第118話 第四回ラジオクローネ②

【ラジオ】第四回ラジオクローネ!年越し拡大SP!【黒惟くろいまお,リーゼ・クラウゼ/liVeKROneライブクローネ


「そういうまお様はどうなんですか?印象深かったお話」

「ん?そうだな……まぁこれは印象深かったというかクリスマスパーティー配信後の話なんだが。お互い3Dお披露目してから通常の配信でも3Dの姿で配信できるようになったろう?」

「はい、完全に横を向いたり後ろを向いたりできるようになりましたね」


 :おうち3Dすこ

 :2Dもすこ

 :最近3Dばっかな気がする

 :クルクル回るGIFほんと笑う


「今回もお互い3D姿な訳だが、リーゼは最近2Dの方で配信した記憶あるか?」

「言われてみれば……ずっと3Dでやってますね」


 :そういえばそんな気がする

 :あれ?そうだっけ?

 :まお様もたぶんずっと3D

 :3Dでも全然違和感ないしな


 私の問いかけに軽く首を傾げ考える素振りを見せるリーゼであったが、たしかにと小さく頷く。そんな小さな動作も画面上のリーゼとシンクロしているのだから3Dアバターの出来の良さが窺える。


「それでこれはマネージャー経由で聞いた話なんだが、我々があまりに3Dばかりで配信しているから2D担当のスタッフたちが嫉妬しているらしいぞ?」


 :草

 :2Dスタッフかわいい

 :たしかに

 :気持ちはわかる

 :2Dも使ってもろて


 マネージャーからこの話を聞いたときは完全に笑い話として語られていたが、まぁ気持ちはわからないでもない。ただやはりずっと念願だったということと目新しさという面で新しい3Dの方ばかり使ってしまうというのも人間の心理であるのだ。


「嫉妬だなんて、わたくし2Dの姿も気に入っていますし……、今は新しい3Dの方を選びがちというか……設定変えるのが少し手間というか……」


 :草

 :メタいメタい

 :設定……?

 :2Dスタッフェ……


「どちらもいいところがあるからな、件のスタッフたちには申し訳ないが落ち着くまでは耐えてもらうしかあるまい。あと切り替えの設定まほうについてはあとから楽な方法を教えるからそれを使うといい」

「あっ、魔法です!切り替え魔法!設定なんて言ってないです!」


 :はっきり言ってたんだよなぁ

 :設定(魔法)

 :さすが魔王様

 :さすが機材オタク

 :発達した科学は魔法と見分けがつかない


 たしかに素晴らしい出来の3Dではあるが、それによって2Dの方の出番が全くなくなるということはなく。2Dならではのタッチや表情の細やかさといった部分では分があるように思う。それはそれとして、まさかそんな理由が全てではないだろうが自ら墓穴を掘ってしまっているリーゼには色々とレクチャーする必要がありそうだ。


「さて、まだまだたくさんそれぞれのイベントだったり配信についての便りが届いているのだが、それらについては後半の年越し雑談の方にとっておこうと思う。そのあたりの話を聞きたいと思うならラジオ後も付き合ってもらえれば幸いだ」


 :はーい

 :了解!

 :色々聞かせてー


「そうですね、このまま話し続けてしまうとラジオがすべてふつおたになってしまいそうです。それではコーナーに移りましょうか、リーゼの見習い魔王相談所!」


 :相談所の時間だ

 :いえーい

 :今回はどんなのが来てるかな

 :真面目なやつかネタか


「このコーナーでは見習い魔王であるわたくしがリスナーの皆様からのお悩みを解決していくコーナーです。このコーナーも三回目ですがまだまだ皆様のお悩みは尽きない様子……、今回もわたくしとまお様で迷えるリスナーの皆様を導きたいと思います!」

