第48話 第一回ラジオクローネ!

【ラジオ】第一回ラジオクローネ!【リーゼ・クラウゼ,黒惟くろいまお/liVeKROneライブクローネ


 :待機

 :このイラストすこ

 :楽しみ

 :はじ……はじ…

 :こん……こん……


「魔王見習いVtuberとしてデビューしたはいいものの……これで立派な魔王になれるのでしょうか……」


 :お?

 :なんかはじまった

 :ん?

 :なんだ


「リーゼよ……リーゼ・クラウゼよ……いま貴方の脳内に直接話しかけています……」

「その声はっ!?」


 :エコー草

 :(ファニチキください)

 :まお様なにしてんのw

 :なんだこれ


「ラジオです……ラジオをするのです」

「ラ、ジオ……?ラジオをすれば立派な魔王になれるのですか?」


 :そうはならんやろ

 :草

 :いやそれはおかしい

 :(ちくわ大明神)

 :誰だ今の

 :誰だ今の


「っ、……そうです……ラジオをするのです……す、す、す……」


 :わろてるやんけ

 :セルフエコーやめてもろて

 :草

 :え、なにこれは


「リーゼ・クラウゼと……」

「黒惟まおの……」

「「ラジオクローネ!」」


 若干スベってる気がしながらもなんとか予め決めておいた茶番をやりきり、視線を送り息を合わせてタイトルコールを行う。まお様が突然吹き出しそうになったときはどうしようかと思ったけどなんとかうまく合わせることが出来た。

 普段は一人でいる配信部屋である防音室に二人きり……、しかもマイクの関係上少しでも身体を揺らすと肩がぶつかってしまいそうな距離感。まお様との初コラボという緊張もあったのだが出だしで失敗しなくてよかった……。


 タイトルコールが終わると暗転からラジオブース風の背景に二人の姿が現れる。


 白と黒、まるで正反対な印象を与える二人の見た目。

 長い銀髪を青いリボンでツインテールに結び、白を基調として青い装飾がされたドレスをまとったリーゼ・クラウゼ。

 長い黒髪に赤いメッシュを入れ、黒を基調として赤い装飾がされたドレスをまとった黒惟まお。


 色から受ける印象こそ正反対ではあるが、意匠の細かいところでは似通った部分もいくつかあり並んでみると姉妹のようでもある。


「改めましてliVeKROne所属の魔王見習い、リーゼ・クラウゼです。ラジオクローネ始まりました!……今日も応援してくれますか?」


 :はじまリーゼ!

 :応援するよー!

 :応援するーゼ!


「ありがとうございます!はじまリーゼっ!そしてわたくしと共にラジオをお送りするのはこの御方……」

「今宵も我に付き合ってもらうぞ?liVeKROne所属の魔王、黒惟まおだ。……こんまお」


 :こんまおー

 :きゃーまお様ー!

 :義務まお助かる


「この配信はliVeKROneに所属するわたくしたち二人がお送りするラジオ番組です。魔王として配信者としてクローネ……王冠を目指して頑張っていきます!感想や反応なんかは#ラジオクローネ!でよろしくお願いしますね。もちろん配信なのでコメントも大歓迎です!」


 :はーい

 :実況してる

 :目指せトレンド!


「初回ということでまずはわたくしたち自身と所属するliVeKROneという事務所について紹介させてもらいますね?」


 そう言ってから配信画面を二人が並んだプロフィール画面へと切り替える。


「知っているものもいるかもしれないが改めて……。我の名は黒惟まお。以前はとある世界で魔王をしていたのだがそんな生活に飽きてしまってな。こちらの世界でVtuberとして活動していたところ、不思議な縁もあって事務所立ち上げからliVeKROneに所属することになった」


 :相変わらずあっさりしてんなぁ

 :よっ伝説の魔王様!

 :まおにゃんどこ……?


「わたくしはリーゼ・クラウゼと申します。魔王の娘であり魔王見習いです。あっ、ここの魔王というのはまお様ではありませんしまお様の娘という訳でもないですからね?とあるきっかけでまお様に出会い。その姿に憧れ、立派な魔王になるべく同じ事務所に所属しVtuberとしてデビューいたしました」


 :まお様の隠し子説あったな

 :草

 :魔界のお姫様

 :とあるきっかけ(配信)


「最後に我らが所属する事務所liVeKROneについてだが、株式会社Connect2Linksが運営する新規のVtuber事務所だ。クローネとはクラウン、つまり王冠を意味していて配信という場でも頂を目指していくという意思の現れだな。ちなみに略すときはVKROブイクロだぞ?イブクロではないからな?」


