第2話 重大な問題
【モール】
危ないところだった、なんとか無事に助け出せた。
彼女達を部屋に送ってから、移動経路の殺菌措置と自身のウィルスチェックを行う。
彼女達と正確なコミュニケーションが取れないとメディカルチェックは難しいな。
「ユー、回収してもらった、彼女達が乗っていたとみられる機械だが調査結果は出たかな?」
『はい、モール。化石燃料を燃やす内燃機関が確認できました、多人数を運ぶ目的の陸上移動装置のようです』
「すまないが、わからん。連邦の居住惑星インフラ基準になっている技術レベルが有ったろう、あれだとどれ位かな?」
目安になるかと聞いてみたが、ユーから返ってきた返事は予想外のモノだった。
『0.5レベルですね』
「・・・・・・1に届いてないのか?」
『そのようです』
「この辺りの星域に居住惑星なんか無いぞ? どうやって?」
『技術レベルからは考えられませんね。なんらかの事故が原因と思われます』
「さっきの時空震か・・・・・? 」
『そうなりますね』
「当然、彼女達の、もと居た座標も分からないな・・・」
『0.5だと、おそらく恒星系内の移動が限界だと思われます』
「まずは・・・連邦に相談するか?」
『連邦への報告は必要ですね』
「この件を報告したら・・・連邦は何て言うと思う?」
『連邦の市民権を与えて、後は自由にやって・・・でしょうね』
「やっぱり、そうか」
『ところでモール、彼女たちの生体データをチェックしたところ重大な問題が発覚しました』
「生体データ? なんだ、
『彼女達全員、生体年齢が連邦の基準で30周期以下です』
それを聞いて、全身の血液がサッと引いていくのを感じた
「なん・・・だと、まだ幼い子供じゃないか」
『1人が26周期、他は全て17周期前後ですね』
「緊急事態だ連邦に保護も含めて相談しよう。モール、連邦に報告書を作るぞ」
『はい、時空震の報告よりもこちらが優先ですね』
「当然だ、あと彼女達の会話の解析も頼む、翻訳機を作って
なるべく早くコミュニケーションを取らないとな」
『モール、翻訳機の作成は想定外ですので船内にある調査ユニットのいくつかから
部品を流用する必要があります、よろしいですか? 』
「それは仕方が無いな、許可する」
『承知しました、すぐに作成にかかります』
【朝倉 水穂】
私たちは、今、食事を取っている。
先ほど桂川さんが、シャワーの代わりのクリーンユニットに入ってみた。
「これ、その辺の温泉よりずっと気持ちがいい。」
みんなが順に入っていった、なんというか全身の細胞が活性化する感じがした。
衣類のクリーニングもやってみた・・・数分できれいになって出てきた。
私は意を決してトイレも使ってみた、洗って乾燥を数秒でやってくれた。
そして・・・私たちは、今、食事を取っている。非常に美味しい。
なんだろう、あまりの環境の良さに、バスの中で感じていた絶望感や悲愴感が薄れてきた。
「なんでしょう、冷静に考えると絶望的な状況なのに、
あまりに快適で忘れてしまいそうですわ」
一条寺会長が、美味しそうに食べながら味の感想を話しだした。
「わたしも、宇宙に来た興奮で、忘れていた」と桂川さん。
「あまりにも、進んだ科学技術に触れて、全て忘れてました」と西城さん
「みなさん、気を引き締めてください」と皆を諭す佐倉先生
「あの状況では、あの男性に頼る以外の選択肢はありませんでした。
ですが、相手は男性で、あなたたちはまだ未成年の女性なのです。
これだけ大きな宇宙船の中です。
この中に、あと、どれだけ大勢の人間が居るのかもわかりません。
みなさん、けっして気を許さないように。自分の身を守る事を心がけてください」
「「「はい」」」
「でも・・・」私は、つい思いついた事を口にしてしまった。
「ドアの開け方を教えてくれたのは、ドアから出ても良いってことでしょうか? 」
桂川さんと西城さんが顔を見合わせて、にっこり笑う。
「2人共、状況が分かるまで絶対に出ないでください」
佐倉先生が怖い顔で止めに入った。
しかし緊張は続かなかった・・・・
「ほらほら見てください、この服、けっこう素敵ですわ」
生徒会長が準備されていた服に着替えて、桜元さんと出てきた。
生徒会長のスレンダーなのにきっちり出ているボディと桜元さんの
「インナーもアウターも体系に合わせて調整してくれるみたいですね」と桜元さん
「これ、色の変更も出来るみたい」と色を変えている生徒会長
それを見た、他の娘も我先にと着替えだす。
「すごい、真空中の生命維持機能が服に内蔵? 皮膚の露出部分はどうなるんだ?
ああ、試してみたい」
と桂川さんは、説明動画を見て、とてもハイテンションになっている。
「桂川さん、この服無重力での使用を想定してます。 特定の動きに対応して一定方向に移動出来るみたいです。一緒に練習しませんか」と西城さんも同調した。
「みなさん、先生がさっき言った事、聞いてました?」
佐倉先生が悲しそうに呟いた。
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