第64話 国際交流

※" "で囲まれてる部分は日本語以外のつもりです

──────────────────────────────────────

「ありがとうございました!」

「リーゼさん覚えるのはやくて筋もいいし、もう少しレベル上げてもいいかもね?」


 一通りのダンスレッスンを終え、クールダウンのためのストレッチをしていると先生からは嬉しい褒め言葉。活動のために受けることにしたダンスレッスンであったが、社交のダンス経験がこんなところで活きてくるとは何事もやっておいてよかったなと思う。


「こういったダンスは初めてで新鮮で楽しいです」


 経験があるとはいえ、今習っているものはステップも含め新しいものばかりだ。それこそ目にする機会はあったがきちんと習ってみれば、自身が今まで習ってきたものと同等かそれ以上に奥深い。


 最初のレッスンで姿勢の良さと所作について褒められ、基本はわかっているだろうとばかりにすぐさま実践的なレッスンが始まったときはどうしようかとも思ったが。そのあたりは流石指導のプロ、出来そうで出来ないというラインを絶妙に設定してくれる。


「まお様……黒惟さんはどうですか?」

「まおちゃんはとにかく努力の人って感じよね。この前のレッスンでリーゼさんの映像見せてあげたら負けてられないって居残りまで……って、これ聞いたのは内緒にしておいてね?」


 事務所が用意してくれた同じ先生なので、時々このようにまお様についての話も聞く事が出来る。先生とは社交ダンスの話から随分と仲良くなれたとは思っているが、その語り口と表情を見れば相変わらずのコミュニケーション能力でこちら以上に仲良くなっているのだろう。


「では、わたくしも負けられませんね」


────


【雑談】ゆっくりお話いたししましょう!【リーゼ・クラウゼ/liVeKROne】


 :待機

 :待機するーぜ!

 :"ニホンニキたちよろしく!"

 :"ここがリーゼの配信か"

 :最近海外リスナー増えたなー


 ダンスレッスンから帰宅し、予定通りに今日は雑談配信。待機所コメントにもちらほらと日本語以外のコメントが流れているのが目に入る。

 どうやら先日配信した第二回ラジオクローネの配信切り抜きとまお様のチャンネルに投稿されたうたみた動画が海外リスナーの目に届いたらしく、それから徐々にではあるが海外リスナーが増えているようだ。

 おかげ様で登録者の伸びもよくなり少なかった海外リスナーの割合も増えている。


「今日もわたくしを応援してくれますか?liVeKROne所属魔王見習いのリーゼ・クラウゼです。聞こえていますでしょうか?」


 :聞こえてるよー

 :はじまリーゼ!

 :応援するよー!

 :はじまリーゼー


「ありがとうございます。雑談配信はじまリーゼ~、"海外の皆様もありがとうございます"」


 :"リーゼこんばんは"

 :"今日もかわいいね"

 :"調子はどう?"

 :"うたみた動画から来たよー"

 :海外ニキたちもよう見とる


 簡単に英語で挨拶をするとそれまで日本語ばかりだったコメント欄に英語コメントが流れてくる。それを見て、おぉと日本のリスナーたちが反応するまでがワンセット。


「では今日は何からお話しましょうか……。そうだ!皆様まお様からの告知は見ましたか?」


 :ラジオゲスト?

 :すっごいメンツだったな

 :二度見したわ

 :びびった

 :開幕まお様で草


 レッスンの休憩時間にまお様のSNSが更新され、あまり見覚えのないアカウントのメッセージを拡散しているなと思えば天使あまつか沙夜さやさんが所属しているレーベルのもの。内容に目を通すとアルバム発売記念ラジオが放送される告知とそのゲストメンバーがアカウント名と共に記載されており……。その中にまお様が居た時はそれはもう驚いた。


「わたくしレッスンの休憩中だったのですけど、びっくりして先生に思わず見せてしまいました」


 :草

 :先生も驚くわw

 :相変わらずで草

 :反応気になるなw

 :レッスンて歌の?


「メンバーが豪華すぎると先生もすごく驚いてましたよ。恥ずかしながらわたくしはあまりそのあたりの事情に明るくなかったのですが、先生が他のゲストの方々のすごさを教えてくれまして……。さすがまお様と改めて思い知らされました」


 :さすまお

 :知らなかったんかいw

 :まお様しか見てないやん

 :楽しみだねー

 :ラジオだと聞けるかなぁ?


 二周年記念のメッセージで色々大変だったらしいと聞いていたこともあり、まさか天使さんとまお様の共演が正式に実現するとは思っていなかったのでそれだけで驚いてしまったのだが先生が言うには知らない人の方が少ないくらい有名な方々だったらしい。そんな人たちと共に選ばれるのだからやはりまお様はすごいのだ。


「レッスン内容については秘密にさせておいてください、披露できるのが今から楽しみです」


 :匂わせるじゃん

 :匂わせ助かる

 :こっそり教えて?

