第84話 リーゼ・クラウゼ3Dお披露目配信①
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リーゼ・クラウゼ@liVeKROne/19日21時3Dお披露目です!@Liese_Krause
このあと21時からはとうとうわたくしの3Dお披露目配信が始まります!
感想やわたくしの写真は是非 #リーゼ・クラウゼ3Dお披露目配信 で!
たくさんお待ちしています!
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桜龍サクラ子@ぶいロジ!/色々準備中!@oryu_sakurako
本日はこちら #リーゼ・クラウゼ3Dお披露目配信 に
ゲストとして出演させていただきますわ!
いよいよ3Dで決着を付けるときが来ましたわね!!
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すべてのリハーサルが終わり、控室に一人その時を待つ。
リハーサルの出来は上々であり、ゲストのサクラ子さんとのやりとりはいい具合にこちらの緊張をほぐしてくれたし、スタッフからも笑いが漏れ聞こえてくるくらいにはうまく噛み合っていた。リハーサルにも関わらず本番さながらの全力で飛んで跳ねて、全身で表現することに関しては踏んできた場数が違うのだろう、わたくしまでそれにつられて途中で着替える羽目になったくらいだ。
てっきり控室に下がってからもサクラ子さんは遊びに来るのだろうかとも思ったが、こちらに気を遣ってくれたのか部屋は静寂に包まれている。ずっとあの賑やかな彼女と一緒に居たせいだろうか寂しさを感じないこともないが、先程まで行っていたリハーサルの事を思い出せばここで一人落ち着く時間を作ってくれたことはありがたい。
配信でまお様に出会って二年と三ヶ月ほど、マリーナの襲撃を防ぐべくまお様に直接出会って彼女と同じVtuberになることを決意してから七ヶ月ほど、そして
魔族は総じて人間よりも長命であり、それ故に時の進み方も違って感じるとはよく言われているが思い返せばあっという間だったように感じる。今でも画面越しに魔王黒惟まおの姿を初めて見た時の気持ちの高まりや配信で共に過ごしてきた楽しい日々は昨日のことのように思い出せる。成り行きで彼女の前に現れ共に過ごすことになり、更にVtuberとして活動を始めてからはこれまでの過ごしてきた日々の中でも特別に濃密な日々だったろう。
それはきっとこれからも同じである。
いや、今まで以上に濃密なものになるだろう。
そうしていくつもりである。
『姫殿下はお変わりになってしまわれた』
いつだったか、あれは魔王黒惟まおに出会いその魅力から人間界の知識や文化を貪欲に学んでいた頃にとある社交の場で漏れ聞こえてきた言葉。今でも社交の場に出れば婉曲にそのような事を言われることは多々ある。相手は概ね古くからの
そういった者たちは総じて……恥ずかしながらかつての己もだが、人間界のことなどわかりやすく下に見ていたりそもそも興味すらない。故に人間界での活動についても何かやっているらしいといった認識しかなかったようで活動そのものに口を出してくることは無かったのだが。最近はさすがにこうやって大々的に動いていることもあってか、これまた婉曲に苦言を呈されているとマリーナからは聞かされている。
幸い、お父様からは今のところ何も言われていないので好き勝手に活動できているのだが。
お父様は今のわたくしをどう思っているのだろうか……。
お父様もどちらかといえば人間界には関心が薄く、関連のことはマリーナに任せている。わたくしの動向については細やかにマリーナから報告が行っているはずであるし、容認されている……とは思うがその内実はどうだろう。
それが大きすぎる魔王という立場の責任であったり、歳を重ね様々なことが見えるようになったことで「お父様のような立派な魔王になりたい」から「お父様のような立派な魔王にならなければ」と考えるようになったのはいつからだろうか。
今ではまお様との出会いによって、幼い頃に抱いていた「立派な魔王になりたい」という思いをこの胸に再び抱けるようになったが。そんな気持ちを思い出させてくれた出会いを、尊敬する魔王様を、応援してくれている者たちを、今のわたくしを支えてくれているすべてを両親に見せてあげたい。
あなた達の娘はこんなにも支えられて、愛されているのだと……その成果として今夜があるのだと。
なんとなくこれまでのことを思い返していると無性に両親に会いたくなってしまった。今度落ち着いたら顔くらい見せに帰ってみようか……。ただ今後のスケジュールと配信の事を考えると、それもまた後回しにしてしまいそうな自分に苦笑してしまう。
「リーゼさんそろそろスタジオにお願いします」
コンコンコンと扉を叩く音と共にスタッフの声がドア越しに聞こえてくる。どうやら色々と物思いに耽っているうちに結構時間は経ってしまっていたようだ。「よしっ」と心の中で呟き立ち上がりながらスタッフにこれから向かう旨を伝える。朝から感じていた緊張はもうすっかり気にならなくなっていた。むしろこの緊張感とこれからの期待感がほどよい刺激となって自然と立ち居振る舞いも洗練されていくようなそんな気すらする。
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【リーゼ・クラウゼ3D】ついに立派な魔王に!?真の姿をお披露目です!!【liVeKROne】
:いよいよ3Dか
:サムネからして楽しみすぎる
:3D龍魔コラボってコト!?
