第42話 龍魔相まみえる②

【アソビ大百科】いきなり挑戦状!?初コラボで対決!【リーゼ・クラウゼ/桜龍サクラ子】


 初めてのコラボ配信、桜龍おうりゅうサクラ子さんとアソビ大百科での五番勝負。

 お互いに得意ゲームで勝利を収めての最終戦にコメントは大いに盛り上がっている。


 :サクラ子豪運見せたれ!!

 :リーゼちゃんファイト!

 :ヨット期待

 :豪運vs頭脳やな


 ヨット、それはアソビ大百科に収録されている中でも特に配信映えするという理由で対決のトリによく選ばれるゲームである。五個のサイコロを使いトランプのポーカーのように役を作っていき、それを交互に繰り返していき最終的に合計点数の高いほうが勝者となる。


 ちょっとしたコツや点数を取る上で考える余地はあるが、結局サイコロの出目しだいではあるので配信者としてどちらが持っているか、どこまで盛り上げられるかすべては賽の目を決める天のみぞ知る。


 余談ではあるが発売元のN社によれば発売後一ヶ月での全世界累計プレイ時間は麻雀に次いで二位であるらしい。三位は花札だとか。


「フフフ……最終戦をヨットにするとは流石わかっていますわね」

「我々配信者にとっては逃れられない宿命みたいなものですからね……」

「その意気や良し!!どちらの格が上か白黒ハッキリつけさせて頂きますわ!!」

「見習いとはいえ魔王、先達といえど容赦は一切いたしません!」


 :いいぞー!

 :負けるなよサクラ子!

 :頭脳で攻めればいけるぞ!

 :豪運いに負けるな!

 :ファイト!


 更にコメントを煽るようにいっそ演技のように挑発してくる桜龍さんに合わせてこちらも語気を強め真っ向から立ち向かっていく。盛り上がるようにリードしてくれているのだろう、そういった意図がないとしても自然とそういった風に振る舞える相手は素直に尊敬できる。


「先手はそちらに譲りましょう」

「ではわたくしから振りますね」


 :ホスト先手定期

 :後手の方が有利まである

 :草

 :仕様なんだよなぁ


 コメントの指摘どおりホストであるこちらが先手ではあるし、相手の出方を伺える後手の方が有利というのもわかる。だけどここまで戦ってきたわたくしにはわかる。そういった細かいことを彼女は、桜龍サクラ子は一切気にしていないのだ。ならばこちらも細かいことは気にせず先手を活かしてプレッシャーをかけていく位の心積もりで挑まなくては。


 何事も最初が肝心、コントローラーを振って小気味好いサイコロの音を聞いてから第一投……。


 :ストレートかなぁ

 :Bストワンチャン

 :Sストにはなりそう


「これはストレートですね」


 出目はバラバラだがそれはそれで数字が連続したストレートという役が狙える。連続した三個のサイコロをキープして残りのサイコロを再度振る。


 :Sストきちゃ!

 :Bストも狙える

 :両面じゃないかぁ

 

 二個あるうちのひとつがつながってくれたのでこれで四連続で作れるSストレート達成だ。サイコロはもう一回振れるので五個すべての数字が連続するBストレートを狙う。確率は六分の一だが外れてもSストレートは確定しているので振り得なのだ。


「Bスト来い来い……」


 :さすがにこないか

 :まぁ十分

 :ないすSスト

 :いいスタート


 狙っていた数字は出ずにSストレートで確定、だがまずまずの滑り出しだ。


「そう簡単にはいきませんね……まぁ良しとしましょう」

「なかなかやりますわね。ではワタクシの手番ですわ」


 :Bストwww

 :一発Bストはエグいて

 :草

 :さすが豪運


「えっ」

「ワタクシにかかればこんなもの朝飯前ですわー!!」


 桜龍さんが出した目もバラバラだったが綺麗に並べ替えられると画面上には6個の数字が綺麗に並びBストレートの文字。もちろん振り直す必要もなくそのままBストレートで確定……。Bスト狙いを外した後に一発で成功させられるなんて……もうこの時点で格の差を見せつけられている気分だ。


「くっ……、まだまだこれからです!」


 そう言って振ったサイコロの出目はまたしても低めの数字でバラバラ……。SストレートをすでにとっているのでここからBストレートを狙う訳にもいかないので重なっていた二の目を残して振り直し。せめて二が重なってくれると思っていたのに一つも出ることはなく、再度振り直すと綺麗に一が三つでフルハウス……。フルハウスは出目の合計が点数になるのでこんな弱い点数で埋めるわけにはいかないので早々に一を埋めざるを得ない。

