第29話 二周年記念凸待ち配信②
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お邪魔いたしました~
まおちゃんの重大発表気になるな~
#黒惟まお二周年記念凸待ち
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黒様へ愛を伝えちゃった(⋈◍>◡<◍)。✧♡
いいお嫁さんになるためにガンバルぞ♪
#黒惟まお二周年記念凸待ち
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「まお様おめでとうございます!」
「まお様お慕いしています……」
「またコラボしたいです!」
「……おめでと」
「さっきの子とはどういう関係なんですか!?」
最初に来た二人がしっかりと場を温めてサクっと帰っていってくれたおかげで、凸待ちは思った以上に盛況だ。配信で絡んだことがある子や、動画編集で携わった子、次々と来るメッセージを捌きながら通話を繋ぐとお祝いしてくれる言葉が嬉しい。時々少し毛色が違う言葉が飛び交っている気がするが深くは考えない方がいい気がする。
「まさかこんなに来てくれるとは思わなかったな……」
:いや、まおの女多すぎやろ
:冗談抜きに行列出来てて草
:まさしく人たらし魔王
:なおここまで人間0人の模様
凸ラッシュが一旦落ち着いたので一息ついて、メッセージの見落としがないか確認していると事前のメッセージもなくいきなり通話がかかってくる。その相手を見て、少しだけ躊躇するが通話開始ボタンを押す。
「
第一声からしてとてもよく通る声がヘッドホンを貫通してこちらのマイクに乗るんじゃないかと思うほどの声量で届く。配信ソフトのゲージが真っ赤になって振り切れているので慌てて相手の音声を下げる。
:!?
:鼓膜ないなった
:ん?ミュートか?
:ミュートニキは耳鼻科行ってもろて
「たつ子うるさい」
「だからワタクシの名前はたつ子ではないって!何回言えば!覚えるんですの!?」
:たつ子きちゃ!!
:よう、たつ子
:相変わらずの声量で草
「ほら、じゃあ名乗って」
「んぐぐ……、ぶいロジ!所属の
「立ち絵もらっていい?」
「すぐにお送りしますわ」
:相変わらずの塩対応
:立ち絵もってないのかよ
:この前コラボしてなかったっけ?
:素直なたつ子かわいい
すぐに送られてきた立ち絵をダウンロードして配信ソフトに取り込んで……、ってサイズでっか!?一瞬で配信画面がお腹のドアップになったのでバストアップになるまで縮小する。
ピンクゴールドのボリュームたっぷりな無造作ロング髪に勝気な表情を浮かべ、チューブトップキャミソールにホットパンツで腕を組み仁王立ち。桜龍と聞くといわゆる東洋の龍がイメージされるがバリバリ西洋風ドラゴン娘のお嬢様が画面上に現れる。
:でっっっっっっっっか
:草
:へそ助かる
:スタジオモード使ってもろて
:へそ隠さないで
Virtual mythology、ぶいロジ!所属の桜龍サクラ子は私がデビューして約半年後から活動を開始したVtuberだ。たつ子というのは、名前をもじって龍の子だからたつ子と呼んでみたら思いのほかしっくりきたので時折そう呼んでいる。
デビュー時から何故か目の敵にされ色々張り合ってきたりゲームで勝負を挑まれたり。それでも性根は真っすぐで気持ちの良い性格をしているので個人勢と企業勢という間柄ではあるがかわいい後輩といった扱いになっている。まぁ本人には間違っても言わないけど。
「それでいきなり通話かけてきてどうかした?」
「……凸待ちしていたんですわよね!?」
「していたが」
「魔王である貴女の凸待ちに桜龍たるワタクシが来なければ盛り上がらないでしょう!?」
「素直に祝いに来たって言えばいいものを……、サクラ子来てくれてありがとう」
「べっ、別にそんなつもりは……って!だからワタクシの名前はサクラ……、……んっ?」
:ツンデレ助かる
:まおたつでしか摂取できない成分があるんだよなぁ
:たつ子混乱してて草
:遊ばれてるやんけ
ほんと、からかい甲斐があってついつい意地悪をしてしまう。きっと今画面の前では首を傾げているんだろう。
「とにかく!二周年だからといって油断しているとワタクシが追い越していきますからね!」
今となっては私よりよっぽど登録者も多いし、視聴者も向こうの方がついている。とっくに追い越されていると思っていたところに投げかけられた言葉に今度はこっちが首を傾げてしまう。
「もうとっくに追いつかれているとは思うが」
「そういうことではなくて……、あぁもうっ。そういう無自覚なところ直した方がいいと思いますわ!二周年おめでとうございます!では失礼いたしますわ!」
:それはそう
:そういうとこやぞ
:憧れの先輩ってことでしょ
:鈍感で人たらしってラノベ主人公なんだよなぁ
桜龍サクラ子-Oryu sakurako-:首を洗って待ってなさい!!
