第4章 地球の危機編

第17話 地球の危機

  【JAXA聖川代表】


 先ほど、NASAから巨大隕石の軌道と地球の公転軌道が接近するという報告があった。


まあ、頻繁ではないが、ある話だ。


ただ今回は宇宙人モールさんにも聞いてみて欲しいと追記が加えられていた。


「モールさん、少しいいかな?」


「どうぞ」


「今、アメリカのNASAから地球に接近する隕石の情報があってね、

おそらく大丈夫だとは思うんだが君にも確認して欲しいと要望があったんだよ」


「そうですか、ユー、確認してみてくれ」


『了解』


『モール大変です、これ当たりますよ。すぐに警告をだしてください。

 地球時間で227時間後に南米大陸に衝突します。

 全長5km程の隕石ですね、なんとかして軌道を変える必要があります』


「わかった、ありがとう」すぐに世界中で方策を考えないと。


 【モール】


 聖川さんが部屋を出てから。


 「なあ、ユー」


 『なんですか? モール』


 「ここの技術レベルで隕石の軌道を変えられるかな?」


 『わかりませんが、我々も軌道変更なんて無理ですよ』


 「いや、前みたいに」


 『前は星系に向かって移動していました。


 必要な速度まで加速するのに、距離も時間もまったく足りません。


 ぶつけたところで隕石の軌道は変わらずに、ユーフレナルの破片が追加されて

 地球が死の星になりますよ。


 それに船を無くして、小型宇宙船で漂流しても。


 ここの技術レベルでは今度は救助してもらえませんよ』


 「ほら、小型を2機追加したし・・・」


『たった2機で、探してもらっても見つかりません。

 探すって、あの子達に我々を探させるつもりですか?』

 

「それは危険だな」



【朝倉 水穂】


9日後、南米大陸に全長5kmの巨大隕石が落下する 

そのニュースと一緒にその場合の推定被害が算出された。


絶望的な数字だった

「南米大陸は壊滅、人類の半分が死亡する」


さすがにモールさんでも軌道を変えるのは無理のようだ。


前は星系に向かって航行していたけど、今度は火星付近に停止している。


どんなに加速しても隕石に影響を出すほどの物にはならないらしい


ユーフレナルを隕石にぶつけた場合、

船の破片が地表に落ちて逆に死者が増える結果が出たのだそうだ。


「みんな、死んじゃうのかな」涙が出てきた

 きっと、イシサルさんの星もこんな絶望の中だったんだろうな

 その時にモールさんのパックが届いたんだね。


「水穂、モール様が何かするつもりみたいよ」

とイシサルさんから連絡があったのは、そんな時だった。



【朝倉 水穂】


防衛省にみんなが集まっている。

島本さんは、よく似た車いすの女の子を押してやって来た。


「みんな。隕石相手に、ちょっとやってみたい事があるんだけど良いかな?」

モールさんの声が聞こえた。


「単発式の転移ユニットを並列使用ですか?」西城さんが驚いた顔をしている


「あれって、使い捨ての大質量用ですよね。並列使用なんて出来るんですか?」


「理論上出来るけど、目標設定は無理だな」とモールさん


「隕石が通る瞬間に起動させるんですか? 相対速度が大きすぎませんか?」

 と桂川さん


「だから、隕石と相対速度ゼロで設置する」


「あの、その子は?」桜元さんが車いすの女の子を見て聞く


「ああ、島本さんの妹なんだけど、万が一船の機能が失われたら治療できないので、

先に治療をやっとこうかと思ってね」


ちょっと、まって・・・

「そんなに危険なんですか?」皆が助かるのが、うれしいのに、声が強張る


「まあ、失敗したらユーフレナルを出来るだけ地球から離さないといけないからね」


「失敗って、地球が危ないんじゃあ?」どういう事ですか?


「いや、隕石の転移はおそらく大丈夫。

 転移ユニットが起動したときユーフレナルにかかる負荷が問題なんだ」


「モールさん、私達は何をすれば良いんですの?」生徒会長、泣かないでください。


「はい、万が一の時は我々の捜索をお願いします。

どちらにしろユーフレナルに行かないといけませんし

皆さんには小型宇宙船を3機とも地球に持って来ておいて欲しいんです」


皆で小型宇宙船に乗ってユーフレナルに向かう

ユーフレナルにはイシサルさんが待っていた。


「イシサル、準備ありがとうね。じゃあ礼菜ちゃん、治療を始めようか?

島本さん付いてあげてね」


「モールさん、地球に小型宇宙船を持って行く時、地球人が逃げようと宇宙船に

押し寄せるかもしれない。ロックは厳重に頼むよ」


 「桂川さんありがとう。そうか、それなら見えない様に隠したほうが良いね」


 「モール様、今回はユーフレナルから降りるつもりはありませんよ」


 「イシサル、君には待っていて欲しいんだが?」


 「お断りです」


 「モールさん、イシサルさん、少しきいて欲しい話があるんですが、

 いいですか?」

  私は決心した


 「どうしたの? 朝倉さん・・・・」


 「今回、ユーフレナルも危険なんですね?」

 「まあ、すこしね」

 「無事に帰還する可能性なんて半分も無いですわね」


 「イシサル・・・」

  モーラさんが『なんで話すの』という顔でイサシルさんを見ている


 「モールさん」

 「なにかな?」


 「無事に帰ってきたら、私をユーフレナルに乗せて帰ってもらえますか?」

 「え~と、それは地球を離れると言う事?」

 「はい」

 「いや、せっかく家族と会えたのに」

 「両親からは、お前が決めたなら応援すると言ってもらってます」

 「でもね」

 「だから、お願いです。無事に帰ってきてください」

  私は初めてモールさんに抱き着いた。


  モールさんは、いつもの優しい口調で

 「わかった、でもごめんね、帰り時間は保証出来ない、

  ちょっと遅刻するかも知れないけど、

  必ず帰って来るから待っていて貰えるかな? 」


 「はい、ずっと待ってます」

  モールさんは、私が泣き止むまでずっと傍にいてくれました。


  しばらくすると島本さんに推されて、車いすの礼菜ちゃんが現れた。

  両脚を樹脂で固めている。


3機の小型宇宙船は、桂川さん、京塚さん、西城さんがそれぞれの操縦で

ユーフレナルから発進した。


ユーフレナルがどんどん小さくなっていく


 「モールさん」


  ユーフレナルでも、モールが離れていく小型宇宙船を

  ずっと目で追いかけていた。


 『モール、そろそろ時間ですよ』

 「よし、ユー、イシサル 作戦を始めようか」

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