第39話 オンの真夜中シスターズ
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今宵は久しぶりに甜孤とリリスとオフコラボだ
liVeKROne所属祝いに押しかけ……駆け付けてくれた二人を迎え
晩酌と軽く歌って、あとは眠くなるまで雑談
まぁいつものやつなのでゆるーく見に来てくれ
#真夜中シスターズでお祝い
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黒惟まお@liVeKROne/配信強化週間!!さんがリツイート
久しぶりのまおちゃんのお部屋癒されるわ~
今夜はまおちゃんのところにお邪魔します~
お祝いやからええ酒持っていきます~
#真夜中シスターズでお祝い #まお様おめでとう
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黒惟まお@liVeKROne/配信強化週間!!さんがリツイート
夜のお姉さん同士、密室、オフコラボ、何も起きないはずもなく
久しぶりの黒様のお部屋ちょっとくらい襲ってもバレへんか……
今宵リリスは大人の階段上ります!!少しだけなら覗いてもいいよ?
#真夜中シスターズでお祝い #まお様おめでとう(結婚しよ)
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『真夜中シスターズきちゃ!!』
『オフコラボ助かる』
『リリスのタグ草』
『夜のお姉さん組コラボのために生きてる』
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【晩酌歌枠雑談】オフでliVeKROne所属のお祝いをしてくれるらしい【#真夜中シスターズ】
:待機
:お邪魔しまーす
:覗きに来ました
:いらっしゃーい
「……これもう始まっとる?」
「マイク入れたぞ」
「いえーい!聞こえるー?」
:きちゃ!
:聞こえるよー
:コーンまおリリー
:こんまおー
:コーンばんわー
:こんリリー
待機画面から配信画面へと変えマイクのミュートを解除する。画面上には黒地で縦に白く駄魔王と印字されただぼだぼTシャツ姿の黒惟まおと朱色のハイネックノースリーブニットに白いカーディガンを羽織った宵呑宮 甜狐、ベアバックかつタートルネックでケーブルニット……一言で言えば童貞を殺すセーターを着た夜闇リリスが現れ、各々楽しそうに体を揺らしている。
一方現実では、配信部屋に折りたたみの丸いテーブルが持ち込まれそれぞれの動きを捉えるためのスマホやWEBカメラがスタンドによって固定されている。テーブルの上には配信用のノートPCとマイク、晩酌のために用意された各種おつまみ、各々好きな酒類が完備状態。一人でも機材や各種グッズ、仕事関連の資料で手狭な配信部屋にテーブルを囲んで三人が並んでいるのだ、その狭さは窮屈の一言に尽きる。
「今宵も我らに付き合ってもらうぞ?」
「キャー!黒様ー!!抱いてー!」
「っ、リリスお前なぁ……」
お馴染みの挨拶をしようとしたところでふざけたリリスがこちらに抱きついてきた。その勢いにグラリと傾き床に手をついてなんとか倒れないようにしながら咎めるように押し返す。
抵抗してくると思っていたのだが今度はこちらを引き込むように倒れ込みながら手を引かれ、その上器用なことにわざと上着をはだけさせ上目遣いでこちらを誘うように見上げてくる。
その姿は配信前の貞淑な大和撫子なんかではなく、間違いなくサキュバスのそれであり画面上の姿が重なって見えてしまう。
「おー?まおちゃんがリリスを押し倒しよった」
:!?
:きまし!?
:あら~^
:まおリリ!?
「……ふざけてないで自己紹介」
「はーい、黒様に押し倒されたえっちなサキュバス、夜闇リリスでーっす。まお様おめでとうーお祝いはリリスちゃんを愛人にする権利をあ・げ・る♪」
ケロッとした表情で起き上がりカメラに向かってばっちりウィンクを決めながら挨拶する姿は慣れたもので呆れながらも甜狐へと目線を移す。
「コーンばんわー、Live*Live二期生宵呑宮 甜狐ですー。まおちゃんほんまおめでとう。甜狐にはリスナーさんがおるから……一夜の戯れで許しておくれやす……」
私の視線を受けて続けて挨拶しはじめる甜狐もリリスの悪ふざけにならい、しなりと体をこちらに寄せツツツと肩のあたりを指先でなぞってくる。少しだけくすぐったいがここで変な反応をしてしまえば二人の思うツボだ。
「そしてー今夜の主役ー!落とした女は数知れず!」
「誰が呼んだか、たらし魔王」
「……liVeKROne所属の魔王、黒惟まおだ。はぁ……こんまお」
:きゃー!まお様ー!
:こんまおー
:おめでとうー!!