「相変わらず嵐のようなやつだったな」
コメント欄では散々な言われようだ。慕ってくれているのは感じているけど半年先に活動を始めただけの私より、企業に所属して
さて、そろそろ凸の流れも終わり記念グッズの告知でもするかと準備しようとしたところでメッセージが一件滑り込んでくる。
「えっ、本当に?あっ、ちょっと待っててください」
:ん?
:どうした?
:素出てるぞ
:タイピングはっや
凸終わりの空気を感じてかメッセージを送ってきた相手も無理に通話しなくてもいいよと言ってくれているがそういう訳にもいかない。むしろ私が話したいのだ、その旨を勢いよくタイピングしあわせて立ち絵も送ってもらい準備を整える。
「こほん……、まさかこの方に来て貰えることになるとは……挨拶お願いしても?」
「まおちゃん二周年おめでとう!Live*Liveの
悪戯っぽく言葉を続けながらあははと朗らかな笑い声を漏らす相手はよく知る甜狐が所属しているLive*Liveの中でも特別な一人。
サラサラで明るいオレンジに近い色の髪を肩まで伸ばし、輝くような明るい笑顔は見る者すべてに元気をくれる。セーラー服をアレンジしたようなアイドル衣装はお腹を大きく出していて透け感のある素材も多く使われているが健康的な魅力のほうが強い。
Live*Liveの良心、アイドル最後の砦、人数が増えるにつれどんどん個性が強くなっていくメンバーの中でもそう呼ばれているのはLive*Liveの創設からいる明日見アカリくらいなものだ。
:アカリちゃん!!
:夏フェス衣装ほんとすこ
:最後にアイドル来たな
:直接絡みあったっけ?
「明日見さんに様なんて呼ばれたらファンや他のメンバーになんて言われるか……」
「そんな事気にしなくていいのに、それに下の名前で呼んでくれてもいいんだよ?」
「……えっ、あ。アカリ……さん」
「さん?」
「アカリちゃん……さん」
:まお様が押されてる……だと?
:ほら、まお様アカリちゃんのファンだし
:流石アカリちゃんさん
:ただのファンで草
うるさい、仕方ないでしょ。魔王時代からファンでVtuberになろうと思ったのもアカリちゃんきっかけみたいなところもあるんだから……。
「こうやって配信上で一対一で話すのは初めてだよね」
「えぇ、そうですね」
「まおちゃん、魔王様忘れてるって」
「……そうだな」
:これは貴重なシーン
:魔王様忘れないで
:魔王が人間に弱いのは伝統
:勇者アカリちゃんさんじゃん
:何気に今日初の人間凸じゃね
「ふふっ、今日初めての人間だって、ほんと?」
「たしかに天狐にサキュバスに、人狼、悪魔、エルフ、ドラゴンに……」
言われてみればここまで凸しにきてくれた者は全員種族でいうなら人間ではなかった。
「甜狐ちゃんとも仲いいんだもんね、他にもうちの子たちと仲良くしてくれてるって聞いてるよ、今日の配信も一緒に見てたし一緒に来たがってた子もいたんだけどね。あんまり大勢で押しかけるのも迷惑かもってことで代表で行ってきてほしいって言われて」
:Live*Live攻略してるやんけ
:まずは外堀から攻めてるのか
:完全に魔王討伐しにきた勇者
絶対に甜狐も一枚噛んでるのは間違いないだろう、感謝していいのか教えてくれなかったことを恨むべきか……。
「コラボだったり動画編集で仲良くしてもらっているメンバーが多いからな、こちらこそ助かっているので……」
「私のうたみた動画も何個かお願いしたことあるんだよ~。すっごい出来がよくてスタッフさんも大絶賛だったり」
:そういう繋がりだったんだ
:まお様すごいやん
:さすまお
:ビームは撃たないけど人には撃たせる女
おかげで世に出る前のアカリちゃんのうたみたを聞く事ができて役得感がすごかったんだよなぁ……。いつも以上に力が入って、自分でも納得いく出来だったので本人の口から好評だったと聞くのはとても嬉しい。
「あっ、私ばっかり喋っちゃったけど時間とか大丈夫?」
「時間は気にしなくても、と言いたいところだが。アカリちゃんも忙しいだろうし……」
「私は全然大丈夫だけど、そろそろみんなもいつもの魔王様が恋しくなってきたんじゃないかな?それじゃあ、本当に二周年おめでとうまおちゃん!これからも仲良くしてねっ!そうだ!今度一緒にうたみた動画とか出せたら嬉しいなぁ」
「ありがとう、それは是非っ」
「じゃあ約束だね!それじゃあ明日見アカリでした~」
:即答やんけ
:そりゃね
:出るならマジで楽しみ
:アカリちゃんにビームお願いするしかないな
:それだ
:アカリちゃんありがとう!
:アカリちゃんさんまお様のことよろしくお願いします
思わぬところから出た提案に勢いよく飛びつくと、それもふふふと笑われてしまうがそんな事はどうでもよくなるくらい嬉しい提案だ。これで社交辞令だったら泣く自信がある。
akari ch.明日見アカリ:ビームもいいかもね!
コメント欄……。あとで覚えておけよ。
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