ふたりだけのマイブーム

「ねぇおみ」


自宅のソファーにふたりで並んで座っていると、ぐみがぺしぺしと肩を叩いてきたので、おみはスマホから目を離し、ぐみの方に顔を向けた。


「これ、美味しいのかな」


そう言ってぐみが見せたのは、スマホに写ったグミの写真。

SNSで話題になっているらしく、気になっているようだ。


ぐみはよくグミを食べている。

言葉だけ聞くと共食いのようであるが、そんな姿を見ているおみとしては、また買ってくるのだろうなと思っていた。しかし、ふと気になったことがある。


「なぁ、今グミ何個持ってんの?」

「え? どうだったかな……」


そう言ってぐみがバッグの中身を探るのを、おみは何もせずぼんやりと見つめていた。


「はい、今は2つ。これは硬くてすっぱいやつで、これは小さいのがいっぱい入ってるの」


見せられたのは、ハードと書かれたレモン味のものと、小さな果物の形をした4種類の味が楽しめるグミ。


「この小さいのを2つずつ食べるのがいいんだよね」と言って、ぐみが4種類のグミの方を開けると、そのまま食べ始めた。

こういう風に頻繁に食べるのだから、グミの入れ替わりが早いのだろうな、とぐみを見ながらおみは思わず考えてしまった。

実際、1週間で1袋食べているため、毎週違うグミが手元にあることになるのだが、それはおみが知らないことである。


「食べる?」

「……いや、いい。食べな」


おみに見られていたのが、欲しいからだと思ったのだが、違ったみたいだ。

ぐみは気にせず食べることに集中していると、「あ、そうそう」とまたしてもバッグの元へ行き、戻ってくるなり、「手出して」と言った。


「手?」

「ほら」


そう言われて出されたおみの手の上にコロコロと落ちてきたのは、数個の飴。


「塩キャラメル味見つけたの」


目を輝かせて見つめてくるぐみに、無性に愛しさが込み上げてくる。

彼女に振り回されることは少なくないが、それ以上に愛情も伝わってくるため、そんなところも好きに思えてしまうのも確かだった。


「ありがと」


おみは優し気に笑った。手元を見ながら言われたため、その表情を正面から見ることはできなかったが、それでもぐみは胸の奥が温かくなった。


ふたりで一緒に食べる飴は、ひとりで食べた時より美味しく感じた。



それからと言うもの、ぐみはことある毎に塩キャラメル味のお菓子を買ってくるようになった。

そしてそのお返しとでもいうように、おみはグミを買ってきた。

相手にお裾分けしたり、一緒に食べることが、ふたりだけのブームとなっていたのだ。


おみが買ってきたグミを食べながら、塩キャラメル味のグミなんて聞いたことないけれど、いつか食べてみたいな、と考えるぐみなのであった。

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