「といいつつ本当に悩んでいるか怪しいネタも多いんだがな」


 :人間悩みは尽きないものよ

 :ネタ枠採用あるからしゃーない

 :それはそう

 :真面目な悩み送ってるゾ


 そう言いつつも新たなリスナーが増えている効果か今まではネタの方が割合としては多かったのだが、真面目な相談事の方も多くなっている。今回でいえば感触的には五分五分といったところだろうか。ただ、どうしても時間の制約もあってすべてを紹介して相談に乗ることが出来ないのが歯がゆくもある。だから切実そうなものはさりげなく普段の配信でもそうとは言わずに雑談を装って話に挙げたりしてみたり。たとえそれが送ってきてくれたリスナーに届いていなくても自己満足だと言われようがやらないよりはマシだろう。


──────────────────────────────


私はまお様の3Dお披露目からお二人のファンになったのですが

もっとはやくお二人のことを知りたかったなぁと思う事があります

どうしようもないことだとはわかっていますが

思わずにはいられない時があって……どうしたらいいでしょうか


──────────────────────────────


 :あーわかる

 :あるある

 :一気に増えたしそういう人多そう

 :そればっかりはなぁ


「この方の気持ちすごくわかるんですよね、それくらいわたくしたちの事を思ってくれているんだと思うとそれは嬉しいのですが……」

「そういった気持ちとどう付き合っていくか、難しい問題だな」


 うんうんとまるで自身の事のように頷きながらすこし悩まし気な表情をするリーゼ。この手の悩みは特にこういったファン側からしたらよくある悩みなんだろう、かつては私自身もコンテンツに対してもっとはやく知りたかったとか当時の盛り上がりの中に居たかったとか思う事はいくつもあった。その当時はあくまでファン側としてそんな思いを持っていたが、思われる側になってみても実に難しい問題だ。


「わたくしもまお様にもっと早く……」


 :最古参なんだよなぁ

 :リーゼちゃんは古参やんけ

 :名誉リスナーでは


「生まれた時からそばに居たかったです……」


 :……ん?

 :愛が重い

 :そこから!?

 :予想の斜め上で草

 :まさかの出生時


「それはそれでどうかと思うが……」

「というのは冗談ですが、出会いのタイミングというものにはきっと何かしらの意味があると思うのです。もし、まったく違うタイミングで出会うことになっていたら今のこの気持ちは変わっているかもしれません。そう考えると少しだけ気持ちが楽になりませんか?」


 少しおどけたように小さく笑ってからそのまま優しい微笑みを携え相談に答えていくリーゼであるが、どうにも冗談には聞こえなかったのは私だけだろうか。……ともかく語る言葉はその通りであるし、私と彼女の出会いにしてもタイミングだったり理由が違えば今この状況にはなっていなかっただろう。


「我としても出会いの過去に思い悩むよりもこれからの未来を思ってくれると嬉しい。それに幸いにも我々の活動はすべて配信という形で残っているからな、それで当時を振り返ることもできる」


 :そうだね

 :アーカイブあるのはありがたいよなぁ

 :デビュー配信とか

 :デビュー配信……うっ頭が


「ふふっ、新しくわたくしたちを知って下さった方々にもこれまで以上に楽しんでもらえるように活動していきたいですね」


 人がせっかくいい感じにまとめたというのにこのコメント欄は……。隣にいるリーゼも笑っているし、きっとアレはいつまで経っても弄られることになるのだろう。



……



「今日はなかなか真面目なお悩み相談が多かったですね」

「そうだな、こうやって送ってくれるのはありがたいが全てを紹介できるわけではないからな。ほんとうに悩んでいるなら周りの人間に相談するんだぞ?ただ聞いて欲しかったり話したいというならば我々で良ければ目を通すから変わらずに送って来てくれ」


 :そうやね

 :大事

 :話すだけで楽になることもあるしなぁ

 :配信に救われてるところもある


 今日の相談はネタ採用なしの割と真面目なものばかりを紹介してきたこともあって空気もなんだか真面目な雰囲気。これ次のコーナー、アレだけどいいんだろうか……。


「ではでは、お次はお待たせいたしました!大人気のこのコーナー!」

「……まおにゃん対策本部」


 :きちゃ!!