 :まお様も最近レッスン受けてるよな

 :もしかして……


「ちなみにラジオはインターネットでも聞けるらしいですし、アーカイブも後日配信サイトに上がるらしいですよ。事務所に確認しておきました」


 :助かる

 :Rajicoで聞けるからな

 :昔は一生懸命アンテナ調整してだな……

 :アーカイブあがるんだ

 :有能すぎる


 より詳細な情報を得るべく、ダンスレッスンからの帰り道ですぐにマネージャーに連絡を取り聞けるだけのことを聞いたので情報に間違いはないだろう。この情報についてもすでに公開されていることは確認済みであり、いくら同じ事務所で同じ担当マネージャーといえども公開情報以上のものは教えられていない。


「天使さんとまお様のラジオすごく楽しみですね」


 :そろそろリーゼちゃんの話してもろて

 :ここまで全部まお様

 :まお様定期

 :本人より情報早いときあるからな……


「つい……、ええとわたくしのお話ですね。冒頭でも少し触れましたが第二回ラジオクローネの反響がとても多くの海外リスナーの方々が登録してくださったみたいで、基本的には日本語での配信なのですが今度英語配信してみるのもありかなと思っているのですがどうでしょうか?」


 :海外ニキ増えたよねー

 :翻訳切り抜きも増えた気がする

 :"絶対見に行くよ!"

 :"日本語教室してほしい"

 :"ドイツ語も聞いてみたいな"

 :ほんと発音綺麗だよね

 :英語の勉強になるからいいかも


 日本語に加えて、簡単に要約した内容を後から英語でも話せばなかなか反応は良い。これは本気で検討してみてもよさそうだ。


「"ドイツ語もですか?果たしてどれくらいの方が見てらっしゃるのでしょうか?"」


 :なんて?

 :まじで三か国語喋ってるやんけ

 :"ここにいるぞ!!"

 :"ごきげんようお嬢さん"

 :ドイツ語ってなんかかっこいいよな

 :クーゲルシュライバー!!

 :すまねぇドイツ語はさっぱりなんだ

 :大学でやったなー


 英語に比べれば数こそ少ないがドイツ語のコメントも流れてきて本当に世界中と繋がっているのだなと今更ながら実感する。


「いまのはドイツ語で、どのくらいの方が見てらっしゃるかと聞いてみたのですが。数名いらっしゃるみたいですね」


 :ほー

 :すげぇ

 :一気に国際色豊かに

 :なんなら英語とドイツ語以外も出てきて草

 :リーゼちゃんはどうやって覚えたの?


 外国語の流れに乗ってだろうか、たしかにフランス語やイタリア語っぽいものから中国語に韓国語なんかもちらほらと……。さすがにそれっぽいとは判別できるがその内容まではわからない。


「さすがに他の言語までは覚えてないので……、英語は一般教養として学びましたが日本語はまお様と出会って必死に覚えました」


 :ドイツって英語結構通じるしなぁ

 :ドイツ行ったときほとんど英語でいけたな

 :えっ

 :ま?

 :二年ちょいでこれってエグない?

 :愛の力か……


 なんとかまお様が喋っていることを理解しようとマリーナに頼み込み、大量の教材と共にまお様の配信で学んだからこそ今があるのだ。たしかにこれは愛の力なのかもしれない。


「おかげで皆様とこのようにお話できますし、本当にまお様には感謝ですね」


 :結局最後はまお様なんだよなぁ

 :すべての道がまお様に通じてるレベル

 :ありがとうまお様!

 :愛されてんなぁ


「では今度、英語配信や日本語やドイツ語講座というのも面白そうですね」


 :"いいね"

 :助かる

 :まお様も呼ぼう

 :ええやん

 :"ゲストも呼ぼう!"

 :"楽しそう"


「たしかにまお様やゲストの方を呼んでみるのも面白そうです。検討してみますね」


 私だけではなくまお様にだってたくさんの海外リスナーがいるはずなのだ、それこそわたくしのようにまお様の配信がきっかけで日本語を覚えたリスナーだっているだろう。今度まお様に提案してみよう、この前の歌を聞いた感じだと発音はかなり良かったのですんなり覚えてしまうかもしれない。


「ゲストといえば、近々サクラ子さんとのコラボができそうです。まだ日付は調整中なのですがもう少しで発表できるかと」


 :おっ!

 :きちゃ!

 :再戦きちゃ!

 :リベンジや!


