第32話 一夜明けて
「ん……ぅ。もう、こんな時間か……」
様々なことがあった二周年記念配信から一夜明け、セットしていた目覚ましを止め手元のスマホで時間を確認する。
昨夜は思わぬサプライズもあり、重大発表を無事できたことで緊張の糸がプツリと切れたのか配信終了後すぐにベッドに倒れこんだ。ベッドの中でSNSや送られてくるメッセージを眺めているうちにそのまま泥のように眠ってしまったらしい。
「うわ……、すごい量」
寝る前にある程度チェックしていたはずだが、それを優に超える数の通知をチェックしていくうちにまだ半分寝ている意識が覚醒していく。
無事に二周年記念配信と重大発表を乗り切ったんだ……。
たくさんの仲間たちから祝われて、嬉しいサプライズもあって発表も受け入れてもらえた。あらためて思い返してみればあまりに濃すぎる一日だった。
そろそろ時間か……。
ベッドの上でごろごろ過ごしているうちに今度は私が所属する
公式アカウントと共にリリースが発表され、世にリーゼの存在も発表されるのだ。
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黒惟まお@liVeKROne/9月12日加入配信さんがリツイート
liVeKROne【公式】 @liVeKROne_official
新規Vtuberプロダクション #liVeKROne 始動!
あわせて所属タレント二名の情報解禁!!
詳細はこちら pr.release.jp/main/html/rb/p...
#liVeKROne
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黒惟まお@liVeKROne/9月12日加入配信 @Kuroi_mao
魔王として歓迎しよう、皆も応援をよろしく頼む
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リーゼ・クラウゼ@liVeKROne/9月13日デビュー @Liese_Krause
はじめまして、liVeKROneからデビューするリーゼ・クラウゼと申します
憧れの魔王様を目指しVtuberとして修業しに参りました!
わたくしが立派な魔王になれるように応援していただけますか?
#liVeKROne #新人Vtuber #Vtuberデビュー
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予定通りにアカウントの情報を更新し、公式アカウントとリーゼをフォローし公式メッセージを拡散。VtuberとしてSNSデビューを果たしたリーゼにもメッセージを送る。
これで晴れてリーゼは私、黒惟まおの同期となったのだ。
昨夜の配信はVtuber界隈だけではなくメジャーで活躍する歌手である
それと同時に私も再びとんでもない数の通知の処理に追われることになるのだが……。
◇
「まさか、まおちゃんに隠し子がおったとはなぁ……」
「いや、娘じゃないからね?どっちかっていうと妹でしょ」
明らかにからかいの色が濃い言葉を投げかけてくる相手に呆れたように言葉を返す。
ある程度通知も落ち着き始め個別でお祝いメッセージをくれたVtuberの子たちへ返信をしていると、また別口で通話のお誘いがあったのでいつまでもベッドでごろごろしてる場合ではないかと配信部屋で通話を始めたら開口一番これだ。
たしかにリーゼには母性をくすぐられることもあるが、同じママであるSILENT先生を持つもの同士でいうならばリーゼは妹といった扱いのほうがVtuber業界的には正しいのだ。
「それにしてもほんま驚かされてばっかりや」
「それをいうならこっちもかなり驚いたんだけど。アカリちゃんの件」
「いいプレゼントやったやろ?」
「それは……そうだけど」
「一緒に見ようって誘ってきたんはアカリ先輩やからね?最後にちょいと押しただけです~」
何も悪びれる様子もなく、くつくつと笑い声を漏らす通話相手はLive*Live二期生の
まぁそのおかげであのあとアカリちゃんから、うたみた動画についての話と企業所属についてのお祝いの言葉までもらえたのだからいいプレゼントであったことは間違いないのだが。
「事務所ならうちに来れば良かったのになぁ大歓迎やのに」
「いまそっちの倍率すごいんでしょ?私なんかじゃ通らないって」
「そんなんウチに任せてくれればちょちょいのちょいや」
まだVtuberがそこまで注目を集めていなかった頃はまだしも業界トップを争うようになったLive*Liveオーディションの倍率はすさまじいことになっているのは想像に難くない。
ただ冗談で言っているのであろうが彼女なら本当になんとかしてしまいそうな気がしてしまう。Live*Liveの顔であり大黒柱は明日見アカリであることは誰もが認めるところであるが、一部のファンの間では先輩にも後輩にも慕われ様々な情報を元にメンバーたちを翻弄する宵呑宮 甜孤こそ裏の支配者である。とまことしやかに囁かれているのだ。
しかし、そんな事で受かっても嬉しくないことは他ならぬ本人が一番わかっているだろう。
「甜孤の後輩は大変そうだからなぁ」
「たーっぷり可愛がってあげたのに残念やわ~」
冗談交じりに返すが、実はLive*Liveにも書類は送ったし面談までは行けたのだ。ただどうしても条件が合わなくて見送りになったことは誰にも話してはいない。そもそも条件が合ったとしても最終的に受かっていたかは怪しいところだ。
「それじゃ今度妹さんにも挨拶させてなー。うちの後輩ちゃんたちもまお様に会いたがってたし。これからも仲良くやっていきましょ」
甜孤に翻弄されるリーゼの姿しか想像できないが、そう言ってくれるのは純粋に嬉しい、企業所属となってもLive*Liveさんとは良好な関係が築けるに越したことはない。
これから配信やから~と配信時間ぎりぎりまで話していった相手を見送り、私も配信の準備に取り掛かるのであった。
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