第3章 地球帰還編
第11話 メッセージ
「え~日本の政府関係者に向けて放送しています。
私は輸送艦ユーフレナルの責任者でモーレイナスと申します。
実は、私、地球時間で1年程前に、ある惑星上で。
スクールバスに乗った地球の日本人の教員1人と学生9人を救助、
保護いたしました。
発見場所が地球から遠方の為、時間は掛かりましたが、
この度、無事、地球圏にお連れする事が出来ました。
地球の衛星軌道では、日本以外の国からの干渉も有り得ると考え、
本船は現在火星の衛星軌道で周回しています。
直接、保護された方の日本のご自宅にお連れしようとも考えましたが、
そちらの政府関係者への発見時の状況報告も必要かと思い至りました。
つきましては保護しました日本人の方と一緒にお伺いしたいとおもいます。
誠に申し訳ありませんが訪問時間と座標を指示いただけますでしょうか?
現在、この音声は日本の国営放送の周波数を拝借しています、
お返事もこの周波数を使っていただければありがたいです」
国会内、特別対策会議室
【東雲内閣総理大臣】
「首相これが、昨夜8時に国営放送の電波に乗せられた音声になります」
「官房長官、なぜ我々はこんな事で呼び出されているのかね?
単なる愉快犯だろう。警察の仕事では無いか?」
「単なる愉快犯なら良かったのですが、これがハワイ天文台のすばる望遠鏡で撮影した火星軌道に存在する物体の写真です」
「何だね、これは?」
「火星軌道に見つかった物体です、全長は推定で8kmです」
「見つかったって、こんな大きな物が今まで見つからなかったのかね?」
「火星のように地球に近い惑星にこれだけの大きさの物が有れば当然見つかります。
これは、間違いなく突如出現したものです」
「何かの間違いでは無いのかね? 天文台の機材の故障とか」
「これがNASAから送られてきたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の映像です」
「本物かね?」
「先ほど、アメリカ外務省から、訪問時間と座標の連絡要請と在日米軍の出動打診がありました」
「なんと」
「中国外務省からは、国営放送での発表前に時間と座標の連絡しないと
国際問題にするぞと文書が来ています」
「科学技術庁長官、君は、どう考えるね? 」
「総理、電波ジャックと簡単に言いますが、
今回、どの様な方法で電波ジャックが行われたのか不明です。」
「よくわからんが、同じ周波数で強い電波を出すだけじゃないのかね? 」
「スカイツリーから発信された国営放送の電波を消去して、同じ周波数に音声を乗せています。いったい、何をどうやったらこんな事が出来るのかわかりません」
「もし他の方法で、やろうと思ったらどういう方法がある? 」
「できるとしたらスカイツリー全体をハッキングするとか、
武装勢力がスカイツリーを占拠するとかでしょうか?
少なくとも、それだけの事をやっておいて、使われたのが国営放送の周波数だけ。
しかも一時使用なのは納得いきませんね」
「やはり、ここは早急に国営放送で会見の場所と時間を指定するべきではないでしょうか?」
「しかし、これで単なる愉快犯だったら、我が政権は笑いものになるぞ」
「総理、正直申しまして、愉快犯にしては行動が大規模すぎます」
「会見をするとしても、場所と時間はどうする?
その得体の知れない人物が実在したとして誰が会うのかね? 」
「やはり外務大臣でしょうか? 」
「いや、防衛相の管轄ではないですか? 」
「科学技術庁だとすると文部省の管轄ですね、
「指定する座標が羽田や成田なら国土交通省の管轄ですね」
「防衛相の施設を使えば良いのでは? 」
「その場合、施設に海外のメディアを入れる事になりますが大丈夫なんですか? 」
「あの~すみません」
「どうしたね、官房長長官」
「その人物が、日本人10人を連れてきた場合はどうします?」
「警察庁では、彼女達の扱いは現在どうなっているのかね?」
「失踪時と同じ、行方不明のままですね」
「会談現場に来た場合の対応はどうなるかね?」
「写真による本人確認の後、医師の診断を受けて個別に保護。
血液検査の結果や、歯科医の診察記録を照合して確実に本人なのか詳しく調べます。
それから家族に連絡して、呼び寄せて映像を見せて本当に失踪者本人か確認してから
個別に対面させる形になりますね」
「にわかに信じられませんが、あの放送内容が事実ならば
会談には外務大臣と防衛省の高官、それに警察庁の立ち合いが必要でしょうな
オブザーバーとしてJAXAから来て頂くのはどうでしょう?」
「マスコミ対応とその後の移動を考えると、指定座標は羽田空港ですか?」
「保護は警察庁よりも、人の出入りを制限出来る
防衛相の方が良いのではないでしょうか?」
「今回、行方不明者は全て若い女性です、メンタルケアも含めて女性医師と
保護には防衛庁から女性担当者をお願いします」
官房長官がまとめに入る
「では、本日夜8時、国営放送を使ってメッセージをモーレイナス氏宛てに送る。
明後日、12時に羽田空港で待つ、その場で外務大臣と対面してバスで都内の会談場に移動して、国民の保護された状況の報告を兼ねた会談会を行う。
会談は外務大臣と防衛大臣が行い、オブザーバーとしてJAXA代表が出席する」
「では、総理。これでよろしいですか?」
「国営放送でこんな発表して、後で問題にならないかね?」
「おそらく無視して放置する方が問題になります」
「でも、羽田で待ちぼうけくらったら、大恥かくよ、政権に打撃どころじゃないよ」
外務大臣と防衛大臣が声を揃えて
「「総理、ご決断を」」
「わかった、それで進めてくれ。各方面に通達を出してくれ。
こんな情けない決断を迫られたのは歴代総理で初めてじゃないの?」
総理補佐官の一人がそのぼやきを聞いて。
「総理、情報が本当なら世界で初めて宇宙人と接触できた政権になりますよ」
笑顔でサムアップして見せた。
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