 :この落差で風邪引く

 :まおにゃんコーナーきちゃああ!!

 :クリスマスの奇跡

 :相変わらずのまお様で草


「さて、いつものまおにゃん対策本部ではいかにしてこのラジオにゲストとして呼ぶのか、リスナーの皆様と共に考えていくコーナーでしたが。前回サクラ子に見届けてもらったまおにゃんゲストを賭けた勝負は残念ながらのドロー。しかし皆様、クリスマスライブは御覧になられましたね!?まおにゃんリゼにゃん夢の競演!!それを受けてほんっとーにたくさんのお便りが届きましたので、今回はそれらをわたくしが厳選したスクリーンショットと共にご紹介していきたいと思います!!」


 :リーゼちゃんテンションMAXやん

 :あれは良かった

 :草

 :最高やったなって……

 :よくまお様が許したな


 さっきまでの真面目な雰囲気はどこにいったのか嬉々として言葉をまくし立てていくリーゼ。彼女の言う通りクリスマスライブのまおにゃんリゼにゃんで披露したライブへの反響はものすごく、私が配信であまり取り上げてこなかった事もあってそのしわ寄せがリーゼの配信とこのラジオにも押し寄せてきたらしい。前回ラジオで引き分けた件もあり、一度ここで触れておかなくては収まりがつかないだろうとしぶしぶ企画を了承した。


「はぁ……よくここまで盛り上がれるものだな」

「それは当然です!滅多に現れないまおにゃんの事ですから。ゲストとして出演してくれれば多少は落ち着くかもしれませんよ?」

「どうせ一度出れば、またと言われるのが目に見えてるからな……まおにゃんもそっとしておいて欲しいと思っていると思うぞ?」


 たしかに出し惜しみしているからこそ期待されているという面もあるが、基本的に私が恥ずかしがって嫌がっているから面白がって引っ張り出そうとしているのだ。本当に偶にならやってやらないこともないが当たり前のように求めれば出てくると思われるのも面白くない。


「そんな猫っぽいところがわたくしを含めたファンの心を掴んで離さないんですっ!ではさっそくこちらのスクリーンショットと共に沢山届いた感想を紹介していきますね!」


 :それな

 :まおにゃんはわかってる

 :まおにゃんこそ至高

 :それでこそまおにゃん


 本当に楽しそうに画面に表示したスクリーンショットを見ながらリスナーたちと盛り上がっているリーゼ。そのスクリーンショットを配信画面に載せていくのは私の仕事なのだから、なんというか……なんともいえない感じだ。


「──ですよね!わかります!このまおにゃんの表情!わたくし本当に崩れ落ちてしまいそうになって……よく耐えたなと自画自賛……。いえ、リゼにゃんはよく頑張ったと思います!!」


 :草

 :完全に建前忘れてて草

 :リゼにゃんえらい!

 :まおにゃんが口説く側なのがいいんだよな……


「それでこの曲を披露するにあたっての経緯についてですが……リゼにゃんから聞いた話によると……」


 もう止まらないといった感じで語り続けるリーゼだが、時々こちらに視線を向けて大丈夫だろうか?と確認してくる。もうここまで来たら好きに語らせた方がいいし、絶賛してくれている分には悪い気はしないのだから特段こちらから止めるような事はしない。もちろん揶揄ってくるのであればその宣戦布告プロレスは受けて立つのだが。


「引き分けの事もあったし、あれだけ3Dお披露目の時も待ち望まれていたからな。せっかくのクリスマス3Dライブだからとまおにゃんも受けたんじゃないか?」


 :ありがとうまお様……まおにゃん

 :他人……他猫事で草

 :ほんとファン思いで優しいよね

 :魔王……猫の鑑なんだよなぁ



……



「さて、もう十分語っただろう……そろそろ次に移るぞ」

「えっ、もうこんなに!?では名残惜しいですがここまでにしておきましょう。次回からは再びまおにゃん対策本部でまおにゃんゲストに向けてのアイディアをお待ちしています!」


 実にいい笑顔で次回に向けての宣伝も忘れずにするリーゼ、楽しそうで何よりだよ。というかまだまだこのコーナー続ける気だったのか……。


「では最後に二人で歌ってエンディングを迎えるとしよう」

「この曲は季節柄といった感じでしょうか」


 :デュエットきちゃ!

