第6話

 あさりの塩抜きて、みたことあるか?

あさりにも口があってな、殻の端からにゅっと伸ばしよるんよ。

 触手いうんか、吸い口いうんか知らんけど、肌色の身ィでな。

 あんなん、ちょっと女に似ててええやろ。

 さあて、オスメスあるんかは知らんけど、ワシそういうあさりになっててな。布団から肌色の脚にゅって突き出して、足の裏から潮吹いてたんよ。

 えろお気持ちよくてなぁ、そう考えたら男やったんやろか。わからんけどな、足の指丸めたらそのたんびに腹の下が気持ちよォなって、いくらでも吹いてたわ。

 目ぇ覚めたときは不思議な気分でな、土踏まずが濡れてるような気ィして、なんやもそもそしたわ。お客さん、言うて起こされたんやろか。それも覚えてないけどな。

 とにかく腹と足の裏がむずむずして、いつまでもあったこうて、ずっと変な気分やったわ。

 物食べるて不思議やんな。

 変な話やけど、ワシあれ以来、あのあさりうどん食べてからずっと、腹ん中に海がある気がしとるんよ。

 時々こうしてへそに手ェ当てたら、あさりになったことのこと思い出すねん。

 殻の中にちゃんと身ィがあって、たまに潮吹いて。ちゅっちゅ、ぴゅっぴゅてな。ヒヒッ。

 ワシ生まれ変わったらあないな女になりたいわ。きっと引っ張りだこやで。あさりやけど。

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