぜか僕は居た。


「いつから僕とお前が友達になったんだよ」

「あーっ、そういうこと言うんだっ!そんなこと言うならユキちゃんに言い付けるから!」

「それはマジでやめてください、お願いします」


あの子ユキに知られたらめんどくさいどころじゃ済まない。

ベストオブザめんどくさいを受賞するクラスのめんどくささだ。


「というか、手伝いなら立候補がたくさんいただろ」


そもそも、なんで僕と木下さんが体育館ここに居るか説明しなければだろう。

授業中に禁止されてる魔法を使ったことで罰として体育館の掃除をやらされることになったのだ。


美少女として人気がある彼女らしく、手伝いを申し出る男子がいっぱい居た中で、なぜか彼女は輪に入ってすら居ない僕を手伝いに指名したのだ。

その結果生み出されたのがモップを持つ2人だった。


「だってえ、あおちゃんと一緒にお掃除したかったのぉ」

「わぁ、可愛いなー」

「全然思ってないでしょ!」


棒読みで答えると怒ったように返す木下さん。

いや別に上目遣いで見てくる彼女は非常に可愛いのだ。

多分さっきの男子どもなら告白して玉砕までがセットだろう。


「はぁ、さっさと終わらせて帰ろうぜ‥」

「あおちゃんってなんだかんだ甘いよね〜」

「帰る」

「わぁ、待った待ったっ!?」


躊躇なく床に土下座する木下さん。

学校トップクラスの美少女に土下座させてるのを見られたら僕の学校生活はジ・エンドだ。


「そう言えば、お前なら魔法使えばすぐ終わるんじゃないか?」

「‥あ」

「思い付いてなかったんかい」


コイツは本当に魔法使いなんだろうか。

発症して3年が経つ彼女は色々な魔法が使える。

恐らく掃除に関する魔法もありそうだが。


「せーのっ、ピッカピカー!」


彼女がそう唱えた途端、床が光り出し一瞬で床がピカピカになる。


「お前、その呪文なんとかならないのか?そのまま過ぎるだろ‥」

「い、いいでしょ!ほらお掃除しゅーりょー!」


まあ確かに掃除は終わったしこれで帰れる。

モップを片付けてカバンを持った時だった。


「あおちゃんあおちゃんっ!今からちょっとだけ遊びに行かない?」

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