:義務こんまおが染み渡る
:うちの狐がすいません……
:うちのリリスもらってやってください
「ちょっとーリリスナー。応援してくれるのは嬉しいけどみんなのリリスちゃんが黒様のものになっちゃうよ?」
:黒様ならまぁ
:幸せになれよ
:おめでとう
:NTRモノみたいでいいよね
「相変わらずリリスナーたちはおもろいなぁ」
「安心してくれちゃんとお前たちのところに返すから」
「ちょっとー!黒様もリリスナーもひどいなぁ」
:草
:返却されてて草
:押し付け合わないでもろて
ケラケラと笑う甜狐に私の言葉にぷくーっと頬を膨らませ私と画面に向かって不満を口にするリリス。あんなことを言い合っているがリリスもそのリスナーであるリリスナーたちもお互いのことを大切に思っていることを知っているのでなんとも微笑ましい。
「ほらほら、二人していちゃついてないで乾杯せな。今日はまおちゃんの
「甜ちゃんも一緒にいちゃいちゃしたいくせにー。でもまぁそうだね乾杯しよっか!ものどもー!酒を持てい!!」
:おう!
:ばっちりよ!
:今日は飲むぞ
:こちとらもう2本目よ
「それではー我らが真夜中シスターズの末っ子、黒惟まおのVKRO所属を祝うと共にー?」
「ますますの活躍と末永い活動を祈念いたしまして」
「すべての配信者とそのリスナーが幸せであるように」
リリスの音頭からはじまり各々がグラスを手に取り、甜狐が続き、そして私もこの場にいる者、いない者。いろいろな姿を思い浮かべ言葉を紡ぐ。
特に打ち合わせをしていたわけでもないが自然と三人の息がそろって目配せをしあい、言葉を重ねる。
「「「乾杯~!」」」
:かんぱーい!
:KP!
:おめでとうー!!
乾杯と祝福の言葉で流れがはやくなるコメントを眺めながら互いに軽くグラスを鳴らし、口元に運ぶ。
「っぷはー!やっぱこれよー!」
「リリスおっさんくさいぞ」
「かわいらしいおっさんがいたもんやなー?」
「そうだぞー!おっさんでも可愛いからセーフ!」
あっという間にグラスを空にしたリリスは上機嫌でおかわりを注いでいる。
:何飲んでるのー?
:まお様末っ子だったん?
:おっさんかわいい
:飲むねぇ
「何飲んでるの?だってー。私は日本酒だよー甜ちゃんが奮発してくれたいいやつ!」
「我はまぁいつも通り、ほのよいだな」
「まおちゃんは相変わらずよわよわやなぁ、甜狐もリリスと同じやね」
場所は私が提供して、酒類は甜狐が用意し、つまみはリリス。といういつもの布陣。今日はお祝いということもあり、あまり詳しくない私でも聞いたことのあるようないいものを用意してくれたらしい。もっとも私はいつものヤツなのだが。
「まおちゃんが末っ子なんはデビュー順やからやねぇ」
「はーい!あたしが長女でーす!かわいい妹たちよ!姉を崇めるのです!」
「といっても我と甜狐でほとんど変わらないだろ」
「それでも甜狐のほうが先ですー、ほらほらお姉ちゃんに甘えてもええんやよ?」
二人が両手を広げ、かたや褒め称えるように要求し。もう一方はその胸に飛び込んでくるように求めてくる。困った姉たちだが元々一人っ子なのでそんなやりとりも楽しい。
「ほら、酔いが回る前に歌うぞ」
「あっ逃げた」
「恥ずかしがりやさんやなぁ」
別に逃げたわけではないけど……。二人はともかく酔いが回ってしまうとうまく歌える自信がない私としてはなるべくはやく歌っておきたいのだ。
「じゃーまずはあたしと黒様のデュエットね!!」
「そのつぎは甜狐とやからねー?」
「それじゃ、あたしと黒様の愛を証明しよう!」
お互いにイヤホンを片耳だけつけると軽快なオケが流れ始めリリスが歌い始める。最初から口が回るか少し心配だが何度か一緒に歌ったこともあるしうたみた動画としても出したこともあるのでそこまで心配は無用だろう。リリスなんかは楽しそうに手振りで踊りながらかわいらしい声で歌っている。やっぱりうまいなぁ……。
「いえーい!証明完了!」
「うたみたもリリスのチャンネルにあるからよろしくな」
:宣伝助かる
:はぁ……すこ
:88888888
:このパート分けだとまお様→リリスなんだよな
「それじゃあ、次は甜狐とやねー。二人の愛に溺れてもらいましょ」
そう言って熱のある視線を向けられ、先ほどとは対象的に印象的なピアノのメロディが流れ始める。許されなくてもお互い惹かれ合う磁石のように……。愛を歌う甜狐の声がとても艷やかで歌詞のせいもあってその世界に引き込まれていくようだ。甜狐の声に釣られないように下のハモリに集中していると指先に何かが触れ思わず甜狐のほうへと視線を向ける。そこには悪戯っぽく笑みを深めた顔があり、ゆっくりと指同士が絡み合い……。曲が終わると名残惜しそうにその手は離れていく。
「ふふっ、どうやった?」
:エッッッ
:たまらん
:最高
:やばい
:こんなんもう実質アレなんよ
そう尋ねたのはリスナーに対してか私に対してか。互いに少しだけぼうっと見つめ合ってしまったのはきっとお酒のせいだろう。
「あー!もう二人の世界に入らないの!!あたしもそれ歌いたい!!」
リリスの明るい声に現実へと引き戻され、互いに曲を交換してもう一回…そのあとも三人で歌ったり、リクエストをしあったりコメントから拾ってみたり。
二人共私と歌いたいと言ってくれるのは嬉しいのだが……。ほぼほぼ歌いっぱなしで結構疲れてしまったのでほどほどのところで歌は終わりにし、あとはダラダラとお酒とつまみを片手に雑談だ。
「なーほんま美味しいからちょこっと飲んでみん?」
「そうだよーこんないいの中々飲めないよー?」
「それじゃあ……ちょっとだけ」
:あっ
:まずいですよ!
