出会いは偶然?

「ぐみ~!」


カフェで待ち合わせしていると、時間より早くにやってきたのは友人のさき。

学生時代からの友人で、会うのは久しぶりであった。


「久しぶり!」

「久しぶり~!あ、もう注文した?」

「ううん、まだ」


メニューを一通り見て、店員を呼び止め注文をした後、話を切り出したのはさきだった。


「最近どう?」

「何が?」

「塩野くん」

「あぁ、おみ?」


冷たい水を一口飲みながらさきを見ると、ぐみは考える素振りをする。


「特に変わらず?一緒にご飯食べてお菓子食べて、寝る」

「そうね、相変わらずっていうのはわかった」


甘い話を予想していた訳ではないが、それがなんだかぐみらしくてさきは少し笑みを溢した。


「それにしても、よく続いてるね。出会ったのだって偶然に近いでしょ」

「まぁ偶然は必然にもなりうるから」

「ぐみは唐突に大人っぽくなるね……」

「何言ってるの。だいたい出会いなんて突然でしょ」


久しぶりに会ったふたりの会話は途切れることなく続いていた。


***


それはぐみが大学生の頃のこと。

とあるカフェにぐみとさきはいた。


「お願い!」

「えぇ……?」

「ぐみもこれ気になってたでしょ?」

「まぁそうだけど……」


頭を下げたさきのスマホには、とある作品のリアル脱出ゲームのページが表示されていた。


「一緒に行こうよ~!」

「誘ってくれたの、気になってる人なんでしょ?」

「その人が友達誘ってもいいよって言ってくれたの!!」

「私邪魔になりそうなんだけど……」


乗り気ではないぐみにさきは掴みかからんばかりに近づき手を握る。


「そんなことない!その人も友達連れてくるらしいから、ね?」

「……わかった。一緒に行くよ」

「ありがとぐみ~!!」


ごり押しした結果、いい返事をもらえて嬉しさのあまり、さきはぎゅーっとぐみを抱きしめた。


***


所変わってとある一室。

ノートパソコンを目の前に置いているおみの正面には、友人の木村が座っていた。


「なぁおみ!頼むよ!」

「やだ」

「もうお前くらいしかいないんだよ!」

「他に友達いるだろ」

「断られたんだよ!」


彼女いるとか、気になってる子いるとか、興味ないとか。そうぶつぶつと呟く木村を呆れた目で見るのは大学生のおみ。


「この作品好きだっただろ!?」


目の前に突き出したスマホに表示されているのはとある作品のリアル脱出ゲーム。ぐみが見せられたものと同じものだった。


「好きだけどやだ。人混み嫌いなんだよ」

「知ってるけどさぁ!もうちょっと話聞いてからにしてくれよぉ」

「じゃあどうぞ」

「あ、聞いてくれるのね」

「話さないんならいい」


そう言うと、おみは木村から目を剃らしパソコンに目を向ける。


「待って待って!話すから!」


木村のその言葉を聞くと、おみは開いていたノートパソコンを閉じ、聞く態勢をとった。

それを見て安心したのか木村は話し出した。


「俺気になってる子いてさ。その子と一緒に行こうって話になったんだよ。でも初めて出かけるのがこれだと気まずくなりそうだなって。4人でグループになってやるやつだから知ってるやつとやった方が気が楽だろ?だから友達連れて来ようぜってなった訳」

「意味がわからん」


心底不思議そうにおみは木村を見つめていた。


「いやタブルデートとかあるだろ!?ふたりっきりよりいいと思うんだよ」

「どっち道知らないやついるなら変わらないし、気まずくなる時は気まずくなる。それに友達と一緒にデートする思考回路が俺には理解できない。ふたりの方が進展するだろ」


おみに持論を投げられ、木村は苦しまぎれになりながらも反論をする。


「ぐ……純粋に楽しみたいんだよいいだろ!」

「そうか」

「ついでにほら!数量限定の!これやるから来い!」

「行く」

「おしっ!」


木村が取り出したのは最近話題の数量限定で販売されているティラミス。おみが食べてみたいと言っていたものだった。


おみは早速箱を開けて瓶に入ったティラミスをふたつ取り出すと、台所からスプーンを取ってきた。


「ほら、木村も食べるだろ」

「え、いいの?」

「甘いもの、嫌いじゃないだろ?」

「…おう!」



こうしてぐみとおみは、それぞれの友人の誘いに乗り、出会うこととなるのだが、それはまた別のお話。

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