閑話 桂川 兄妹

 【桂川(妹)】


 「モールさん、ごめん、実は私の兄、JAXA勤務なんだけど、

 一度、ユーフレナルに乗せてもらえないか聞いてくれって言われててね」


 「ん、良いよ、いつにする?」


 「・・・やっぱりか、ありがとう、すぐ確認するね」



 JAXA筑波宇宙センター


 【桂川(兄)】


 「センター長、すみません。一身上の都合で休暇をお願いします」


 「桂川かつらがわ、この忙しい時に休暇申請とは、いい度胸だな」


 「はい、はよく褒められます」


 「誰も褒めてねえ、しかし、半分ここに住んでる様な、お前が休暇申請とは珍しいな、もしかして見合いか? 」


 「いえ、見合いなら、JAXAこっちを優先します」


 「馬鹿言うな、そんなだからJAXA職員の仕事環境が悪いと

 マスコミに叩かれるんだ」


 「すみませんが、今回だけは何があっても休ませて頂きます」


 「わかった、俺も鬼じゃない正直に理由を言ってみろ」


 「妹ので、ユーフレナル宇宙船に乗せてもらえる事になったので、

  ちょっと行ってきます」


  『『 ガシッ‼ 』』


 「プ、プロジェクトマネージャー? 主任? どうして」


 「センター長、どうしますか?」


 「尋問、いや、とりあえず事情聴取だな」


 「センター長、どこまでやって良いですか?」



 「JAXAここは、一応国の機関だから、暴力はダメだ。

  でもJAXAここの職員には医者も科学者もいるから薬品は使える、

  桂川、素直に話した方が良いと思うぞ」


 「「桂川君、ちょっとお話しようか?」」


に連れていけ・・・」




  JAXA筑波宇宙センター内某所


  【桂川(兄)】


  俺は今、何故か拘束されプロジェクトマネージャーの尋問を受けている。


 「桂川君、君の妹さんが例の事件の被害者で

  今回モーレイナス氏と無事帰還したのは知っている。


  それで・・・君がユーフレナルに乗る為に何を対価として差し出した?


  君が自分の仕事以外の情報に接触していない事は既に調査済みだ。


  あの宇宙人はJAXA我々に何を求めている?


  NASA関連の機密情報か? ISSの情報か? 何かの実験データか?

  

  我々には未知の資源か? 


  それとも我々の知る既存の鉱物に何か別の利用法でもあるのか?」


  主任が取って付けたような猫撫で声で話しかけてくる。


 「まあまあ、プロジェクトマネージャー、まずは聞いてみようではないですか。

  どうやって、乗艦を依頼したのかを」


  俺は正直に話した。

 「妹に、ユーフレナルに乗ってみたいのでモーレイナス氏に頼んでくれと

  依頼しました」


 「それで、妹さんは何と? 」


 「たぶん『良いよ』って言われるけど、いいのか・・・と」


 「そうか、いい妹さんだな、それで妹さんからは?」


  俺は正直に話してしまった・・・・

 「いいえ、モーレイナス氏から、直接、【いいですよ、いつにします?】と」


  部屋の中が重苦しい静寂に包まれた、その静寂を破る様に


 『何人かね? 』


  スピーカーからセンター長の声が聞こえる。


  何人? ・・・いったい、何のことだ?


 『JAXAここにはいるんだが・・・? 』


 そういう事か・・・・

 「・・・確認してもよろしいでしょうか?」


 『ようやく理解してくれたようだね』


 「妹よ、不甲斐ない兄でごめんな」


 その後、JAXA職員限定で3機の小型宇宙船に、それぞれ20人が搭乗して

ユーフレナルを案内するツアーが合計3回行われた。


このツアー参加者に入る為にJAXA内で熾烈な争いが行われた。

しかし、その時に、どんな事があったのかはJAXAの極秘ファイルのみ残され

  外部の人間が知ることは無かった。


ツアーの案内は全てユーが担当したが、

実際に案内したユーからは

『モール、次があるなら、もう少し減らしてください』

といわれる程だったらしい。




 【桂川(妹)】


  すべてのツアーが終わってから、無理を頼んだ私は、お礼を言うために

  モールさんの部屋を訪れていた。


 「モールさん、私の兄のせいでゴメンね」


 「いいよ、楽しかったし」

  モールさんは笑いながら許してくれた。

  

 「実はね、折り入って、もう一つお願いがあるんだ」


 「いいよ、今度は誰を乗せるんだい? 」


 「私をね、ユーフレナルに乗せてほしいんだ」


  やっと言えた、兄さん感謝するよ。

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