 初のコラボから貴重なVtuberの友人となった桜龍おうりゅうサクラ子さん。再戦を望む互いのリスナーからの声も多く、メッセージのやりとり自体はそれなりに交わしているのだがなかなかスケジュールが合わずに実現していない。

 サクラ子さんが所属するぶいロジ!でのイベントが無事終わり、ようやくスケジュールに余裕ができるとのことで近々配信の内容と日程の決定を行う予定なのだ。


「おそらくは前回お約束した通り今度はわたくしがサクラ子さんのチャンネルにお邪魔することになると思いますが。発表を楽しみにしていてください」


 :はーい

 :楽しみー

 :今度こそ勝って呼び捨てに!

 :勝負もだけど協力ゲーとかも見てみたい


 勝負もいいがコメントにあるように協力するゲームというのも面白いかもしれない。サクラ子さんならいい反応をしてくれそうなゲーム……といくつか候補を思い浮かべてみる。アレとか絶対盛り上がると思うし提案してみよう。


……


「わたくしからお話しておきたいことはこれくらいですね。何か聞きたいこととかありますか?」


 :今日のご飯は?

 :次の配信予定は?

 :あれから料理した?

 :うたみた出す?

 :気になってるゲームは?

 :最近まお様とデートした?

 :キノコ?タケノコ?


「今日のご飯ですか?お昼はレッスンだったのでサンドウィッチで軽く……ええと、タマゴサンドですね。料理は……わたくし一人だとなかなか。ラジオでも聞いたシチューに赤缶というものを試してみたいと思っているのですが」


 :わいBLTサンドだったわ

 :タマゴサンドすこ

 :シチューに赤缶やってみたけど美味しかったよ

 :シチューにいい季節になってきたもんなぁ


「次の配信は……歌枠か、壺野郎をやってほしいというリクエストをもらっているのでそれになるかもしれません。うたみたは一本動画作ってもらっているのでお楽しみに」


 :歌枠きちゃ!

 :壺楽しみ

 :いい反応見れそうだ

 :動画待ちかー


「デートは最近まお様がなかなかお忙しそうでお誘いできてませんね……」


 :相変わらず配信ジャンキーだからなぁ

 :この前まお様リリスとデートしてなかったっけか

 :配信にレッスンに配信に動画まで作ってるもんなぁ


「あっでもつい先日素敵なお店見つけたので今度一緒にとお誘いされました!」


 :おっ

 :やったじゃん

 :そのお店誰と行ったんでしょうねぇ……

 :絶対女連れ込んでるゾ


「そんなこと……、ありえますね……夜闇やあんさんとデートしていたのは知っていますし」


 :あっ

 :ほんと人たらし魔王やで

 :リリスめっちゃ上機嫌だったからなぁ

 :ペックスマスター到達のご褒美やししゃーない


 なんなら、夜闇さんとデートの約束をする場面を直接目にしているのだ。わたくしも何かご褒美をもらえるようなことを……。例の動画はラジオでの劇場での交渉材料として使ってしまったし。


「キノコタケノコ……は個人的にはタケノコですかね」


 :タケノコ大勝利

 :やっぱタケノコだよなぁ!!

 :そんな……

 :嘘だ……

 :まお様キノコやぞ

 :信じてた


「まお様がキノコ派なのは知っていますがこればかりは譲れないのです」


 :よう言った!!

 :これは名誉タケノコ民

 :歴史が動いた


 もちろんまお様がキノコ派ということは把握しているがこればっかりは仕方がない。ただ正直どちらも好きだし、どちらかを選ぶならばという前提である。


「でも一番好きなのはヤムヤムつけボーですよ」


 :まさかの第三勢力!?

 :ヤムヤムつけボー派!?

 :まさかすぎて草

 :ヤムヤムつけボー知ってんのかw


「実はドイツにもステラアンドゴーというとても似ているお菓子があるんです」


 :まじで?

 :"おお!ステラ!"

 :検索したらこれはヤムヤムつけボーだわ

 :マジじゃん

 :コトスコで売ってるゾ

 :"ステラは定番だよね"


 ステラを知っている身としては初めてヤムヤムつけボーを見た時の驚きとその美味しさはとても印象的だった。というかこっちでもステラ売っているんだ……これは良い情報を手に入れた。


「さて、今日はこのくらいにしておきましょうか、それではまた次の配信でお会いしましょう!おわリーゼ~!」


 :はーい

 :おつかれさまー

 :今日も楽しかった!

 :おつー

 :おわリーゼー!

 :おつかれーぜ!


Liese.ch リーゼ・クラウゼ:ステラも美味しいので是非機会があれば食べてみてくださいね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る