第16話 家族

  彼女達の家族が防衛省に集められた。


  家族ごとに部屋が用意されて、対面が行われた。


 【島本陽菜】


  お父さんとお母さんと礼菜ちゃんが来ている。


  大丈夫なのに、安心したら涙が出てきた。


  みんなに抱き着いて、ひとしきり泣いたらやっと落ち着いた。


 「陽菜、大変だったけど。学校には戻るの?」とお母さん


 「どうなんだろ?1年遅れても行こうとは思っているけど」


 「陽菜、モールさんは若い男性にみえるが、その・・大丈夫なのか?」


 「あなた、そんな事を」


  モールさん、ゴメンね


 「え~と、お父さん、モールさんて若く見えるから仕方無いんだけど。

  80歳って地球の感覚で言うと、お父さんと同じくらいだよ」


 「そうなのか?」


 「それで、私たちは8歳くらいに見えてるみたい」


 「それじゃあ?」


 「うん、困っている小学生の集団を保護して連れてきた感覚だね、

  モールさん、保父ほふさんというか、良い人過ぎてつらいレベルだよ」


 「そうなのか、すまなかったな」


 「それは、いいんだけど礼菜ちゃん」


 「なあに、お姉ちゃん」


 「礼菜ちゃんの脚治せるかもしれない」

 


【一条寺 紗羅】


  お父様とお母様、それにお兄様お姉さまも来てくださっています。


 「紗羅、ほんとうに無事で良かった」


  ああ、お父様ったら、そんなに泣かれたら

  私の決意表明がし難いでは無いですか。


 「お父様、お母様、お兄様、お姉さま、聞いてください。

  私、運命の人を見つけました。

  私はモールさんと一緒に連邦に行きたいと考えております」


  みんな、驚いてますわね、

  お父様、お母様、私出遅れるつもりはありませんよ。



 【桂川 真琴】


  父さんと母さん、じいちゃん、それに兄さんが来てくれたのか。


 「父さん、母さん、じいちゃん、兄さん・・・ただいま」


 「ああ、よく無事で帰ったな」


 「ほんとに、よく無事で」


 「ああ、よかった」


 「まあ、お前のことだから大丈夫だとは思ってたけどな」


 「まあね、確かに大丈夫だったよ」


 「しかし、宇宙かうらやましいな」兄さんがぼやく


 「ああ、日常生活が0.5Gで 無重力や高重力体験もすぐに出来る。


  どの服にも無重力対応の簡易移動装置が付いてるのをみて、

  これが標準なんだと思わず笑ってしまったよ。


  しかも低負荷による骨や筋肉への影響も気にしないでいいらしい」


 「じゃあ、筋力の低下や骨が脆くなったりリハビリとかは?」


 「無い、どうやら眠っている間に問題が出ないように処置されているらしい、

  けっきょく地球の重力での力加減を思い出すのに数日かけただけだった」


 「なんだ、その手軽さは。こっちではどんなに頑張っても長期の宇宙生活の後は

  厳しいリハビリが待っているんだぞ」


 「モーラさんなんて、完全に宇宙生活者だからね、

  今みたいに惑星上に居るのが希じゃないかな?」


 「頼んだら、乗せてくれないかな、宇宙船」


 「いや、たぶん『良いよ』って言われるけど、いいのか兄さん」


  うちの兄さんは、実はJAXA勤務だ


 「乗せて貰えるならJAXA辞めてもいいかもしれない・・・」


 「せっかく入れたんだから、がんばれよ」


 「でも、宇宙だぞ、宇宙。

『地球の衛星軌道に宇宙船置くと邪魔でしょうから火星に置いておきます』的な

  感覚で移動してるのを見ると、衛星軌道に行くのに苦労している身としてはな」


 「そういう意味では、すごく楽しかった。

  膨大な知識も技術も全部オープンなんだ、

 人口重力発生装置や転移エンジンの設計図も自由に見れたし

  パックっていう超光速情報送受信機の基礎理論もあったよ」


 「うわ~超科学の産物がゴロゴロ転がってるじゃないか」


 「それに向こうで教育を受けて働けば、時間はかかるけど

 自分の宇宙船も手に入りそうなんだ」


 「宇宙船て小形のか?」


 「いや、星系間移動の出来るやつ」


 「ちょっと、俺、今からJAXA辞めてくる」


 「兄さん、待って~」


 「止めるな、お前だけそんなうらやましい事、俺も宇宙に行くんだ~」


 「父さん、母さん、じいちゃん、だから許してもらえるなら、

  私は宇宙に行きたい」




 【桜元 佳乃】


  お父様、お母様、妹の琴乃ちゃんが来てくれましたわ


 「お父様、お母様、琴乃ちゃん、ご心配をおかけしました。ただいま戻りました」


  ひとしきり、家族の再会を喜んだ後

 「ところで、お父様。私が行方不明になった事で

  高島浦たかしまうら家とのご縁談はどうなったのですか?」

  と気になっていたことを聞いてみる。


 「ああ、今は琴乃を婚約者として話を進めているんだ」

  琴乃ちゃんが、私に抱き着いて何も言わずに泣き出した


 「あの、お父様、お母様、実は別に融資して下さる先がありまして」


 「いや、もしそうならありがたいが。

  しかし返済の目途も立たないのに御受けできないよ」


  私は心から微笑みながら。

 「そうですわね、返済をしないと。

  大丈夫です、私が責任を持ってご返済いたしますわ」

  

  モールさん、私が一生をかけて返済させていただきますね。



【朝倉 水穂】


 お父さん、お母さん 来てくれてありがとう。


「お父さん、お母さん、今帰りました。


 でもねちょっとお願いがあるんだ

 今度のことは、あり得ないくらい運が良かったんだ。


 私たちの事を助けてくれた人が親身になって、ここまで送ってくれた。


 その人に、だいぶ無理をさせてしまってるんだ。


 せっかく送ってもらったけど、私、その人に、この恩を返したい。


 ごめんね、せっかく帰って来たのに。」


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