第79話 天使と振り返り②

【同時視聴】SERAPHIMラジオを天使と共に【黒惟まお/liVeKROne・天使沙夜】


「げっ……しず

「だから言ったろう」


 :草

 :げってwww

 :当然なんだよなぁ


 見ているとは思っていたが当然のようにコメントと共に現れたSILENT先生こと静に盛り上がるコメント欄とそれに反してうへぇとなんとも微妙な表情を浮かべるつかさ。

 この二人の関係はなんというか一言では言い表せないというか……、性格的には正反対の二人であるので間違いなく友人同士ではあるのだが好敵手といった表現の方が正しいのかもしれない。


『──歌ってる時に意識してるときとお互いの歌の印象かぁ、あたしはあんまり意識してないっていうか昔から自己流だったからな。今はそりゃボイトレとか行ってるけどさ、せんせーも好きにさせてくれる感じだし』

天使あまつかは昔から自由に歌わせた方がいいというかすんなり歌いこなすからそれでいいと思うぞ』

『そういうまおは意識してることとかあったりする?』

『昔は音程やリズムをいかに崩さないようになるべく原曲通りにと思っていたが、すぐそばにいる奴がコレだろう?とても敵わないと思ってからはあまり気にせず気持ちというかフィーリングの方を大事にしているな』

『まぁ音程とかリズムはあとからいくらでも録り直せるし調整も効くからなぁ』

『天使に関してはほとんどその必要がないのはすごいと思ってるよ』


 :お、これ追加分か

 :やっぱ昔から歌うまだったのか

 :天使ちゃん完全に天才型じゃん

 :まお様の歌気持ち乗っててほんとすこ


 尺の都合で使われなかった部分がさっそく登場し、そういえばそんな話もしていたなと思いながらもすぐに追加分だと気が付くリスナーの記憶力に関心してしまう。


「そういえば、まおもボイトレ行き始めたんだろ?」

「あぁ、色々と少し余裕が出来たからな。長く活動を続けていくためには一度しっかりとプロの指導を受けたほうがいいと思ってな」

「あー確かにまおは配信もあるしかなり喋るもんなぁ」

「ほぼ毎日数時間一人で喋りっぱなしだと言ったらかなり驚かれてしまったな」


 :それはそう

 :喉大切にしてもろて

 :ほんと喋りっぱなしだからなぁ

 :ちゃんとボイトレ行くのはいいね


「あたしもラジオやってみて思ったんだけど喋り続けるってのもかなり大変だよなぁ」

「水分補給は忘れないように心掛けているよ」


 ボイトレに関しては事務所のツテでいい先生を紹介してもらえたので数度の体験を経て通い始めた。その先生曰く、私の活動内容と発声方法を見るに長く活動を続けたいならば今からでもしっかり基礎から見直した方がいいと力強く断言されている。

 基本的には何でも褒めてくれる優しい先生なのだが、そういったことははっきりと言ってくれるのでわかりやすい指導もあって信頼できるいい先生だ。


『──天使と魔王の一問一答クイズ!』


 そんなこんなで追加分のふつおた紹介も終わりラジオは一問一答クイズへと進んでいく。このコーナーはなによりもばっさりカットされてしまったあのシーンがちゃんと追加されているかチェックしなければ……。


「このコーナーあんまりに正解するから事前に答え知ってたんじゃとか一部で言われてたけど、全部事前回答でガチだからな?」

「まぁ数問は落としてしまうかもしれないとは思ってはいたが……ここまで当ててしまってはな。そう思われてしまうのも仕方ないだろう」


 :全問正解だったからなぁ

 :わかりあってるのてぇてぇ

 :さすがだった


「そういえば動物に例えるやつ、SNSで見るとまおは猫派が多かったみたいだけどやっぱりアレのせいなのか?」

「あぁ……まぁ、そうだろうな」


 :あっ

 :そりゃまおにゃんよ

 :アレ呼ばわりで草

 :天使ちゃんも若干気遣ってて草


 ちなみにラジオの放送があってからは"黒惟まおおかみ"なんて題材で狼の耳と尻尾をつけられたファンアートなんかも投稿され始めて狼派と猫派で面白おかしく競い合ってるらしい。


