閑話 日本政府に向けてのメッセージ送付前


 火星軌道上、輸送艦ユーフレナル艦内


「それじゃあ、ユー、明日の夜8時に日本の国営放送の周波数帯を借りて

 今作った音声メッセージを送れば良いね」


『はい、この内容で問題無いと思います』


「あと、何かやっておく事は無いかな? 」


「ちょっといいかな?」富岡さん


「何かあるかな? 」


「いいえ、明日、このメッセージを発信した場合、間違いなく全国ニュースには

なると思うんですが。これって愉快犯の悪質なイタズラだと思われませんか?」


「でも、これ地球の技術では難しいですよ」と西城さん


「政府が大規模なイタズラと発表して、内容は無視されるかもね」と桂川さん


「しかし、政府がどう対応するかなんて分からないよ。

その場合はもう一回メッセージを送るしかないんじゃないかな」と京塚さん


「その場合、どれくらい待ってから送ります? 政府も検討する時間が必要でしょうし」と一条寺さん。


「明日のメッセージに回答期限を追加しますか?」と島本さん


「それはそれで政府に圧力をかけているみたいですわね」と桜元さん


『日本の政府トップがどう判断するかだからね』


「日本では政府トップの会議内容って公開されないの?」とモールさん


「国会中継以外見たことがないですね。おそらく非公開だと思います」


「それじゃあ、しょうがないか」



【瑞野 凛華】


「モールさん、ユーちょっといい?」


「瑞野さん、どうしたの?」


「いえ、さっきの政府トップの話なんだけど、もしかしたら分かるかもしれないと思って」


「誰か知り合いがいるの?」


「隣の家のお兄さん、公務員でね、前にどんな仕事をしてるのか聞いたら

『国会の中で偉い人の手伝いをやらされている』って言ってたの」


「どんな人かな?」


「私の、歳の離れたお兄さんみたいな人かな・・・」


「まあ、それなら聞いてみてくれるかな?

でも、もしその人の立場が悪くなるようなら、こっちの情報も出していいからね」


「はい、もしかすると、この1年で違う所に配属が変わっているかもいるかもしれないけど、秘密は守ってくれる人なので大丈夫ですよ」


 【たちばな 真一郎しんいちろう


「あ~疲れた。なんで日本は高齢者がこんなに元気なんだ。

 じいさんは朝が早いんだから、さっさと寝やがれ・・・ん、またか。

 じいさん、今度は何を言い忘れたんだ?」


スマホの表示を見て、キッチリ1分程動けなかった。

震える指でなんとか操作する


「もしもし、りんちゃんか?・・・今、どこにいるんだ」


『ごめんねしん兄さん。私は元気なので心配しないで。

 ほんとうに申し訳ないんだけど、内緒の話いいかな?』


凛ちゃんからの話を聞く、大丈夫、俺は記憶力には自信がある。

そうか、あすの夜8時だな。


「ああ、任せとけ 要は政府が対応するか無視を決め込むかが分かればいいんだろ?

 連絡はこの番号でいいのか?」



火星軌道上、輸送艦ユーフレナル艦内


「瑞野さん、どうだった?」とモールさんが心配そうに声を掛けてくれた。


「モールさん、ごめんね久しぶりに真兄さんの声聞いたら気が抜けちゃって。

大丈夫だよ、わかり次第連絡をくれるって言ってくれた」


「配属先は変わって無かったんだ」


「そうみたい、初めて聞いたけどだって」


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