:お水飲んでね
:いいぞもっとやれ!
──甜狐に勧められて少しだけ、二人が飲んでいた日本酒を口にしたせいかいつもよりふわふわとして気持ちがいい。
……
「ふふっ……てんこ~りりす~」
「あー、……やっぱこうなるかー」
「んー?まおちゃんはかわええなぁ~」
:知ってた
:ふわふわまお様ほんとすこ
:まお様大丈夫そう?
:まぁ二人いるし平気やろ
:その二人が危ないんだよなぁ……
「それじゃ、まおちゃんもこんな感じやし今日はこのへんやね」
「そうだねーほら、黒様ーお水飲みなー」
「うん……」
:うんて
:かわいい
:これはお持ち帰り不可避
:こういうときリリスほんとお姉ちゃんよな
「まおちゃんは甜狐たちがしっかり介抱するから心配せんでな~」
「リリスたちはこのままお泊りだからこのあとも楽し……しっかり面倒見るからね!」
:まお様逃げて
:楽し……?
:ズルイゾ
:よろしくお願いします……
「それじゃ、真夜中シスターズでしたー!」
「ほらまおちゃん、バイバ~イって」
「ん?あっ、バイバ~イおつまおー♪」
:おつまおー!
:かわいい
:これは間違いなく末っ子
:バイバ~イ
:おつまおできて偉い!
:ゆっくり休みなー
────
「ん……配信終わった……?」
ふわふわとした頭のままいつの間にか横になっていたことに気づいてあたりの様子を伺う。
甜狐に勧められた日本酒を口にしてから少しの間はしっかりと覚えているのだが時間がたつにつれ記憶がおぼろげになっている。
どうやら私はベッドに寝かせられているらしく、ベッドサイドでは甜狐とリリスが私を見守りながらまだ飲んでいたらしい。
「……終わった。水飲む……?」
「ん、ありがと」
配信時とは打って変わって少しだけ心配そうに水の入ったグラスを差し出してくるリリス。彼女に礼を言って身体を起こし水を一口飲む。
「ふぅ……、あー。……やっちゃった?」
「かわいいまおちゃんが出てきただけである意味いつも通りやから大丈夫」
「……平気」
少しずつ状況が飲み込めてきてそれを把握する。二人がいるからってハメを外してしまったらしい。問題を起こしたり迷惑はかけていないようなのでそれだけは安心だが、いまからアーカイブを見るのが怖い。
「ほんと弱いなぁ……私……。……ぁふ」
「弱いくらいが女の子はかわいらしくてええやないの」
「宵呑宮は強すぎ……」
「そりゃ良い飲み屋やしぃ?」
「つまりかわいくない……?」
「リリス~」
漏れ出てくるあくびを我慢しきれずに口を抑えながら二人のやりとりをなんとなく見守る。
「あとのことは任せて寝なさいな」
「たくさん歌ったし疲れてる……」
「うん……それじゃお言葉に甘えて……」
一度は起きたが、まだ頭はふわふわとしているしまぶたも重いし……。ここは二人に甘えてしまってもいいだろう。再び横になって二人を見上げる。
「甜狐、リリス」
「「……ん?」」
「ありがとうね、三人で……リスナーと一緒にお祝いできて嬉しかった……これからも……」
「せやね……」
「これからも……?」
「……寝てしもうたわ」
「ほんま、可愛らしい妹ができたもんやね」
「……宵呑宮も」
「なんや、酔っぱらったん?」
「……そうかも」
薄れゆく意識の中で二人の会話が耳には入ってくるのだがその内容までは頭に入ってこない。
だけどそれがとても耳に心地よく完全に意識は眠りの中に落ちていくのだった。
「「おやすみ我らが魔王様……」」
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