第30話 サプライズと重大発表

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桜龍おうりゅうサクラ子@ぶいロジ!/来週龍族コラボ @oryu_sakurako

今日くらいはお祝いしてあげますわ!!

#黒惟まお二周年記念凸待ち

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明日見あすみアカリ@Live*Live/新曲配信中! @asumi_akari

まおちゃんの凸待ちに行ってきたよー

うたみたの約束もしたしお楽しみに!

#黒惟まお二周年記念凸待ち

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「アカリちゃん忙しい中本当にありがとう、夏フェスライブ最高でした」


 :それな

 :さすがファン

 :新曲良かったなぁ


 アカリちゃんの登場には驚かせられたが、いちファンとして、彼女を見てVtuberになった身としては嬉しすぎるサプライズだった。

 おかげで視聴者数は記念配信ということでいつもよりは多いくらいだったのだが、更に伸び中々見れない数字になっている。


「ではそろそろ良い時間なので凸待ちはここまでにさせてもらう。来てくれた人、予定が合わずにメッセージを飛ばしてくれた人、見守ってくれていた人。みな、本当にありがとう」


 今回、二周年記念凸待ち配信の告知をしてからはたくさんの人からSNSやメッセージアプリで参加宣言やお祝いの言葉をもらっていた。「予定があって行けないけどお祝いの言葉だけは!」「行けたら行く」「仕事が……;;」「配信が……;」など本当に様々だ。それだけこの二年間で知り合いや友人、仲間が増えたのだと思うとこの活動を始めて本当に良かったと思う。


「それじゃあ、いよいよ重大発表……の前に、告知がひとつともうひとつ皆に見てもらいたいものがある」


 :いよいよか

 :焦らしていくぅ!

 :重大じゃない告知?


「まずは告知の方だが、黒惟くろいまお活動二周年記念グッズを今年も出せることになった。おなじみSILENT先生描き下ろしB2タペストリーに何かアクセサリーを出して欲しいという声も多かったのでリングと、今回はボイスも収録してある。フルセット購入してくれた者には、タペストリーと同じデザインのポストカードに今年も直筆サインを入れたものとフルセット用に追加収録したボイスが付いてくる」


 :二周年記念グッズきちゃ!!

 :ウェディングまお様……だと!?

 :直筆助かる

 :戦争回避助かる

 :エンゲージリング!?

 :ボイス助かる

 :こんなん結婚しちゃうじゃん


 配信画面に二周年記念グッズの画像を表示させながらその内容を説明する。基本的にグッズに使うイラストの内容はしずに任せているのだが、今回はリスナーからの要望もあったアクセサリーを出したいと話したところ「じゃあリングにしようよ」と言われ用意されたのは純白のドレスに身を包んだ姿だった。


「リングにはチェーンもつくからネックレスにして身につけてもいいし飾ってもいいし、……まぁ一応ペアリングになる」


 :重大発表ってやっぱり……

 :なるほどね完全に理解したわ

 :結婚したのか、俺以外のヤツと……


 コメントの流れが完全に約一ヶ月前のお知らせ歌枠で今日の告知をしたときと同じになっている。あのときにはイラストもグッズもほぼほぼ決まっていたので内心ドキドキしていたのだ。


「販売開始はこのあと21時から、受注生産で限定でもないから急がなくても大丈夫だが買ってくれると嬉しい。ボイスもそれなりに頑張って収録したのでな」


 ボイスについてはベースは私自信で考えたが、度重なる静からのダメだしを受けて台本はほぼ静の作品と言っていいものになった。最終的にはプロポーズを受けるVerとプロポーズをするVerの二通りのボイスが収録されている。


「そしてもうひとつは、とある人物からメッセージをもらっている。そいつも凸待ちに来たかったみたいだが忙しいのと事情があって動画という形になった」


 :メッセージ?

 :誰だ?

 :本命か?

 :重大発表、ウェディンググッズ、あっ(察し


「中身は当日まで絶対に見るなと言われているので初めて見るのだが……。一緒に見ようか」


 動画を流し始めると画面には金髪ショートの女性が映し出される。


『ん?これもうはじまってる?あー、こんにちは。いやこんばんは?ハハハ、どっちでもいっか。まお活動二周年おめでとう』


 :!?

 :誰?

 :えっ

 :天使ちゃん!?

 :ま?


『ん?自己紹介?あぁそっか、どうも天使あまつか沙夜さやです』


 画面上に現れた全国ツアー真っ最中のアーティスト、天使沙夜こと幼なじみであるつかさの姿にコメントが一気に加速する。

 おお、驚いてる驚いてる。


『ほんとは直接祝ってあげたかったんだけど今ツアー中だし、色々とね?まぁ知ってる人も多いと思うけど魔王様とは付き合いも結構長くて、こうしてアーティスト活動できてるのもまおのおかげだと思ってるからすっごく感謝してるよ。あんまり本人には言ってないんだけどね。ってここで言ったら聞かれちゃうのか』


 ハハハと笑いながら恥ずかしそうに頬を掻く姿は昔とちっとも変わっていない。


『まおは本当に誰にでも優しくて……まぁそのぶんたらしなところがあるけど。たくさんの仲間とファンに愛されてるんだから、二周年を迎えてもまおらしく楽しんで活動して欲しいな。そんなまおの姿を見てこっちも頑張るからさ。あーなんかこういう風に言うと結構恥ずいな。それじゃ、ファンのみんなまおの事よろしく頼むよ』


 :昔からたらしだったのか

 :てぇてぇ

 :めっちゃ仲良しじゃん

 :なんか泣けてきた

 :いい関係だなぁ


 いったいどんなことを言われるのかと思っていたが、優しい言葉にこちらも嬉しくなると共に恥ずかしくなってしまう。相手は売出し中のメジャーデビューアーティストということで大人の事情もあり通話どころかメッセージも難しいと思っていたが、そこはつかさがなんとかメッセージだけでもと色々交渉してくれたらしい。


『あっ、そうだ。もうひとり祝いたいってやつがいるらしいぜ?』


 締めの言葉が入り動画を止めようとしたところで付け足された言葉にその手が止まる。え?何?そんなの聞いてないけど。また誰か出てくるの?そう思って身構えていても動画は終わり画面は暗転してしまう。


「えっ?動画終わったが……、ともかくありが……ん?」


 感謝の言葉を言おうとしたところで通話がかかってくる。凸待ちは終わったはずだけど……。そう思ってかけてきた相手の名前を見て思わず二度見してしまう。


───────────

 SILENT 着信中...