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¥10,000
3Dお披露目おめでとう!!
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¥1,000
りぜにゃんの缶詰代
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¥5,000
姫様……ご立派になられて……
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¥500
楽しみ!
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¥50,000
応援しています
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決められた立ち位置に立って目の前のモニターに目を向けるとそこには現在の配信画面とものすごい勢いで流れていくコメントが映し出されている。
待機画面が一度暗転し、画面がセピア色に染まり物語は始まる。
『むかし、とあるところに魔王の娘がおりました』
:きちゃ!
:はじまった!!
:これは
:まお様の声だ
『娘には夢がありました、立派な魔王になりたいという夢が』
:これ初回配信のやつだ
:イラストはSILENT先生か
:デビュー配信思い出すなぁ
『そんな漠然とした夢を叶えるため、娘は苦しみ悩み……そんな時に運命とも言える出会いが娘を変えていきます』
:まお様ですねわかります
:変わり過ぎなんだよなぁ
:姫様からVだもんなぁw
『それから娘は周りを巻き込み……時折暴走し……夢に向かって突き進みます』
:暴走は草
:これは解釈一致
:これはまお様オタクの姫様ですわ
『今宵のステージは娘が新たに抱いた夢のひとつ、成長した彼女をどうかこれからも見守っていて欲しい』
:もちろん!
:言われなくても
:最後だけすごい気持ち籠もってる気がする
『イラスト、SILENT。動画、liVeKROne。声、黒惟まお』
デビュー配信のときと同じように開幕はSILENT先生のイラストに合わせた語りの動画から。今回は負担も考えてまお様には声だけの出演にしてもらったが、最後のメッセージだけはそれまで語り部としての淡々とした口調ではなく普段のまお様の口調であり、ちょっとしたことだがそれがとても嬉しい。
そして再びの暗転、一呼吸置いて配信画面にはリーゼ・クラウゼの姿が現れる。
:きちゃ!!
:えっめっちゃすげぇ
:まんまじゃん
耳には歌い始めのためのクリック音が届き、閉じていた目をゆっくりと開き歌い始める。
最初はあまり感情を込めずに……大きな夢に押しつぶされそうだった頃を思い出しながら。
:この曲は!?
:初めての歌枠の!
:一曲目からこれはエモすぎやろ
あの日の苦しさを表すようにもがくように徐々に感情を歌声と動きに込めて。
3Dお披露目配信で一番最初に歌う曲は、配信の始まりはこの歌にすると決めていた。
初めての歌枠で歌った大好きな曲。あの時と違うのは歌声だけじゃなく全身で表現出来ること。
この曲だけはこの感情を思うままに表現したかったので振り付けは何も決めていない。ただただ思うままに歌いそして身体を動かす。
:気持ち入ってるなぁ
:こんなに必死なリーゼちゃん初めて見た
:歌詞が色々考えさせるなぁ
初めて披露したときは運命の出会い、まお様のことばかりを思っていたが今はそこに見守ってくれているリスナーたちも加わっている。ただの憧れだった魔王様の姿を追いかけ、見失っていた夢の事を思い出させてくれた言葉。それは偶然かも知れないがこの曲の歌詞に通ずるものがある。
『そう願ったのであれば、叶えてしまおう。我はいつもそう思っているよ』
歌詞に合わせてその時の記憶がリフレインする。いつだってこの言葉を胸にここまで走ってきた。
その結果がこのステージであり、今日の配信である。この活動だっていつかは終わりを迎えてしまうかもしれない。こんな時になんてことを考えているんだと思わないこともないが、感情が歌っている歌詞に引っ張られてしまっているのだろう。……それでいい。
たとえその時が来てしまったとしても、今日この時の記憶は……気持ちはきっと思い出として確かに未来に残るのだから。
最後まで気持ちのまま歌い上げたせいだろうか、歌い終わったというのにその実感が薄い。大きく息を吸って吐いて……それを数度繰り返しようやく配信画面へと目を向ける。
:88888888
:めっちゃよかった!!!
;鳥肌たった
:とにかくすごかった!
画面の中ではマイクを片手に持った
ゆっくりと片手で持っていたマイクを両手で持ち直し胸の前に持ってくる。
「皆様、わたくしの歌は……この姿は、きちんと皆様のもとに届けられてますでしょうか?」
:届いてるよ!!
:感動した!
:おめでとう!!
:すごかった!
「ありがとうございます。では改めまして……。わたくしliVeKROne所属の魔王見習い。リーゼ・クラウゼと申します。本日は立派な魔王になるべく、
そうしてリーゼ・クラウゼの3Dお披露目配信は幕を開けたのである。
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