 :生歌の時間だああああ!

 :うたみた動画くる!?


 歌うためのセッティングを終えリーゼにアイコンタクト。お互いもう慣れたもので頷き合って音源を流し始める。


 :おっ

 :懐かしい

 :たしかに曲名的には冬の曲か

 :はじめて聞くー


 どこかのおとぎ話を彷彿とさせた曲名と明るい曲調、白いドレスを纏うリーゼが歌うにはぴったりの選曲。


 :リーゼちゃんの高音とまお様の低音ほんといい

 :ほんと二人の歌声合ってるよなぁ

 :ハモり気持ちいい

 :低音足りてる


 綺麗な彼女の高音に寄り添うようにしっかりと低音で支える。それがハモりになって返ってくる互いの歌声が耳に心地いい。


 :よく聞くと怖いんだよなぁこの曲

 :アナザーの方まお様で聞きたいな

 :歌詞がなんか物騒……?


 おとぎ話をなぞらえたような曲ではあるが、よくよく聞けばドラマにあるような愛憎劇……そのギャップが癖になってしまうのだ。


 :良かった

 :久しぶりに聞いたけどやっぱいいなぁ

 :やっぱ生歌よなぁ

 :まおリゼなんだよなぁ


「今回はリーゼの選曲だが、結構懐かしい曲をリーゼはよく知っていたな?」

「ファンの方が是非歌ってほしいと呟いていたんですよね、曲名を見てなるほどと思って聞いてみたら……」

「ふふっ、まぁわかると怖い曲ではあるな?」


 :なるほど

 :悲劇だからなぁ

 :そのギャップがいいんよ


 前回のラジオが終わった後、次に歌う候補としてこの曲を挙げられたときは意外性に驚いたものだ。曲名だけならピッタリではあるのだが……。


「まお様もわたくし以外をあまり可愛がると……ふふっ……」


 :ひぇっ

 :あっ

 :首をキュッと……

 :あっそういう……


 意外と曲名だけではなく、その内容までもこのお姫様プリンセスには合っていたのかもしれない……。


「冗談ですよっ、まお様は浮気はしてもきちんと愛してくれるって理解わかってますから」

「その笑顔がそこはかとなく恐ろしいが……。今回もうたみた動画はラジオ終了後にアップするからそっちも見て欲しい」

「ちょうど年越し雑談もありますし配信で同時視聴いたしましょう!」


 :やったぜ!

 :リアルタイム同時視聴だ!

 :同時視聴助かる

 :動画も楽しみ


 一瞬彼女らしからぬ黒い笑みが見えた気がするが、すぐにいつもの調子に戻るリーゼ。まぁ浮気だなんだと言っても配信を盛り上げるために少しだけ揶揄われただけだろう。


「さて、第四回ラジオクローネも終わりの時間だが、先に告知した通りこの後三十分後にはリーゼのチャンネルで年越し雑談配信を行う予定だ」

「そちらではお酒を嗜みながら一緒にのんびり今年を振り返って新年を迎えましょう!」

「では本当に最後にちょっとした告知をひとつして終わろうか」


 :お?

 :告知?

 :なんだ?

 :ほう?


「実はliVeKROneでメイククラフトのサーバーが立ち上がることになってな、明日の夜は我とリーゼでメイクラ配信をする予定だ」


 :メイクラ!!

 :おお!!

 :とうとう

 :メイクラ鯖きちゃ!!

 :楽しみすぎる


「まお様とのメイクラ!わたくしずっと楽しみだったんです!」

「まぁそのあたりの話は年越し雑談の方で話すことにしよう」

「そうですね、では……」

「「おつクローネー」」


 :おつクローネ!

 :おつクローネ~

 :良いお年を~

 :晩酌の準備だー!

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