『まおと言えば機材しかありえないって!』

『ありえないとまで言われるのはどうかと思うがまぁ正解だな。正確には購入手続きが無事出来ただけで手元に届くのは相当先になりそうなんだが……。なかなか国内に入ってこないもので個人輸入も考えていたんだがありがたいことに伝手ができてな。いまから届くのが楽しみだよ、もともと偶然とあるスタジオで使っているのを見かけてそれで収録した時に一目惚れというかこの場合は目ではなくて耳とでも言うべきか……いやヴィンテージならではの歴史を感じるその見た目にも大変惹かれたんだが……』


 問題のシーン……私としてはちっとも問題だとは思っていないが、機材について延々と語り始めた自身のトークを聞けば確かに少しだけ喋りすぎたかもしれない。それでもほぼ全カットすることはなかったじゃないかと今でも思っているのだ。こうやって無事アーカイブという形で復活することができてなにより。


「ここばっさりカットされてたよなぁ」

「たしかに少しだけ語りすぎたとは思ったがああも綺麗に跡形もなくなるとは思わなかったからな」


 :草

 :まお様機材の事になると早口になるよね

 :ラジオでもやらかしてたのかよw

 :すこし……?

 :めっちゃ楽しそうですね


 つかさからしても印象に残っていたのだろう、面白がるように笑いながら放送当時の事を振り返る。


「まぁさすがにちょーーーーっと長かったかもな。あたしなんかは慣れっこだから無邪気に語るまおってのは可愛くて好きだぜ?」

「可愛いと言われるのはなんとも不思議な気分だが……悪く思われていないようで良かったよ」


 :大胆な告白は女の子の特権!

 :まぁたしかに好きな事について語ってるまお様ってかわいいよな

 :ちょーーーーっとで草

 :てぇてぇ


 私の語りについてからかわれることはあっても中々面と向かって可愛いなどと言われることは稀なので、若干反応に困ってしまうが悪く思われていないようなので良しとしよう。まぁつかさ相手には散々この手の話を語り聞かせてきた歴史があるので慣れてしまっただけなのかもしれないが。


『苦手なところは……見透かされているようでなんだか癪だが……ないよ』


「ふふーん、まおはあたしのこと大好きだもんな?ここはめちゃくちゃ自信あったよ」

「強いて言うならそうやって調子乗るところに思うところがないとは言い切れないぞ」

「そんなこと言って昔から変わらないくせに」


 :いちゃいちゃしだした

 :これは他のまおの女が黙ってないぞ

 :天使ちゃんなら……いいよ

 :沙夜さまモテモテだ(笑)


 こればっかりは悔しいがまぁ言われている通りなので少しばかりの反撃もわかっているとばかりに軽く返されてしまう。それだけ長い時間を共に過ごしてきたのであるし、お互い良い所も悪い所もそんなの承知の上なのである。


『全問正解の商品として番組から何かお二人にお送りしたいとおもいます。だってさ』


 :賞品の話って進展あったん?

 :そういえばそうだった

 :何かもらったん?


「あぁこの時の賞品か。軽い冗談のつもりだったんだがな、しっかり考えてくれるみたいでお互いのファンが喜ぶようなものをとお願いしておいたよ」

「これももしかしたら放送でカットされてたらどうしようかと思ったけど、使ってくれたってことは期待してもいいんじゃないかな?」


 :お?

 :何だろう

 :やはり新番組を!?

 :楽しみ


 これについてはまだ本決まりではないが水面下で話は進んでいるとマネージャーからも聞いている。詳しい内容までは教えてもらえていないが期待していてくださいとのことだったので私自身も楽しみだ。


『それじゃあ次はこのラジオ共通のコーナー、レコメン!』


「まずは配信冒頭でも言ったが発売おめでとう、我もしっかりと買わせてもらったぞ」

「買わなくてもいくらでも渡すって言ってたんだけどなぁ、ありがとう」

「早々に予約していたからな」


 :おめでとう!

 :チャート一位おめでとう!!

 :毎日聞いてる

 :Vesferほんと好き


『──まぁ名付け親が目の前にいるわけだけど』


「あたしの名前については結構驚かれていたよな?」

「あぁこれは本当に当時を知る者くらいしか知らない情報だったはずだからな。まさかこんなことになるとは当時の我でも思わなかったさ」


 :知る人ぞ知るって感じ

 :実際驚いた

 :沙夜もそうなの?


