第20話 記者会見2


六本木の防衛省A棟11階第1省議室で、

メディアを入れての記者会見が行われようとしていた。


前回と違うのは灰色の髪のイケメン宇宙人モールさんの横に、

緑の髪の美少女イシサルがいる事だ


司会の女性が進行を始める。

「ただいまより、今回、無事帰還されました

モーレイナス氏とイシサル氏の会見を執り行います。


各メディアの質問は会見の後に時間を取っていますので、

その時にお願いします」


 モールさんが席を立って

「日本の皆さん、お騒がせして申し訳ありません。

 輸送艦ユーフレナルと私モール、乗員イシサル無事です。


予定では、単発式の転移ユニットの並列使用で隕石のみ転移させるはずでしたが、

隕石内に大きな空洞でも有ったのか、予想質量よりも軽かった為に

ユーフレナルごと転移に巻き込まれてしまいました。


私も船も無事だったのですが、転移された位置が想像以上に遠方だった為、

地球まで3ヶ月も掛かってしまいました

聞いたところによると、かなりご心配頂いたようで申し訳ありませんでした。」


 頭をさげたモールさんに向かって

パシャ、パシャ、パシャとシャッターが焚かれる。


「それでは、モーレイナス氏への質問に移りたいと思います。

質問のある記者の方は挙手の上でメディア名と氏名をお願いします」


一斉に手が上げられる。


「モールさん、日本ニューズ 武田です、この度は無事帰還おめでとうございます」

「はい、ありがとうございます」


「早速で申し訳無いのですが、お隣の女性は奥さまですか?」

 イサシルがすかさず答える

「はい、そうです・・」


「いいえ、違います。ユーフレナルの乗員でイシサルです」

「はい、はじめまして。ユーフレナル乗員のイシサルですわ」


「ユーフレナルはモールさんの個人所有ですよね、

他に乗員の方は何人いらっしゃるのですか?」

「いえ、他にはおりませんよ」


「では、あの大きな船はお二人で運航出来るのですか?」

「いえ、私と中央人格、こちらで言うAIで運航しています」


「そうなのですね、あれだけ大きい船ですので、

もっと大勢の乗員がいるものと思っていました」

「連邦の場合だと旅客船以外では人が乗っている船の方が珍しいですね」


「モールさん、トーキョーテラネット 岸川です、

今回、想定外の転移によって移動され地球まで3ヶ月というと

どの辺りまで転移されたのでしょうか?」


「転移先で何か現在位置の特定出来る目標を探したんですが、

周囲に星すら無くて、やっと見つけたのはコレでした」


 モールさんが空中にスクリーンを出す。

スクリーンに映っていたのは「星雲?」


「どうやら銀河系の外に飛ばされたらしく、

きれいに我々の住む銀河系の姿が見えてました」


 パシャ、パシャ、パシャ


「よく帰って来られましたね。これって10万光年どころじゃ無いですよね?」

「はい、大体120万光年でした」


「120万光年を3ヶ月で移動できたんですか?」

「星間物質が無い分、技術的には難易度は低いですよ」


「モールさん、TOKIO日報 寺本です、

JAXAではユーフレナルのダメージについて心配する声が多かったのですが

実際にユーフレナルは、今後運航するのに問題は無いのでしょうか?」


「船体のダメージはそれほど問題無いのですが、

 連邦までの転移装置のエネルギーと転移の為の触媒物質が足りません。


 おそらく別の星系に移動してエネルギーに変換可能な星間物質の採取と

 触媒物質の採掘と精製をすることになると思います」


「この太陽系では星間物質と触媒物質は存在しないのですか?」 


「いえ、皆さんの星系で勝手に摂取や採掘は出来ないですよ」



「モールさん、東日本中央新聞 北加賀です、

今回、隕石に対してあなたの船を衝突させて破壊する話が出ていた事を

ご存じですか?」


「はい、こちらでもシミュレートしましたが隕石の軌道は変わりませんでした」


「え? モールさんもシミュレートされたんですか?」


「はい、隕石の軌道を変えるのに、船の質量でどれだけの速度が必要か計算したのですが、この星系内に船を置いた状況では不可能でした」


「失礼ですが、本当に不可能だったのですか? 」


「はい、出せる最大速度で隕石に衝突させた場合、

隕石と船の破片が地上に降り注いで、地上での生存率が

隕石のみ被害による生存率50%から生存率20%と、

よりも酷い状況が予測されました。」


「もしも、それで隕石の軌道が変わるならやってましたか?」


ざわざわと記者たちの

「もしもの話になんの意味がある?」「あいつをつまみだせ」と声が聞こえる


 モールさんも考えていたけど

「前にも、同じような事をやった事があるので、

 今回もおそらくやってたと思います。

 その時は船を失う事になりますので、もし生き残っていたら、

 地球でお世話になる事になりそうですね」


「・・・前にもやったことがあるんですか?」


そこで、イシサルさんが手をあげた

「モール様は、10年前に私の故郷でマイクロブラックホールに

船をぶつけて軌道を変えた事がありますのよ」


「いや、あの時は星系の外に居たからね。

加速する時間と距離があったから、ぶつけられれば確実に軌道を変えられたんだよ」


「でも、あの時も行方不明になって国葬の最中に発見されましたよね? 」


「あの時は、お手数をおかけしました」


「あの時、あなたは惑星クラミル120億の人間を救っているんですよ、

今回だってそうです。

これから行く場所でも同じように助けに向かおうとするのはわかっています。

ですから、これからは私にも手伝わせなさい」


「イサシル。あの時もそうだったけど、惑星を救おうとか、多くの人を救おうとか

 私はそんな事を考えた事は無いよ。


 君からのメッセージを見て助けたくなった。


 だから、少し頑張ってみた。ただそれだけだよ」


「モールさん、ジャパン・サテライト・オンライン 鹿島です。


今のは地球ではイサシルさんからの、かなり熱烈なプロポーズにあたると思います。


それに答えた、あなたの言葉は、これ以上の言葉を探すのが難しいくらい完璧な

OKの返事に聞こえるのですが違うのでしょうか?」


 会場内に賛同の拍手が起こった。


モールさんは困った顔で

「いえ、彼女は当時未成年ですから、当然ですが保護される立場にあります。


今も成人したばかりの女性にそう言われましても、娘の様に考えていましたので

その様には、考えられません」


イサシルさんは不敵な笑みを浮かべながら。

「私、地球の女性に素晴らしい言葉を教えて頂きました【既成事実】

と言って本人が認めなくても周囲が納得している状態の事だそうですわ」


イシサルさんの言葉に、会場で盛大な拍手が起きた。






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