 :草

 :出た

 :イブクロプロダクション

 :ブイクロでもイブクロアナグラム定期


「えぇ、略すときは是非ブイクロとお願いしますね。わたくしはまだまだ未熟な魔王見習いですから、皆様に認められて立派な王冠を戴きたいと思っています」


 初めてにしてはなかなかスムーズに進行できているのではないかと気持ちに余裕が出てきたところで、次に予定されている言葉がまお様から出てこない。

 どうしたのだろうかと思わず視線を向けそうになったところでまお様の声が直接魔力に乗って聞こえてくる。


『リーゼ、画面切り替えてない』

『あっ、ありがとうございます』


 完全に油断していたと慌てて画面を切り替えるが、今度は教えてくれたまお様がなにやら驚いているのが魔力を通して伝わってくる。そういえば、まお様からこうやって魔力を介しての会話をしてくるというのは初めてではなかっただろうか。

 おそらく、まお様も意識して行ったのではなく無意識でそうなってしまったのであろう。こんなに近くにいるのだから伝わってきても不思議はない。


「初回は企画者であるリーゼの家から配信している、それにしても最初のアレはいったいなんだったんだ?」


 :オフコラボ!

 :カレー見たよ

 :それな

 :いきなりなんかはじまって草だった


 驚きを表に出さずにそのままトークを続けるまお様はやはり場慣れしているのであろう。その姿は頼もしくもあるが、わたくしもしっかりしなければ……。


「それはですね……、今回ラジオを始めるにあたってお便りを募集したのですが」

「こちらのマシュマロにも来ていたな、あとは#クローネメールだったか」

「そちらにこんなお便りが……」


────────────────────────────────

ラジオ開始おめでとうございます!

ふたりでエチュード……即興劇的なものをやってほしいです!


地獄を見……、二人で試練を乗り越えればより仲も深まるはず!

────────────────────────────────


 :草

 :地獄で草

 :本音隠せてないんよ


「こいつのせいか」

「せっかくのリクエストでしたので……」


 :毎回やってほしい

 :コーナー出来たな

 :台本書くわ


 ああは言っているがまお様もノリノリで演技していたのは隣で見ていたので一目瞭然だ。反応も良かったのでどんなものが送られてくるか怖くもあるがいいネタになるだろう。


「台本を募集しても面白いかもしれませんね?台本だけではなくテーマや配役でも気軽に送っていただけば採用されるかもしれません、お便りありがとうございます」

「ありがとう……あまりにひどいものはやらないからな?」

「それではこのまま届いたお便りを紹介していきましょうか」


──────────────────────────────────

ラジオクローネ!開始おめでとうございます!

お二人は初コラボになりますが初印象やその後の印象など

お聞かせ願えるでしょうか?これからも楽しい企画楽しみにしています! 

──────────────────────────────────


「お便りありがとう。初印象か……そうだな。実際初めて会ったのは半年以上前で、あの出会いは少し衝撃的だった。あまり詳しくは言えないのが残念だが……それこそどこぞのお姫様かと思ったらその実、魔王の娘だというのだから驚いたよ。初印象は綺麗な子だなと、その後は綺麗な子というのは変わらないが随分とかわいらしい面も見せてもらったし、頼りがいのあるところも見せてもらったり見ていて飽きない子かなリーゼは」


 :どんな出会いだったんだ

 :気になる

 :こーれまた口説いてますわ

 :べた褒めじゃん

 :そういうとこやぞ


「その……恥ずかしいです……。わたくしは配信でお姿は存じていましたので……今も昔も憧れの魔王様です。ただそうですね……本当に優しい方だなと。実際にお会いしてますます……その、魅力にやられてしまっています」


 :なんだこれ

 :もうべた惚れじゃん

 :カップルチャンネルかな?

 :てぇてぇ

 :いいですわゾ~


 さらりと告げられる言葉にどんどんと恥ずかしくなってしまい、こちらの受け答えはたどたどしく配信上のリーゼも顔を赤くしている。そんな隣で涼しい顔をしているまお様に反撃したくても言葉を紡ぐほどに墓穴を掘ってしまいそうで。ほんとにこの人はずるい。


「次はこれだな」


─────────────────────────────

ラジオでやってみたい企画とかコーナーありますか?

私は是非他のVtuberさんなんかもゲストに呼んでほしいです!

あとはまおにゃんリゼにゃんの共演も是非!!!!



