第12話 行方不明者の帰還

 羽田空港


「え~現在、羽田空港から中継です。

先日、国営放送の電波ジャックをしたと見られる宇宙人は、

火星軌道にあります全長8kmの葉巻型UFOに搭乗していると思われましたが、

UFOに動きが無いまま、現在11:50です、

政府の指定した時間まであと10分を残すあまりです。

天文台によると葉巻型UFOは今も火星の衛星軌道から移動している様子は無いそうです。

政府関係者は、今回の電波ジャックについてハッカーによるイタズラの線も

視野にいれて捜査を開始する予定と言う事です。・・・え? 小形の宇宙船? 

ホントに来た? 移動させたカメラすぐ戻せ、急げ」


「ご覧ください、上空から小さな白い流線形の物体が降りてきて、今着陸しました。

 大きさは駐機されている旅客機の半分程でしょうか、おそらく全長30m程と思われます。

 着陸と表現したしたが、近くのカメラからの映像を見ますと

 宇宙船は僅かに滑走路の路面から浮き上がった状態で停止しているようです」


「今、宇宙船のハッチが開きました。

 中からは、男性が現れました、地球人と変わりないように見えます。

 灰色の髪をした男性が宇宙船のハッチから現れました。

 これが地球人類が初めて会う地球外生命体なのでしょうか?

 あの男性が国営放送の電波ジャックを行ったモーレイナス氏でしょうか?

 周囲に向けて笑顔でに手を振っています。」


「 その後ろから別の人影が現れました。

  行方不明だった教員の方でしょうか?

  シートの様な物で全身を覆っています、

  そのシルエットから、おそらく女性とおもわれます 」


「 全身を覆っている方は10名、行方不明者と情報とも一致しています。

  なお、この放送では、行方不明者のプライバシー及び安全保護の観点から

  実名の報道は控えさせて頂いております。

  日本側の出迎えには、下川田外務大臣が来ています。

  今、男性と握手しました、報道陣のフラッシュが焚かれています。

  今入りました情報に寄りますと、この男性はやはりモーレイナス氏のようです」


「 たった今、政府の公式発表がありました。

 これから、モーレイナス氏と行方不明者10人の方は政府の準備したバスに乗って

 防衛省の施設で会談をする予定だということです 」



 市ヶ谷いちがや 防衛省施設内 会議室


【朝倉 水穂】 


会議室の大きなテーブルの一方には、モールさんとフードを被った10人私達が。

もう一方には下川田外務大臣と、池川防衛大臣、JAXAの聖川代表が座っていて、周囲に護衛の自衛官が複数立っている。


  モールさんが

「下川田外務大臣、彼女たちの被っているシートを外してもよろしいですか?」

と聞くと


 外務大臣は緊張した面持ちで、池川防衛大臣と頷きあった。

「取って頂いてけっこうです」


「みんな、もう取っていいですよ」

全員がシートの解除ボタンを押した。

先生のスーツ以外はみんな制服だ、外務大臣もあきらかにほっとした顔をしている。


「では、皆さんを見つけた状況から報告させて頂きますね」

とモールさんが話し始めた。


モールさんの話を始めは黙って聞いていた2人だったが、話が進むにつれ

外務大臣と防衛大臣が頭を抱えだした。


外務大臣が息を整えて

「モーレイナスさん、では今回の件は地球上で自然現象によって他の惑星に飛ばされた日本国民を職務中のあなたが発見、救助と保護をして頂いて。

この地球の位置を調査特定して、ここまで送ってきてくださった訳ですね」


 「はい、そうなります」


「あなた自身もですが、あなたが所属する国家や団体も、

この星に対する侵略の意図等は無いという事で間違いないですか?」

と防衛大臣が念を押す。


 「はい、私はもちろん、連邦もこの惑星を侵略する事はありません」


 「断言できる根拠は何ですか?」


 「連邦の影響範囲から、この惑星はあまりにも離れているので

事実上実行不可能だと思いますよ」


 「すまない、JAXAの代表をしている聖川だ、彼女達を送ってくるのに1年掛かる距離とは、いったい何処から送って来てくれたんだ?」


 「はい、連邦の影響範囲はこの星系からみると丁度、銀河中心核の反対側になります。直線距離で5万光年程でしょうか?」


 「あの宇宙船は1年で5万光年も移動できるのですか?」


 「いえ、銀河中心核を迂回する必要があるので、

今回の航路は移動距離でいうと10万光年程になりました」


  下川田外務大臣が硬い声で

「モーレイナスさん、我が日本の国民を救助保護頂いてありがとうございました。

 その上、その国民をこの国まで送ってまでいただきました。

 単刀直入に言うとモーレイナスさんは対価としてわが国に何を求めますか?

 あなたの要求はなんでしょうか?」


「要求ですか? この子達が無事、日常生活に戻れたのを確認したら帰るつもりです。 ただ、今回、行方不明になった事で、この子達の生活に不都合が出る様なら

 ご家族や本人と相談して連邦に連れて帰ろうと思います」


「対価は要求しないという事ですか?」


  モーレイナスさんは、苦笑いをしている。

これは佐倉先生との事を思い出してるな。


「はい、彼女達にも日本国にも一切請求はしません」


日本側は完全に毒気を抜かれている。


「すみませんが彼女たちの入国手続きをお願いします。

それと、彼女達自身に家族と連絡を取ってもらっても大丈夫でしょうか?」


「彼女達がご家族に連絡をとる分には問題ありません。

 ただ、彼女達の家族には本当に行方不明になった本人なのか確認できてから

 連絡する予定でしたので、政府からはまだ発見の連絡は行っていません。

 それに、メディア各社には行方不明者の名前の公表を止めておりますので、

 ご家族以外には連絡は待って頂くようにお願いします。」


「わかりました、みんないいかな?」

全員がそれに頷く。


「あと、すみませんが日本国内に入るのに、日本側でも彼女達の検疫と健康診断を

行いたいのですが、よろしいですか?」


「はい、船の中でも定期健診は行っていますが、心配なのは分かりますのでどうぞ」


 下川田外務大臣が

「この後、モールさんと彼女達はそれぞれ個室で待機して頂きます。

 彼女達にはこれから各部屋で検疫と健康診断を受けていただきます。

 今後、政府からも彼女達の家族に連絡を取ってご家族に迎えを出す予定です。

部屋の中では自由にしていただいて結構ですし必要な物があれば声を掛けてください」


ここで、モーラさんが気を使って、こんな提案をした。

「部屋で待機は問題ありませんが、羽田空港に置いた小型宇宙船は、あの場所に置いたままで大丈夫でしょうか? 必要なら別の場所に移動させますので声をかけてください」

 唖然とする外務大臣と防衛大臣。


聖川さんも驚いたようすで。

「モールさん、あの宇宙船は、ここから操作できるんですか?」


 モールさんは不思議そうに

「はい、この惑星上なら距離はあまり関係ないですね」





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