第1話 拾われたスクールバス
私は
今日は他校との合同行事の事前打ち合わせの為、生徒会役員と部活連合の代表、
それに引率の教員がスクールバスに乗って出発を待っていた。
バスの運転手の手配ミスがあって、今は運転手待ちとなっている。
副会長の
それを文化部の連合代表をしている
まあまあ となだめている。
運動部の連合代表、
それを面白そうな顔でながめていた。
「凛華ちゃん、慌ててもしょうがないでしょ」と
「ですが、会長、遅れたら我が校の品位が問われます」
「大丈夫よ、向こうの学校には、うちの学校から遅れるって連絡を入れて貰っているから」
「それは、そうですが」
一条寺紗羅会長は長いウェーブの掛かった髪が綺麗な正統派美人さんだ。
柔らかい物腰で生徒からの信頼も厚い。
副会長の瑞野さんは黒髪のボブカット、キツイ目元だが一部にファンがいるらしい。
文化部連の桜元佳乃さんは、茶道部の部長と兼任で連合代表をしている優し気な和風美人。
運動部連、桂川真琴さんはすらりと背が高く、バスケット部長兼任。
ショートボブが良く似合っている。特に下級生に大人気だ。
そうして、運転手を待っていた私たちだったのだが。
このバスが動き出す事も目的地に着くことも無かった。
突然バスの車内が暗くなって・・・・そこには闇しか無かった。
「なに?」「キャー」「みんな、どこ?」「何が起きたの?」「みんな、動かないで」
バスが大きく揺れて、少し傾いて止まった。
そして、車内が明るくなった時には周囲の様子は全く違ったものになっていた。
まるで夕方のように、周囲はオレンジ色の光に照らされている。
波の音が聞こえる。窓の外、海岸? でも海の水は緑色だった。
「ここ、どこ?」「なんで海に?」「水が変です」
バスの中はパニックになっている。
「外に何かいる」と瑞野さんが声を上げる
「みんな、窓を閉めろ。先生、ドアを閉められますか」桂川さんが叫ぶ
佐倉先生が慌てて運転席に向かう、皆も窓を閉めて行く。
バスの後ろの窓に何かが張り付いた。
皆が見る、全員が声をあげて絶叫した。
窓の外に2m程の蜘蛛が張り付いていた。
「先生、早くドア閉めて」桂川さんが叫ぶ
「どこ?どれ?これ」作動音がしてドアが閉まった。
蜘蛛がいるのはバスの後ろだけでは無かった。
私と同じ書記の島本さんが「蜘蛛、いっぱいいる」と泣きながら叫んでいる。
もうバスの前も横も蜘蛛が取りついている。
後ろの蜘蛛はガラスを叩き始めた。
それに合わせて前も横もガラスを叩き始める。
みんなも叫んでいる、違う、私の声も止まっていない。
どうしよう、どうしたらいい?
そうしている内に、後ろのガラスが音を立てて割れて毛むくじゃらの脚が中に入ってきた。
私は思わず目を閉じた。
バシュ、バシュ、バシュ
どこかで、何か空気の抜けるような音がしている。
音が気になって目を開けると蜘蛛がいなくなっている。
「どうして?」
窓に近づくが、周囲は蜘蛛だけだ。
桂川さんが「みんな、上」と声を上げる。
窓から空を見上げると、「何、あれ?」
翼の無い白い流線形の物が空中に浮いている。
そこから光が放たれて、蜘蛛に当たると蜘蛛は動かなくなった。
周囲にいる数百の蜘蛛はピクピク痙攣して動かない。
流線形の物体が地上に降りてきた。
物体の中から、若い男性が細長い銃の様な物を持って出てきた。
バスの近くまで来て、こちらに声を掛けるが、何を言っているのかわからない。
その男の人の年齢は20代中頃だろうか、灰色の髪に同じ色の目がきれいでかっこいい
「ああ空から王子様が助けに来てくださったわ」一条寺会長の呟きが聞こえる
男性は流線形の物体の方を指さす
こっちに乗れってことかな?
「先生、行きましょう」私は佐倉先生に声を掛けた。
佐倉先生は何か覚悟した表情で
「みなさん、あちらに行きましょう」とみんなに声を掛ける
ドアを開ける操作をして、外に出て物体の方へ向かう
男性は周囲を警戒しながら私達について来てくれる。
物体に近づいて手をかざすと入口が現れた。
みんなが中に入っていく、
全員が入ったのを確認して男性も乗り込んで入口を閉めた。
男性がほっと息を吐いた。
こういうのは一緒なんだと安心する。
男性は何か話しかけてくれているが、何を言っているのかわからない。
私の反応を確認して、男性は自分を指さして一言「モール」と言った。
名前かな? とりあえずモールさんと呼んでおこう
モールさんが何か話すと、床から人数分のシートが現れた。
皆の着席を確認すると自分も先頭のシートに座る。
おそらく、誰かと話しているのだろう女性らしい声が聞こえる。
物体は音も無く浮上し、そのまま上昇を続けていく。
会計の京塚さんが「これ成層圏まで上がってますね」と言っている
まだ上昇しているようだ。
はるか上のほうに小さく白い細長い楕円形のものが見える、
あれなんだろう?
少しづつ大きくなってくる
桂川さんが、「もしかして、あれが母船?」
「真琴ちゃん、母船ってなあに?」と桜元さんが聞いている。
「たぶん、この宇宙船は少人数を乗せる短距離用で、あっちは大人数の長距離用かな?」
「ふ~ん、あれ小さく無い?」
「宇宙空間で大気も比較する物が無いからね、たぶん距離感がおかしくなっているよ、近づいたら分かるんじゃないかな?」
桂川さんの言う通りどんどん大きくなっていく、もう母船の全景は見えない。
母船の一部が開いて、この船が中に入っていく。
船が固定されると、急に体が軽くなったが浮くほどではない。
「すごい、弱いけど重力が働いている」桂川さんはうれしそうだ
モールさんの身振り手振りの案内で船から降りて、この母船の通路を歩いて行った。
通路の途中で壁に下敷き程の緑色のパネルが埋め込んであって、
そこに手をかざすとドアが開いた。
中には何も無い大きな部屋に見えたが、モールさんが声を掛けると人数分のベッドが現れた。
大きなテーブルとイスもある。
部屋の中に入ると、モールさんは近くのドアやテーブルの横に大きなシールを貼りだした。
全てのシールを貼り終えると、ドア横の自分で貼りつけたシールに手を触れた、
するとシールの中の絵が動き出す、これは動画で使い方を説明してくれるのかな?
シャワーの様な部屋、トイレの様な部屋のドアにそれぞれ使い方の説明が張り付けられた。
テーブルの上には、食事や飲み物らしきパックが積んであって
上に貼られたシールに触れると、パックの開け方が説明される。
衣類のクリーニングもすぐに出来るようだ。
私たちにとって奇抜なデザインだけど新品の服もあって
シールには服の着方や機能が説明されていた。
モールさんは私に、手招きした。
何かと思って近くに行くと自分の手をドアの横にあるプレートにかざしてドアを開けた。
次に私にも手をかざす様にジェスチャーで伝える、私が手をかざすと、今度はドアが閉まった。
モールさんはうんうんと頷いている。
それを確認してから、こちらに手をあげて部屋から出て行った。
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