 点数が低くなる一の目は役が揃わなかった時の回避用に取っておきたかったのに……。


 :あそこから2がまったく出ないのつらいな

 :あそこから1が3個はある意味もってるわ

 :しょぼハウスはつらい

 :さすがに1やな

 :まぁ最低限……


「それでは流れにのっていきますわよー!!それっ」


 :たっか

 :5と6ばっかやんけ

 :フルハウス狙うかフォーダイス狙うか


「桜龍さん、おかしくないです……?」

「ワタクシともあればダイスにも好かれてしまうのですわ!」


 そう言って桜龍さんはよどみなく六だけを残して振り直す。


 :フルハウス切るのはやすぎるやろ

 :高めフルハウス行かないのか

 :5と6残しでいかないのがドラゴン流よ


「えぇ……」

「フォーダイスですわね」


 :これヨットあるやろ

 :この流れならある

 :ヨット引いても6埋めまである

 :リーゼちゃん若干引いてて草


 振り直せば当然のように六の目が出て現時点で六が四個、しかも残り一個は五という合計値が点数になるフォーダイスとチョイスのほぼほぼ上限値。これ以上はすべて六で揃えた上でヨットを選ばず先程の二役にフルハウスと六の目を加えた四役から選べるようになる。桜龍さんならありえそうなのがひたすらに恐ろしい。


 そして、もちろん桜龍さんはノータイムで五を切り捨て再度振り直す。


 :惜しい

 :一瞬6見えたな

 :それでもほぼ最高得点フォーダイス


 転がるサイコロは一瞬六の目を見せるが壁にあたって再び五。六を外したとしても次点の五を再び出すあたり本当に強い、リスナーたちから豪運と呼ばれそれを自称するのも納得だ。


「フォーダイスにしますわ!」

「豪運というのも本当らしいですね……」

「手加減できないものでして」


 不敵な笑いを浮かべる桜龍さんに対してこちらも気合を入れ直してコントローラーを握る手に力を入れる。


……


「よしっBストレート!!」

「なんの!こちらは最高得点フルハウスですわ!!」


 :盛り返してきたな

 :リーゼちゃんボーナス狙いか

 :まだわからんな

 :サクラ子またBスト

 :リーゼちゃんも本気モードか


 たしかに桜龍さんはその豪運で次々と高得点を叩き出していくが役の埋め方には隙があるし常に豪運という訳でもないらしい。再びBストレートなんかを出したり必要のない場面で高い目を出したりもするので、豪運というのも万能ではないようだ。撮れ高としては確実に向こうの圧勝という他ないが、確実にボーナスを取ればまだ勝機はある!


 :ヨットきちゃ!!

 :これは決まったか?

 :いちおうまだ決まりではないか

 :高得点とりつつボーナス必須か


「ヨット!!ですわ!」

「ここでヨット!?」


 後半に入り一瞬見えた勝機だったが相手のヨットによって再びそれは遠ざかってしまう。


「流石ですね……」

「リーゼさんも素晴らしい巻き返しですわ」


 :え!?ヨット捨てるの?

 :ま?

 :どうなんだこれ

 :たしかにありっちゃあり

 :堅実だなぁ


 残り数回のトライでヨットを出せる確率とヨットを捨てて確実にボーナスを狙った場合……。勝算としては後者の方が大きいが、ただ配信者としてヨットを捨てるのはどうなんだという話にもなってしまう。考えた末にヨットを切り捨てるとコメント欄が多少ザワついてしまう。


「なるほど……」


 そんなわたくしとコメント欄を見たのか一言呟いた桜龍さんは構わずまっすぐに点数を重ねていく。

 対して撮れ高を捨てて勝ちに行って負けてしまったら格好悪いなぁ……なんて思いながら、確実にボーナスへと点数を積み上げる。


「ここで出せなければわたくしの負けです」

「その覚悟見届けさせていただきますわ」

「行きますっ!!」


 すでに二回サイコロを振って最後の一振り、確率としては悪くない。ヨットを捨てたからこそ最後の最後にチャンスが回ってきた。


 :きちゃ!

 :これは!?

 :逆転!?

 :あとはサクラ子次第だな


「よしっ」

「流石ですわね」


 なんとか、最低限ではあるがなんとかスコアを上回ることが出来た。が、まだ桜龍さんの手番は残っている。


 :3を3個で勝ちか

 :ここまで接戦になるとはなぁ

 :なんか緊張してきた


「これで最後ですわね」

「はい」


 やれることはすべてやった。それこそ撮れ高を捨ててまでだ。配信者としてはあそこでヨットを捨てるべきではなかったのかもしれないが、本気で勝ちに行った結果なので後悔はない。


 :ま?