「沙夜もそうなのかって?……まぁ別にこれくらいはいいか。天使がレーベルに所属するという相談を受けた時に考えさせてもらったよ、ある意味餞別みたいなものだな」


 :へぇ

 :そうなんだ

 :それは初めて聞いた


 天使あまつか沙夜さやという名前についてのエピソードは天使という部分に関しては多数が知るところであるだろうが沙夜については今まで言及してこなかったものである。コメントを拾いながらちらりとつかさの方へと視線を向ければ小さく頷いてくれたので質問に答える。


 あの当時はプロの道に進むというつかさからの相談というか報告を受けて送った名前だ。きっとつかさは有名になって私なんか手の届かない存在になってしまうだろうという確信もあったので餞別として贈ったその名前。

 まさか、そのあと私がVtuberになり……企業に所属し、手の届かなかったはずの天使沙夜とラジオ共演しその様子が全国に流されるなんて自分自身今でも信じられないくらいだ。


天使てんしちゃんなんてガラじゃないから最初は恥ずかしかったんだぜ?いまでもそう呼んでくるファンもいるしな。まぁ今じゃすっかり慣れて天使てんしでも天使あまつかでも沙夜でも気にならなくなったけどさ」


 むしろ今回のラジオをきっかけに天使てんしちゃんと呼ぶのを控えていた昔からのファンが再びそう呼ぶようになりつつあるようで、今でも残っている旧魔王チャンネルの動画再生数が再び回りだしたことからも天使と魔王の関係性は広まっているみたいだ。


『というか名前で思ったけどあたしがまお呼びなのにそっちからは天使あまつか呼びなのはなんかズルくない?』

『いきなり何を言うかと思えばそんなに気になるか?』

『いや別に……』

『わかったよ沙夜、これでいいだろ?』


 :こんなにいちゃついてたのかよ

 :これはカットやむなしですわ

 :公共の電波でいちゃつかないでもろて


「これが呼び名の下りだが……これは別に流さなくても良かったんじゃないか?」

「この時めっちゃ目見つめてきたんだぜ?絶対狙ってたろお前」


 :そういうとこやぞ

 :落としにかかってますわ

 :まーたそういうことする


「いきなり呼び名について言ってくるからだろう」

「このときちょっとブースの空気ちょっとアレだったからな?」


 :草

 :そりゃそうなりますわw

 :自業自得なんだよなぁ


 ちょっとふざけて魔王成分多めのイケメンムーブをしてみたら、滑ったとまでは言わないが周りからはなんとも言えない生暖かい目で見られていた気がする。


「ほら、そんなことはいいから本筋に戻るぞ」

「はいはい。そういえばまおのSERAPHIM考察、制作チームでもめっちゃ好評でさ。今度時間があればゆっくり語り合いたいなんて言ってたぜ?」

「同好の士がいたようで嬉しいよ、見当違いな事を言っていてカットされていたらどうしようかとも思っていたからな」


 その同好の士の一人というのが収録当日に現場にいたあの統括プロデューサーであるということは後から聞いて驚いたものだ。なんでも神話といったその手の話にはとても詳しく制作チームは厳しいチェックを受けたとかなんとか。


 :制作チームもいい趣味してるな

 :対談とか見てみたいわ

 :めっちゃ語り合ってそう


「Vesferの由来もヒントなしにわかってたろ?完全な造語だったからスタッフ驚いてたよなぁ」

「あれはさすがに曲を聞かなければわからなかったよ、それに我が魔王であったことが大きいな」


 :考察聞いた後に調べてみてやっと意味がわかったわ

 :さすがにラテン語はすんなり出てこない

 :たまたま似た語源のゲームタイトル知ってたからピンときたわ

 :エスペラント語とラテン語はオタクの必修言語やぞ


『まおは結構配信で歌ったりするだろ?歌ってみたい曲とかあったか?』

『どれも難しそうな曲ばかりだからな……それでも許可が出るならやはりVesferだろうな、dominatorなんかも歌いこなせればかなり恰好がつきそうだが』

『基本的にあたしの歌は許可してもらうように頼んでるし、いつか配信で歌ってくれるのを楽しみにしてるよ』

『本人に聞かれることほど緊張するものはないんだが……練習しておこう』


 :楽しみすぎる

 :dominator絶対まお様に合う

 :アルケーも聞きたい

 :というかコラボうたみた出してもろて


 SERAPHIMはさすがに天使沙夜の全部を詰め込んだというだけあって気軽に歌おうと思ってすぐに歌えるようなものではない。それに歌うにしてもちゃんとモノにしてから歌いたいという気持ちもあるのでもう少し時間が欲しい所だ。ボイトレでもVesferを課題曲にして練習している途中だったりする。


