第32話大団円?

 本日は領主に魔窟折伏、地獄閉鎖の報告に登城した。


 もう領主の両側にはオークが居ないので、どれだけ間違った命令でも可能で、領内の別の地獄を閉じに行くように命令が出たり、勝手な事をして領内最大の収益源を閉じてしまったとお叱りが出たり、虫の居所が悪ければ捕らえられて責めを受ける事だろう。


「あいや、聖男殿、此度はよくやってくれた。これで皆、枕を高くして眠れる」


 まず第一声はお褒めの言葉から始まった。番屋からも報告が上がってスタンピートの原因は知っているだろうから、こちらに責めはないようだ。


「魔窟からの収益が無くなるのは寂しい限りだが、街の周囲にいた魔物まで一掃された、今後は地獄の影響を受けない安全な街としてハッテンすることだろう」


 今後の収益が無くなったり、幕府に送る元死人達が出て来なくなるのも損害だろうに、そこの所は今後の安全と引き換えに呑んでくれた。


「本日は魔物暴走(スタンピート)の際に得た聖銀を献上しに参りました、街の再建などにお役立て下され」


 ケツベントリがパンパンだと、番屋の岡っ引きにまで知ってはならないことを教えてしまうので、金に換えられそうな物は城に、貴重な仏具は寺に、神具は神社に収め、神話級の武具や次の場所で武士団に貸し出す武器、旅の路銀や貧しい所に分け与えられる程度を残して他は全て置いて行く。


「何から何まで済まぬ。それに街の瓦版や歌舞伎の手本書きでは、武士団が共に戦って魔窟を閉じたことになっておるが宜しいのか?」


 後ほど取材に来た瓦版屋や歌舞伎の脚本家には、血沸き肉躍る大合戦を話してやり、手に汗握る攻防の作り話をして、団長や若が大手柄を上げ、武士団の一人一人までが合戦に参加し、不死王(ノーライフキング)との血戦、最後の魔窟守護(ダンジョンマスター)暗黒龍(ブラックドラゴン)との大戦(おおいくさ)を語ってやると大喜びで物語にして、今も河原で毎日公演されて満員御礼らしい。


「次期領主たる武士団長や女房役の副団長が活躍しても何の不満も出ますまい、今後は歌舞伎や影絵、浮世絵での収益を考えては如何ですかな? ははっ」


 お上が演劇に口出しすると碌な事がないが、それでも大きい収益を上げているようなので冗談めかして話してみる。


「聖男殿の手柄まで奪ったようで申し訳ないのう、最後の止めは次郎衛門と三郎太が刺したことになっておるし」


 そんなに仲が良くなかった兄弟協調の上で勇気、友情、勝利の王道だ。視聴者も満足する展開だろう。


「拙者は脇役で十分でございまする、花形は武士団にお譲りし申す」


 頼りなかった酔いどれ部隊で鼻つまみ者だった武士団も、今では街の名士だ。どこかの鷹の団みたいにならないように祈る。


「それではこれにて失礼致す、領内に開いた別の魔窟に行き、魔窟折伏を目指そうかと思います」



「待たれい」


 領主が口を開こうとした所で襖(ふすま)が開き、団長達が入って来た。


「聖男よ、貴殿との婚約破棄をここに宣言させて頂くっ!」


 武士団長で俺様王子系の青年が、突然俺に婚約破棄を言い渡した。


「あ、うん、男同士で結婚する気はないから別にいいんだけどね……」


 武士団長には意中の寵童がいたらしく、俺から覆い隠すようにして抱きしめている。


 領主から聖男?との結婚を言い渡された後も、武士団長だけは良い顔をしなかったから、何か裏があるだろうとは思っていたが、まだ前髪も上げていない少年(15歳以下)と良い仲だったとは、これは事案発生だ。


 ここで悪役令嬢ものなら国外追放になるか、今までの悪行を論あげつらわれて死罪。相撲令嬢物なら城内場所が執り行われる所だが、行事も土俵も出てこないので(角力)すもうは始まらないようだ。


「貴殿にはあの出来が悪い弟をくれてやるっ、一緒に出て行くが良いっ」


 以前長男から暗殺者を送り込まれ、あと少しで命を落とすところだった団長の弟。俺が命を救ったので大丈夫だったが、この次兄も邪魔者扱いをするのか。


「さあ、貴方には餞別にこれを差し上げましょう」


 笑顔のままの副団長が、不機嫌そうに餞別の金子や旅装束を差し出してきた。相変わらず食えない男だ。(性的な意味で)


「貴殿からの恩は忘れぬ、だが今は別れの時だ、いつかまた相まみえよう(性的な意味で)」


 案外涙もろい一番隊隊長からも別れの言葉がでた。これは追放を受け入れないとなるまい。


 一体なぜこうなってしまったのだろうか?



