第15話 企業は踊る

 総理官邸


【東雲内閣総理大臣】


「ほらみろ、何の問題も無かったじゃないか」


「総理、あれを問題無かったというのは無理があると思いますが」


「宇宙人に記者会見してもらって、国民に安心してもらったんだぞ十分じゃないか」


「総理、現実逃避はやめてください。今も各省への問い合わせが殺到しています」


「いや、問い合わせされてもな。モールさん嘘は言って無いんだろ?」


「はい、翻訳ミスの可能性もありましたから、念の為モールさんに確認しましたが事実です。」


「200歳の健康寿命に30歳迄の保障、市民権取得が安易で、しかも難民はいないか」


「しかも、民間人が星間航行可能な宇宙船をできる世界です」


「何と言うか、働き甲斐のある世界だよな」


「いえ、モールさんに聞きましたが。

連邦では人間が働かなくても生活に支障がないので

趣味に生きる人がほとんどなんだそうです。

モールさんは外で働く極少数派になるそうですよ」


「それは、地球人から見たらもったいないな」


「総理、そろそろ現実に戻って頂いていいですか?」


「わかったよ、で? どこがうるさいんだ?」


「世界の重工業メーカーに加えて、国内外の医薬品メーカーですね」


「宇宙船と、健康寿命か?」


「医療知識と技術もですね?」


「あの人、輸送艦乗りだろ、医者じゃないよな?」


「船に搭載された医療システムでおおよそ傷病は治療できるそうです」


「それは、とんでもないな」


「船の転移システムや、超光速の通信システムも原理や構造が情報公開されているらしくて・・・・」


「ちょっとまて、どこからそんな話が出てくるんだ? 」


「どうやら、JAXAがやらかしてくれたようです」


「聖川のじいさん、今度は何をやったんだ?」


「今回は聖川代表では無いですよ、JAXA職員の家族に今回保護された女性の1人がいたらしく、その伝手を使ってモールさんに個人的に宇宙船内部観光を依頼したらしいのですが、

それが上司にばれて、結果JAXAの観光ツアーになったようです」


「そいつは、モールさん迷惑だったろうな」


「それが結果的には100人を超える、大規模なツアーになったらしいですね。

ツアー中、船内に使われている科学技術の解説もあったんですが

こちらの質問にも全部答えてくれたらしくて」


「質問してるのはJAXAの職員だよな? 全部って機密情報は無いのか?」


「聖川代表が興奮した様子で話してくれました。全て公開情報だそうです」


「あのじいさんも行ったのか」


「JAXA代表としてツアーメンバーにねじ込んだそうです」


「その話を聞いて、医薬品メーカーも公開情報をか」


「はい、宇宙船よりはハードルが低いと考えたのかもしれませんが」


「違ったのかい?」


「はい、JAXAには医師も薬学の専門家もいますから、

当然ですが、その方面の質問も出ました。


ただ、医学と薬学については人体に影響がありますから

変な使い方がされないように

情報自体が完全にブロックがされてました」


「なるほど、そうきたか」


「はい、有資格者以外閲覧不可能で、モールさんでも解除は出来ないそうです」


「これは逆に納得だな、中途半端な知識じゃ危ないか」


「それに、寿命については別の問題が出てきたらしくて」


「今度は何だ?」


「なんでも、地球の重力は強すぎて、それが原因で寿命を短くしているそうです」


「地球の重力って強いのか?」


「連邦の標準重力の倍だそうです、連邦の居住惑星には存在しない強さだそうです」


「つまり、地球人が長寿になるには宇宙に出る必要があるわけか? 」


「それだけでは無いでしょうが、一因なのは間違いないそうです」


「来期の予算でJAXAの予算を上げろという声が増えそうだな」


「今頃、聖川代表が計画案を練っているんじゃないですか」


「与党だけでなく野党からもありそうですね」


「頭が痛いな、そんな予算どこから出すんだよ」


「総理、おそらく世界中の国家の代表が今、同じことを考えてますよ」

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