「これで逃げられないな?」

「逃げるつもりはないしちゃんと練習しているさ。ただ、まだ納得できる出来ではないのでもう少し待っていて欲しい」


 :待ってる

 :楽しみが増えたなー

 :歌枠見に行かなきゃ


 にやりと何か言いたげな笑みを向けながら挑発的な言葉を投げかけてくるつかさに対しては、元々そのつもりだと言わんばかりに小さく笑って受けて立つ。


『それじゃ名残惜しいけどそろそろ時間みたいだ』


 そんなやりとりをしているうちにラジオもエンディングに差し掛かり同時視聴もそろそろ終わりの時間を迎える。ディレクターズカットでいろいろと追加されただけ時間が伸びていたが、話しながら聞いていると実にあっという間のようだ。


「ラジオもそろそろ終わりか。同時視聴は初めてのようだったがどうだった?」

「いやー、放送を一人で聞いたときはこんなもんかなーって思ってたけど。こうやってまおやリスナーさんたちと一緒に聞きながら振り返るってのも、新鮮で楽しかったぜ?反応がすぐ見れるっていうのはなかなかない体験だったからな」


 :めっちゃ楽しかったー

 :沙夜さまも楽しめたようで良かった!

 :天使ちゃんも配信しよう!

 :また配信に来て欲しいなぁ


「リスナーたちは沙夜に配信してほしいみたいだぞ?」

「流石にあたし一人じゃ無理だって、機材とか設定とか全然わからないしさ」

「そのあたりの相談ならいくらでも乗るしこの機会に覚えてみるのもいいと思うが……まぁ忙しいだろうからな。良かったらまた配信に遊びに来てくれればいいさ」


 :待ってる!

 :また来てねー!!

 :大歓迎だよ!


 機材や設定についてはどうとでもなるだろうが、これからまた忙しくなるであろうつかさに配信をする余裕がないであろうことは簡単に想像できる。今回の同時視聴ゲストについてもスケジュール調整はなかなか大変だったのだ。


『おつまおー!!』


 最後の挨拶が流れてラジオが終了する。この挨拶にしてもまさかやらされるとは思わなかったし、しかもそれが放送に使われると思わなかった。


「本当に最後の挨拶がこれで良かったのか?」

「何にも言われなかったし、しっかり放送で使われてたから心配いらないって。しかも放送当日トレンド?になってたんだろ?」

「まぁあれはトレンドじゃなくてそのうちのトピックだったようだが」


 :おつまおが電波に乗った日

 :あれは笑った

 :実質まおラジオ


「では最後に何か告知とかあったりするか?」

「とりあえずはSERAPHIM好評発売中だからまだ聞いたことないって奴は聞いてほしいな。あとは20日の21時からまおの3Dお披露目配信はあたしも楽しみにしてるから絶対見逃さないように!」

「いやそれは我が言おうとしてた告知なんだが……」


 :草

 :宣伝は基本

 :宣伝助かる

 :天使ちゃんが告知するんかいw


「ええと我からは19日21時からはliVeKROne同期のリーゼ・クラウゼ3Dお披露目もあるのでそちらもよろしく頼む」


 :自分の告知できなくなってて草

 :逆だったかもしれねェ……

 :ほんと楽しみだなぁ


 本当に最後までペースを崩されてしまうが、まぁらしいといえばらしいか……。まったくもって悪気はなく、むしろ善意しか感じられないので突っ込むに突っ込みにくい。


「それではこのあたりで締めさせてもらおう、沙夜今日はゲストに来てくれてありがとう。楽しい時間を過ごすことが出来たよ」

「こっちこそラジオと配信、一緒にできて本当に楽しかったし、リスナーさんも歓迎してくれて嬉しかったぜ」


 :また来てねー!

 :こちらこそありがとー!

 :楽しかったー!


「それではまぁ……いつものやつで終わるとしよう」

「そうだな!任せとけ!」

「「おつまおー!!」」


 :おつまおー!

 :おつまお!

 :天使ちゃんありがとー!

 :おつさやまお!!


黒惟まお【魔王様ch】✓:SERAPHIM好評発売中だ、本当にいい曲ばかりなので是非聞いてくれ


黒惟まお【魔王様ch】✓:3Dお披露目、あたしも見るから予定空けとけよ!!by天使

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る