第31話 同期と推し活
『今宵も我に付き合ってもらうぞ──』
画面の中のまお様がいつもの挨拶をして二周年記念配信が始まる。
配信内容については聞いていなかったが凸待ち配信と発表された時からSNSを見るだけでもかなりのVtuberからの参加表明と共にファンからもお祝いの言葉が届いている。
できることならわたくしも表舞台でお祝いしたい……が、いまだVtuberとしてデビューしていないこの身では個人アカウントでお祝いするくらいしかできないのが歯がゆい。
といっても、この先同期としてデビューを予定し配信について様々なアドバイスを直接してもらっていることを考えれば贅沢すぎることではあるのだが。
マリーナから守るためにまお様と出会い共に過ごし、勢いもあったが共に同じ事務所で活動することになり……。あの時の出会いからすでに数か月、
そんな物思いにふけっていると画面では早速凸待ちが開始されたようで、トップバッターとして
この三人組はもはやおなじみといってもいいくらい仲のいい組み合わせとして有名で、黒に宵に闇と三人とも夜に関連する名を冠していることからファンの間では「夜のお姉さん組」や「真夜中シスターズ」なんて呼ばれて親しまれている。普段しっかりしているまお様が二人に振り回されている様子は新鮮でかわいらしく見ていて飽きないのだ。
わたくしもまお様とうまく配信で絡んでリスナーを楽しませることができるだろうか……。
そんな二人の凸から始まり大盛況の凸待ちはどんどん進んでいく。配信上でまお様と交流のあった方は見覚えがあるが、わたくしの知らない方も数名いて改めてまお様の交流の広さを思い知る。まお様はずっと笑顔で思い出を語り、相手から明かされるたらしムーブには照れたように笑っている。本当にこの人は配信上でも配信外でも相変わらずの人たらしっぷりを発揮しているらしい。
凸もいったん落ち着いたかと思った矢先に現れたのは自称永遠のライバルである「たつ子」こと
桜龍さんが言う「まお様の無自覚っぷり」については激しく同意せざるを得ない。
そして凸待ち終了かと思ったところにやってきた
わたくしが本格的にVtuberについて知ったのはまお様がきっかけだったので最初は詳しくはなかったのだが、Vtuber黎明期から活動をしていて今となっては業界トップを争うLive*Liveの設立メンバーであり大黒柱。初めてライブの映像を見たときはそのパフォーマンス力の高さとVirtualを活かした演出に感動を覚えたものだ。
まお様も大ファンであり、突然登場した明日見さんにあわあわしている姿は微笑ましい。わたくしも多少は慣れたとはいえまお様を目の前にしたときの反応を思い出せば決して他人事ではないのだが。
まお様と明日見さんのうたみた動画……。いつかわたくしもまお様と動画を出したり一緒に歌ったり……、そう考えると今すぐにでもデビューしたくなってくる。もし、目の前でビームを撃たれたら意識を保てる自信はない。
そのあとに発表された二周年記念グッズのイラストは完全に不意打ちだった。
グッズは出るだろうと思っていたが。よりにもよってそのイラストが純白のウェディングドレスに身を包んだまお様なのである。一周年記念の水着もそうだが本当にSILENT先生は天才としか思えない。普段黒いドレスを着ているまお様が純白のドレスを着ることによってそのギャップはすさまじく魔王というかもうその姿は女神様にしか見えないのだ。しかも、左手をこちらに差し出して上目遣いでこちらを恥ずかしそうに見つめてくる姿……。こんなのわたくしが幸せにしてあげるしかないじゃないか。そして指輪を交換したあとは誓いの……、キ……。ってあぶないトリップしかけるところだった……。グッズ詳細をはやくチェックしなければ……。
くっ、まだ商品ページがオープンしてない。幸い数量限定という訳でもないので焦る必要はないのが救いだ。グッズもボイスも楽しみすぎる……、リングがあるということはわたくしがつけてもいいしまお様につけていただくのも……。
記念グッズの内容に興奮しているうちに配信のほうでは突然現れた
彼女が語るまお様は昔から変わっていないようで、頷きながらその話を聞いているまお様の姿はとても嬉しそうでいい友人関係であることは一目瞭然であった。
そんな彼女から贈られたサプライズはまお様も把握していなかったようで困惑しながらも聞こえてきた声には聞き覚えがある。脳裏に浮かぶのはあの喫茶店での出来事で、まごうことなきSILENT先生その人だ。
本当にSILENT先生はまお様の事を大切に思っている……。
初めて先生と話したあの日も感じたが、わたくしなんかが気付けないまお様のちょっとした変化にも気付いていたのだろう。かけられる言葉はどこまでも優しく本当の親のような愛情を感じた。
先生とあの日約束した言葉はずっとわたくしの胸に残っている。
最後には企業所属の件が告げられ、暖かいコメントに囲まれているまお様の様子を見てこちらも安心すると共に嬉しくなるが、次はわたくしの番かと思うと緊張もしてきてしまう。
このあとは事務所からリリースが出され、わたくしの存在も公表されるのだ。こんなにも仲間やファンに愛されている『黒惟まお』の同期としてデビューする『リーゼ・クラウゼ』として。
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リーゼ・クラウゼ@liVeKROne/9月13日デビュー @Liese_Krause
はじめまして、liVeKROneからデビューするリーゼ・クラウゼと申します
憧れの魔王様を目指しVtuberとして修業しに参りました!
わたくしが立派な魔王になれるように応援していただけますか?
#liVeKROne #新人Vtuber #Vtuberデビュー
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プロダクション「liVeKROne(ライブクローネ)」設立のお知らせ。
株式会社Connect2Links
株式会社Connect2Linksはこの度Vtuberプロダクション「liVeKROne(ライブクローネ)」の設立と共に所属タレント2名の情報を発表いたします。
【タレント情報】
■黒惟まお(KUROI MAO)
「今宵も我に付き合ってもらおう」
かつては魔の世界を統べていた魔王だったが、そんな生活に飽きてしまい人間界でVtuberとして活動を開始する。
・イラストレーター:SILENT
・SNS:Kuroi_mao
・チャンネル:【黒惟まお/魔王様ch】
■リーゼ・クラウゼ(LIESE KRAUSE)
「わたくしもいつかはあの方のように……」
伝説の魔王に憧れ、自らも立派な魔王になるために修行中の魔王見習い。修行の一環として様々な種族が活動しているらしいVtuberの世界に飛び込んできた。
・イラストレーター:SILENT
・SNS:Liese_Krause
・チャンネル:Liese.ch リーゼ・クラウゼ
【スケジュール】
各タレントの初配信・加入発表配信のスケジュールも公開いたしました。
まずは「liVeKROne」へ加入した「黒惟まお」が9月12日に加入発表配信を行います。9月13日には、新たにデビューする「リーゼ・クラウゼ」がデビュー初配信を実施します。
※各タレントのスケジュールは予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。
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