PS.修羅場期待してますb

─────────────────────────────


 :ゲスト呼んでほしいなぁ

 :まお様知り合いかなり多いしな

 :SILENT先生を!!

 :全リスナーの夢にゃんにゃんコラボ

 :まおの女大集合させるか

 :修羅場は草


「他のVtuberさんゲストは是非お呼びしてみたいですね!あとは……ひとつわたくしがやりたかったものはこのあと披露する予定です」


 :お

 :なんだろう

 :披露?

 :楽しみ


「リゼにゃんはともかく、まおにゃんはラジオには出られないだろうな」

「来てくれないのかにゃん?」

「乗らないからな」

「ぐぬぬ……リスナーのみんなの熱い要望があればきっとまおにゃん来てくれると思うから応援よろしくにゃん」


 :まかせろ!!

 :全力でいくぞ!!

 :まかせろにゃん

 :がんばれリゼにゃん!

 :台本募集……閃いた


 これだけ熱い応援コメントが多いのだ、どんなことをしてもまおにゃんをいつか引っ張り出してきてやろう。これはわたくし含めたリスナーすべての総意である。


「貴様ら……。企画やコーナーはむしろどんなものが見たいのか気になるのでどんどん案を送ってきて欲しい。今はまだありきたりなものしか思いつかなくてな」


 :ひぇっ

 :まかセロリ!

 :まお様への人生相談とか


「我への相談系は結構来ていた気がするな、ただそれだと普段の配信と変わらないのでリーゼも含めてもう少し検討してみようか。ゲストは相手方によるところが大きいがこちらでも実現できないか調整中ではあるので続報を待っていて欲しい」

「まお様は誰かお呼びしたい方とかいらっしゃいますか?わたくしはお名前や配信では存じ上げていてもほとんど面識がないので……」

「そうだなこの二人共通の知り合いというとたつ子……桜龍おうりゅうサクラ子なんかは呼ばなくても向こうから来る気がするが……。企業や個人の垣根なく色々な者を呼べるようになればと思う」


 たしかにサクラ子さんなら突撃してきてもおかしくないと思えてしまうのがサクラ子さんのサクラ子さんたる所以であろう。


「ふふっ。確か、まお様からサクラ子さんへの思いを聞きたいなんてお便りも来ていましたね。送ってきてくれたのは桜人さくらびとさんでしょうか?」

「思いと言われてもな……、まぁゲストに来るようなことがあれば考えてやらないこともないが」

「ですのでお楽しみに。それにしても最後の修羅場というのは……たしかにまお様の周りは少し危ないかもしれません」


 ただでさえ交友関係の広いまお様のことだ、慕っている者も多いのでまお様から声をかければいくらでも集まりそうなものである。同じ事務所で同期であっても油断はできない、付き合いでいうならわたくしはまだまだ新参者なのだ。


「危ないことはないと思うが……」


 :危ないゾ

 :夜道には気をつけてもろて

 :そういうとこやぞ

 :無自覚って一番罪だよな

 :さすがたらし魔王


……


「さて、お便り紹介はこのあたりにしておきましょうか。沢山のお便りありがとうございました。今後も募集していますので気軽に送っていただけると嬉しいです。次回に向けては番組冒頭の台本や即興劇のテーマ、役どころなどを募集する『ラジオクローネ劇場』。リスナーの皆様からの相談事を見習い魔王であるわたくしが答え、まお様に判定してもらう『見習い魔王相談所』。あとはどうやったらまおにゃんがラジオに来てくれるか考える『まおにゃん対策本部』……」

「おいリーゼ、最後のは台本にないぞ」

「企画者特権発動します!」


 :草

 :台本バラしはやめてもろて

 :いいぞ!!

 :対策本部送るわ

 :企画者が絶対なんだよなぁ


 つい、特権を発動してねじ込んでしまったが次回のまお様当番回が恐ろしくなってしまった……。だがリスナーの期待を裏切るわけにはいかないのだ。


「……他にも企画コーナー案など、コーナーにない普通のお便りも待っている」

「それでは最後に、わたくしとまお様で一曲歌ってエンディングとしたいと思います」


 :生歌!?

 :歌きちゃ!!

 :デュエットだ!

