閑話 世界は踊る

 


  総理官邸


 【東雲内閣総理大臣】


「総理、現在の所、各地の天文台からは、

 ユーフレナルの行方に関する情報は入っておりません」


「ああ、世界中の天文台からも情報は集まってきてるんだろ」


「まあ、入って来てますね」


「全人類の恩人だからな、それ位はさせてもらわないとな」


「アマチュア天文学者も捜索に協力してくれているようです」


 経団連の会長があくまで噂話だって言ってた、あの話を思い出した。

「そういえば・・・変な話も聞いたな」


「へっ 変な話ですか? どんな話ですか?」

 補佐官が口ごもる、こいつがトチルのを久々に見たな。


「その顔は、お前、知ってて黙ってたな」


「なんですか、知りませんよ。何の事だかわかりません」


「海外の天文台に捜索を辞めるよに圧力が掛かってるんだって?」


 補佐官がため息をつきながら

「圧力が掛かっているのは事実ですが、日本が何か出来る話じゃないですよ」


「そもそも、なんでこんな事に圧力が掛かるんだ?」


 補佐官が、心底嫌そうな顔でため息をつく。

「総理、身も蓋も無い話なんで聞かない方がいいですよ」


「身も蓋も無いって、聖川のじいさんが何かやらかしたか」


「鋭いですね、総理。惜しいです」


「馬鹿野郎、冗談だ。いくらなんでもそれは無いだろう」


「それが、当たらずとも遠からずでして」


「なんだと、どういう事だ」


「いえ、隕石騒ぎの時にテレビで聖川代表が解説してたでしょう」


「ああ、やってたな。それがどうかしたのか?」


「あの時、転移ユニット6基使いましたよね」


「確か、そうだったかな? 」


「聖川代表が解説でこう言ったんですよ

価格らしいですね】と」


「すまんが、意味がわからん。それと天文台への圧力がどう繋がるんだ?」


 補佐官の奴、居住まいを正して俺に一礼しやがった。


「総理がそういう方で国民としては安心しました」


 常日頃から傍若無人なこいつが気持ち悪いな、どういうつもりだ?


 彼らが無事じゃない事を期待しているグループがあるということか?


 どうせ、すぐに帰る彼らが無事じゃない事を期待する理由はなんだ?


 転移ユニットや小型宇宙船の値段なんて、どうせ手に入らないんだから

 どうでもいい情報じゃないか・・・・・・・あれ?


「すまん、今すごくが思い浮かんだよ」


「そうですよ、圧力をかけた理由は・・・ユーフレナルが無事に帰ってきて、今回の費用を請求されたらどうしよう・・・です」


俺は、あまりの事に頭を抱えている。

「いや、さすがにそれだけは無いだろう」


「ユーフレナルが帰還した場合、最低限小型宇宙船6隻分の請求が発生するはずだ

大型の宇宙船が破損していたり、経費を請求させたらどうしよう

という考えらしいですね」


「いや、捜索に圧力を掛けても、ユーフレナル側の印象が悪くなるだけだと思うが」


「世界の天文台に圧力を掛けている時点でかが絞られてくるんですが」


「よりによって、大国が2国かよ」


「万が一請求された時に、国民からの圧力で払わざるを得なくなると考えているみたいですね。

 どちらの国も英雄大好きな国民性です、国民が動けば押し切られてしまうでしょう」


「いや、見も知らずの10人拾って10万光年送り届けて

礼も受け取らずに帰ろうとしてる宇宙人だぞ

別に、日本側も止めたりして無かったよな」


「情報は止めて無かったんですが、欺瞞情報うそと取られているみたいでして

 実は政府の裏金で一人当たり10億は支払ったんだという情報デマも流れてました」


内閣総理大臣も聞いた事が無いんだが? 何か支払ったか?」


「特別予算を計上してたんですが、ほとんど何も使ってませんね」


「何か要求は無かったのか、そういえば全く報告が無いのも不自然だな」


 補佐官がニヤリと笑い。

「宇宙船の中で果物を育てて、その果物で果実酒を作ってるらしいですよ

地球産の果物を使った自作用のレシピ聞かれたので、

レシピと一緒に実家で作った梅酒、渡しておきました」


「何でお前は宇宙人と、ご近所付き合いをしてるんだ」


「流石に、未成年とお酒の話は出来ないみたいで、お礼にとを頂きました」


「聞いてないぞ、その話」


「もちろん報告してませんから」


「銀河系の反対側の酒か、ちょっと試飲してみよう味見させろ


「総理、確かお医者様からお酒は控えるように言われてましたね

味の感想くらいは教えて差し上げます」


「いいじゃないか、こんなの一生口に入らんぞ。出すところに出せば、

 それこそ天文学的な値段が付くんじゃないか? 」


「さすがに、頂き物を転売するのは気が引けますね、じっくり味合わせて頂きましょう」


「しかし、モールさん酒が飲めたんだな」


「はい、あまり強くはないらしいです」


「モールさんと飲まなかったのか?」


「あの子達が普通の生活に戻れたのを確認するまでは飲まないつもりみたいですね」


「真面目だな、モールさん」


「ですから、今度、無事に帰ってきたら祝杯をあげるんですよ」


「それは楽しみだな、酒は何にする?」


「祝杯の定番といえばシャンパンでしょう?

 こればかりは高重力の地球でないと体験できませんから」


「そいつはいいな、医者に内緒で俺も呼んでくれ」


「私は首相補佐官として総理の健康を管理する義務があるのですが」


たちばな、祝いの席に野暮は無しにしようぜ」


「しょうがないですね、特別に仲間に混ぜてあげましょう総理」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る