お互いに作るもの

(秋の味覚の話)


「ぐみ、荷物届いてた」

「え?誰からだろ」

「たぶんぐみのお母さん」


届いた荷物には、ぐみにとって見覚えのある住所に見覚えのある名前が書かれていた。


「わ、ほんとだ。よく覚えてたね」

「そりゃ何回か来ればだいたいは覚えるだろ」

「そんなもの?」

「そんなもんだろ」


ふーん、と納得したのかしてないのかわからない返事をして段ボールを開けていく。

ここで豪快に開けていくスタイルなのが、おみのツボにストライクであったのはちょっとした余談である。


「何送ってきてくれたんだ?」

「えーとね……まずにんじんでしょ。あとはさつまいもに、栗もある!!」

「すごいな。これ、ぐみのおじいさんたちが育てたのか?」


一緒に入っていた1枚のメモには、おみが想像した通りぐみの祖父母が育てたさつまいもと栗、他にも育てた野菜を送ったと書かれていた。


「そうみたい!」

「じゃあ、ぐみのお母さんと、おじいさんたちにもお礼言っといてもらえるか?」

「はーい」

「俺が言うよりぐみが言う方が喜ぶだろ」

「そうでもないよ!おいしいって食べてくれたって言ったら喜んでたから!」

「……そうか」


興奮ぎみなぐみを落ち着けるような意味も込めて、ぽんっと頭を撫でた。


「それにしても、たくさん送ってもらったな」

「そうだねー。どうやって食べようね?」


話を変えると、ころっと表情も変わってさっきの興奮も静まったようだ。単純で思わず笑いが溢れる。


「え、何?」

「いや、何にも」


不思議そうに見つめてこられても、答える気はないので気づかないふりをする。


「ひとまず、さつまいもご飯にスイートポテト、あと栗きんとんもいいな」

「いいね、美味しそう!」


さつまいもに栗は、気軽に秋の味覚を味わえるもののひとつだろう。焼きいもや甘栗だとよく売られているのを目にする。

作るとしたら炊き込みご飯にしてもいいし、メインにもなり、お菓子にもできる。

考えるだけでも夢広がり、幸せな気分になるふたり。


「今度スイートポテト作るかぁ」

「やった!おみの作るお菓子好きなんだよねー」


おみの趣味はお菓子作りで、出先で食べたスイーツを再現したりすることもあるのだ。

一方で料理は得意だが、お菓子作りはちょっと苦手なぐみはもっぱら食べる専門になっている。

そうやっておみの作ったお菓子を食べるたびに、ぐみの胃袋は掴まれていまい、今ではすっかりおみの作ったお菓子が好物にもなっていた。


「さつまいもご飯も食いたいな」

「じゃあ私が作る!」


そしておみも料理をすることがあり、苦手ではないものの、おみはぐみが作った料理が好きだった。


「これじゃ、さつまいもばっかりだね」

「だな。栗も食べよう」


そうして、お互いに作ってもらったものを一緒に食べるのがふたりにとって楽しくて幸せな時間なのだ。

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