 そこまでお膳立てしたところで、若が文金高島田を着て、角隠しを被って白無垢で身を包んで入場して来た。


「アッーーーーー!」


 とりあえず兄である団長が身を引いて、三男である若が嫁入りしてくる段取りになっていたらしい。


「何と気持ちの良い男達だろう(性的な意味で)」


 セバスチャンも上手い事言ってんじゃねえぞ、「奴は大変な物を盗んでいきました」とか「貴方の心です」とか言わねえぞっ、抱き締めるのを躊躇してから名台詞とか言わねえからなっ!


「上人様、いえ、旦那様(////)」


「アッーーー!」


 もう嫁入りするつもりで顔を赤らめ、その場で三つ指ついて領主に挨拶する。


「父上、今まで育てて下さり有難うございました、三郎太は聖男様に嫁ぎます」


 これが美少女なら大団円でまとまったのに、男と結婚するつもりも男で童貞を捨てるつもりもない。


「タスケテーーー!」


「結婚、嫁入」


「おじちゃん」


「聖男様」


 モルスアやタロウにケンタまで花嫁姿で登場してさらなる地獄の蓋が開いた。


「キクちゃんもハナちゃんも好きだす~~っ!」


 昔、いなかっぺ大将というアニメの最終回で、そのまま中学に上がるのではなくアメリカに柔道修行の留学に出ることになった大座衛門と、まだ小学生のキクちゃんと幼馴染のハナちゃんの二人を嫁に貰う重婚の仮祝言のようなものが行われた。


 そちらは三人とも子供なので本当の結婚式では無く有耶無耶になったようだが、若とモルスアの場合元服ぎりぎりの肉体年齢で、モルスアなど数百歳のショタジジイなので結婚可能、このままでは男と結婚させられてしまう。


「高砂や~、この浦舟に~」


 気の早い領主は高砂屋を歌い始めている。


「らめええええっ!」


 逃げ出そうとしたが団長と副団長に両手をガッシリと押さえられた。


「聖男殿、年貢の納め時でござる」


「左様です、若のセキニンを取って下さい」


 この世界では男と同衾したり、同部屋で一夜を過ごしただけで責任問題になるらしい。


「団長殿も女房役の副団長を、いい加減嫁に貰ってやっては如何ですかな?」


「何を仰るのですかっ?(////)カアアッ」


 副団長がデレて力が弱まった隙に逃げた。フェニックス一〇みたいに那由多の距離を走って逃げた。


「待って下さ~い」


「待、結婚」


「おじちゃ~ん、戻って来て~(シェーン的な意味で)」


「地獄までお供します」


 武蔵とお通のように逃げ回っている間に別の男と結婚してくれないだろうか?


「らめえっ、飛行(フライ)」


 明かり取りの障子を開け、ベランダから文字通り飛んで逃げる。


 うる〇やつらオンリーユーのエンディングみたいに結婚式会場から全力で逃げ出す。


「待て~~~っ!」


 最初の地獄で魔窟を閉じたら、別の地獄の蓋が開いたでござるの巻、ニンニン。



 反省点


 毎日更新を目指すと、将棋や囲碁の持ち時間なしのように、よく考えて書く暇が無く、一人称視点での表記にも限界を感じました。

 三人称視点だと視点をブレさせずに表記する技術も無いのでもっと困りますが、とにかく筆力の無さと表現力の低さに困っております。

 ギャグ路線で行くのかストーリー路線で行くのかも迷走し、弱キャラが強くなっていくような醍醐味やアイディア路線でもありませんでした。

 折角流行の追放物や転生物のツボも全部外し、聖女物のテンプレも外していました。

 題名で釣って多少読んで頂けましたが、人気作にもなれずランキングにも乗れませんでした。

 以降は第二部的な考えもありましたが、第一部完で一旦終了したいと思います。

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聖男?として召喚された俺 男にばかり惚れられ武士団長から婚約破棄されて追放。魔物をテイムし過ぎて尻子玉が賢者の石になってたからって呼び戻してももう遅い、拙者のガチムチのキンニクを喰らえ @piyopopo2022

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