 :一緒に歌いたいって言ってたもんな

 :だからオフコラボだったのか


「まだまだ未熟ですが、一生懸命歌います」

「我もまだまだだよ。共に磨いていこう」


 まお様とのコラボで絶対にやりたかったことのひとつ、それは共に歌うこと。この日のために沢山練習して、まお様からも機材についてや歌い方についても沢山アドバイスを貰った。

 まお様へと視線を向け準備が整ったことを伝えようとするが緊張してしまってうまく笑えていないのを自覚する。ラジオ自体は大丈夫だったがずっと夢見てきた黒惟まおとのデュエットを大勢の前で披露するのだ緊張するなというほうが無理な話だ。

 失敗したらどうしよう……。収録とは違って配信で歌うのだからもちろん一発本番、マウスを握る手が冷たくなっているのを感じる。


『リーゼ、楽しんで歌おう』


 突然左手が暖かな感触に包まれそんな声が魔力に乗って伝わってくる。


『……わたくし、怖くて……』

『間違ったとしても私がカバーする、だから思いっきり歌って?みんなそんなリーゼの歌が聞きたいんだよ』

『まお様……』

『もちろん私も、リーゼと一緒に歌うの楽しみにしていたんだから』


 ぎゅっと力強く手を握られ冷たかった手がすっかり暖かくなり今となっては熱いくらいだ。

 覚悟を決めてその手を握り返し小さく頷いて用意していた音源を流し始める。


 その曲はとあるアニメの挿入歌であり、デュエットソングとして不動の人気を誇る超有名曲。

 ピアノのイントロからはじまり電子音が重なっていきストリングスが、ギターが歌の入りに向かって盛り上げていく。


 最初の歌い出しはまお様から……。歌いなれているのだろう力強くも心地よい歌声が耳に届く。


 そして、わたくしのパートが来る……。楽しんで……思いっきり。まお様から言われた言葉を胸に不安を吹き飛ばすように声を出す。

 声は上ずってないだろうか、自分で判断できないくらいには必死だ。

 なんとか短いパートを歌い終わり、二人の歌声が重なる。


 きっとこちらが歌っている間見守ってくれていたのだろう。二人のパートでまお様に意識を向ければ視線が重なる。目が合った彼女はニコリと笑いまた歌い上げていく。

 同じ言葉を、同じ思いを、繰り返し。言葉と思い、歌声と視線も時折重なりまたそれぞれのパートへと分かれていく。それを繰り返していくうちになんだか一心同体になったような不思議な感覚を覚えていき、相手の楽しいという思いもこちらへと流れてくるようで不安がすっかり消え去っていることに気付く。


 あぁ楽しいなぁ……。

 歌う前の不安などもう覚えていないくらい楽しく、いつまでもこの時間が続けばいいとさえ願ってしまう。

 しかし、そんな思いとは裏腹に曲は終盤。最後のソロパートにありったけの思いを乗せて……。

 そんな思いが伝わったのか彼女も強い思いで答えてくれる。ソロの最後、ロングトーンのなんて美しく力強いことだろうか。


 そして最後は二人で一緒に歌い上げ……終わるのを惜しむように息の続く限り声を出し続けた。


「はぁはぁ……」

「っ、ふぅ……」


 :最高すぎる

 :88888888888

 :いい

 :やばい

 :やっぱいい曲や……


 握り合っていた手は軽く汗ばんでしまっているがそんなことは微塵も気にならない。

 歌えた……。きっと少し走ってしまっていたり音程も合っていたか自信はない、それでも楽しかった。なにより一緒に歌えて楽しかったのだ。


「まお様……歌えました」

「私も一緒に歌えて良かったよ。リーゼの気持ちがすごく伝わってきた」

「……っ、まお様口調……」


 :てぇてぇ

 :草

 :私助かる

 :そこで突っ込むのw

 :ファンの鑑である

 :イイハナシカナー?

 :解釈不一致には厳しい


「皆様も聞いていただいてありがとうございました。そしてなんと、このあとまお様と歌ったこの曲のうたみたを投稿します!」


 :ま?

 :やったー!!

 :ありがとう

 :また聞ける!

 :初うたみたきちゃー!


「我も久しぶりに動画を触ったからな、結構自信作なので是非見てくれ」


 :楽しみ

 :しれっと口調戻してて草

 :まお様いつの間に

 :最高のコラボじゃん


 本当にまお様にはお世話になりっぱなしだ……。


「それでは第一回ラジオクローネはここまでになります、終わりの挨拶は……」

「今日はリーゼのチャンネルで当番回だからな。アレでいいだろう」

「アレまだちょっと恥ずかしいんですよ?」

「それでは次回また会おう」

「もうっ、それでは皆様、ありがとうございました」

「「おわリーゼ!!」」


 :まだ恥ずかしいのw

 :草

 :おわリーゼ!!

 :おわリーゼ

 :おつまおわリーゼ!

 :おつまおおわリーゼ~

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