 :ふぁっ!?

 :一発ヨット!?

 :やってんねぇ!!

 :再逆転や!!

 :すげぇ


「ワタクシの勝ちですわ!!」

「わたくしの負けです……」


 最後の最後。そんな予感はあったが、まさか必要最低限の三を三個どころか三を五個でヨット……。勝負でも内容でも完敗だ。


 :ヨット捨てなければなぁ

 :いい勝負だった

 :やっぱ豪運ドラゴンすげぇわ

 :サクラ子しか勝たん!!


「久しぶりに熱い勝負が出来ましたわ!リーゼさん……いえ魔王リーゼ!冷静に戦局を把握し、勝利に向かって最善を尽くす……貴女もまた恐るべき魔王であると、この桜龍サクラ子は認識いたしましたわ!」

「桜龍さん……」


 :最後の巻き返しすごかったよな

 :うちのドラゴンに目を付けられたらしつこいぞ

 :これは逃げられませんわ

 :ロックオンされてしまったなぁ


 桜龍さんの言葉に桜人さくらびとと思わしき彼女のリスナーたちがご愁傷さまと言わんばかりにからかうようなコメントを次々していく。


「ありがとうございます。それでは桜龍さん、勝者の願いを聞かせていただいてもいいですか?」

「そうですわね……、またこの熱い戦いを望みますわ!今度はワタクシの配信にも遊びに来てくださいな!それに戦い、力を認めた仲ですものサクラ子とそう呼んでくれて構いませんわ!」


 あぁ、本当にこの人は真っ直ぐで誰にでも好かれてしまうのだなぁと短い時間の付き合いでもわかってしまう。まお様もきっと同じ事を思ったのだろう。


「そんなことでよければ喜んで!わたくしの方こそリーゼと呼び捨てで。今度は是非サクラ子さんの配信で勝負いたしましょう」

「別にワタクシも呼び捨てでも構いませんのに」

「……勝ったときにはそうさせていただきます」

「ではそう簡単には呼ばせることは出来ないですわね」

「すぐに呼んでみせますよ」


 :これは新しいてぇてぇが生まれたのでは!?

 :少年漫画かよ

 :美しい友情に乾杯!!

 :またコラボ楽しみにしてる!


「勝負は残念ながら負けてしまいましたが、今度リベンジしたいと思います!サクラ子さん今日はありがとうございました」

「こちらこそ熱い勝負が出来て大満足ですわ!新たなライバルが出来て、これだから配信というものはやめられませんわね!」

「皆様もちろん登録済みでしょうが、サクラ子さんのチャンネルは概要欄にありますのでしていない方は登録の方よろしくお願いいたします」

「この配信の高評価に新たな魔王であるリーゼのチャンネル登録も忘れずにですわよ!!」


 :もちろん

 :もう登録してたわ

 :はーい

 :高評価忘れてたわ助かる


「最後の挨拶どうしましょうか?」

「リーゼのチャンネルですもの、お任せいたしますわ!」

「ええと……、まだ決まってなくて……」


 :おわリーゼ!

 :おわリーゼあるでしょ

 :サクラ子もいるしおわ龍ーゼでいいんでね?


 コメント欄に溢れるおわリーゼコメントの群れ……。はじまリーゼにおわリーゼ、あまりに安直で挨拶に自分の名前が含まれるというのはどうにも照れくさかったのでそれとなくスルーしていたのだが……。まお様のこんまお、おつまおと同じ運命を辿ってしまうのか……。


「おわ龍ーゼ!いい響きですわ!!それにいたしましょう!!」


 :えぇ

 :草

 :安直ゥ!!

 :拾われて草


「サクラ子さんがそれでいいなら……、それでは」

「「おわ龍ーゼ!」」「ですわ!!」


 半ばやけくそ気味に終わりの挨拶をして配信ソフトで通話の音声が入らないようにしED画面へと切り替える。


 :おわ龍ーゼ!!

 :おわ龍ーゼ~!

 :おつかれさまー!

 :楽しかった!

 :桜人さんたちありがとー!


Liese.ch リーゼ・クラウゼ:負けてしまいましたが楽しかったです!次こそはリベンジさせていただきます!


桜龍サクラ子-Oryu sakurako-:いつでも挑戦待っていますわ!!

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