───────────


 :どしたん?

 :綺麗な二度見で草

 :ん?

 :何だ?


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 私が配信中であることはもちろん知っているはずだ。……これは本当に出ていいの?


 魔王まお:出ていいの?配信中だよ?

 SILENT:知ってる、いいよ


 突然のできごとに困惑しながら確認のチャットを送るがすぐさま返ってきた言葉に通話開始ボタンを押す。


「まお、おめでとう」


 :誰だ?

 :なんだこのくそかわボイス

 :聞いたことないけど

 :誰よその女!

 :立ち絵はよ


「えっと、お名前を聞いても」

「みなさん娘がいつもお世話になっていますSILENTです」


 :娘?

 :ふぁっ!?

 :マッマ!?

 :!?

 :まじでSILENT先生!?

 :初めて声聞いた


 天使沙夜の時かそれ以上にコメント欄がすごい勢いで流れていく。それもそのはずだ、SILENT先生といえばメディアにも配信にも一度も声を載せたことはないはずだ。それどころか関係者すらその声を聞いたことがある人間は限られている。

 そんな人物がいきなり配信の生通話で登場して、しかもその声は誰もが心を掴まれるようなキュートボイスなのだ盛り上がらないはずがない。

 天使沙夜の登場はリスナーへのサプライズのつもりだったが、これは完全に私へのサプライズだ。つかさと静にまんまとやられた。


「どうして急に……?」

「娘の二周年記念に駆けつけたらいけない?」

「いえ、あの。嬉しいです」


 :会話が完全に親子のそれ

 :こんなん親フラやんけ

 :SILENT先生こんなにかわいい声だったのか

 :授業参観かな?


 普段の調子で話していいのかわからなくてどうしても会話がぎこちなくなってしまう。あんなに外部への露出を避けている節があった静がいきなり配信に現れるなんてどういう心境の変化だろうか。


「まおはさ、すごいよ」

「静……?」

「今日だってあんなにたくさんの人たちがお祝いに来てくれて、みんなまおのことが大好きで。いつも配信は楽しそうだしファンのみんなを楽しませようと一生懸命でさ。大変な時期もあっただろうに全然そんな素振りも見せないし、私にはもったいない娘だとずっと思ってる」

「静……」

「だから今日はちゃんとまおに、私の娘に配信でお祝いしてあげたくてさ。天使ちゃんにも協力してもらったんだよ、まぁ少しは驚かせてみたいってのもあったけどね。今日の発表で色々と変わることもあるかもしれないけど私はいつでもまおの側にいるし、味方だから」


 :泣きそう

 :泣いた

 :誰だよ低画質モードにしたやつ

 :ママ……


 今日の発表、それによって様々なことが変わることへの期待と不安。今までは何かあっても自分ひとりの責任だったが、これからは新しく出来る事務所の看板を背負うのだそういうわけにもいかない。ここまではきっとみんな喜んでくれるからと自分に言い聞かせて突き進んできたが、きっとそんな風に配信している姿は静から見れば無理をしているように映ったのだろう。敵わないなぁ……と思う。


「ありがとう静」

「それじゃあ頑張って」


 短い一言を残して静が通話を終了させる。だがその短い一言で何があっても頑張れる。


「では、今度こそ重大発表を行おうと思う」


 私の言葉を待つようにいつもは賑やかなコメント欄も少しだけ大人しく待っているように感じる。


「黒惟まおは個人勢を卒業し、企業所属になることになった。それによって基本的にこれまでと何か変わるということは今のところないが、皆も変わらずに付いてきてくれると嬉しい」


 :どこの企業?

 :変わらないなら安心した

 :付いていくに決まってんじゃん

 :どこまでも付いていくからな

 :企業勢になろうが推しであることに変わりはないんよ

 :もっと活動の幅が広がるってこと?


「どこの企業か正式な発表は後日、事務所側からリリースされる予定だ。ひとつ言えるのはまったく新しい新設の事務所になる」


 :新設!?

 :箱が増えるのか

 :まお様大抜擢じゃん

 :おめでとう!


「活動の幅は広がると思う、これをきっかけに配信に集中することにしたからな」


 :もう残業しなくていいんやなって……

 :専業になるんか

 :思い切ったなぁ

 :変わらず、いやもっと応援するよ!


 ひとまずは受け入れてもらえそうなコメント欄に安堵し、現状答えられることは少ないができるだけ答えていきながら徐々にお祝いの言葉が増えていくコメント欄を眺めると徐々に実感が湧き始めた。コメントだけではなくSNSやメッセージアプリにも大量のメッセージが届いているのが通知から伝わってくる。


「皆本当にありがとう、期待に応えられるようにこれからも頑張りたいと思う」


 :おつまお!

 :おつまおー

 :いい凸待ちだった


 最後に改めてのお礼と決意を言葉にして配信を終える。


黒惟くろいまお【魔王様ch】:最高の二周年記念配信になった、本当にありがとう

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