第13話馬廻役
やがて五階層の残りも制覇し、生きていたストーンゴーレムを全員メスにして仲間に加えた。
魔窟内で死んだ魔物は基本魔石になるが、粉砕したてのヴァンパイアなどは武士団員の赤い方の血で復活させて即テイム、ノーライフで死なない先兵として使役する。
「「「アアッーーーーー!」」」
メスの顔をして仲間になりたそうな顔もしている吸血鬼(ヴァンパイア)。
鑑定 吸ケツ鬼
夜な夜な町を徘徊して若い童貞の男のケツを吸って回る鬼。
ケツ液を主食として生きる夜の生物。
この魔物にケツを吸われた者は、ケツ液感染して同じ吸ケツ鬼になるか、能力や知力が低いと成りそこないの食人鬼(グール)になる。
自ら禁呪を駆使して人間から吸ケツ鬼になった者を真祖と言い、絶大な魔力と絶対の不死性を持つ。
噛まれて感染した者は能力値も低く、真祖から遠い者ほど能力も下がって行き、程度が低すぎると人間としての自由意思すら失って本能のままケツを吸う化け物に成り下がる。
太陽に弱く陽にあたると灰になってしまうが、灰を集めてケツ液を与えると復活する。
「ケツ吸うのかよっ」
また腐った鑑定が出た、たまげたなあ~~。
この世界の吸血鬼だから何かあると思ったが、若い処女の血じゃなくて若い童貞の男のケツ吸うのか、ケツ液ってなんだよっ!
最近のお約束のデイウォーカーの美少女ヴァンパイアはいないようで、ジョジョとか鬼滅みたいに太陽でも死んでくれるようだ。
俺の場合、波紋疾走でもない太陽の光を腹パンで注入して粉砕してやったが、鋼鉄のケツに牙を立てられないようにしなければならない。
ニンジャと賢者の経験値の差分を消すのに、吸ケツ鬼にエナジードレインさせないで良かった。
六階層階段前
「今までの魔物の強さから測るに、このまま六階層に降りると全滅し申す、石の魔物すら倒す敵が出ましょう」
俺だけは問題なく生き残っても、他のパーティーメンバーは危ない。
レベル上げのスカウト作業でも、バックアタック食らって全員に影響する魔法を複数食らわせられると後衛が全滅する。
別行動している武士団の雑兵は、生き残っていた魔物に出会い次第、素早さの差から会って五秒で全滅。
ヒットポイントも一定以上有る、団長以下隊長連中だけ護衛のゴーレムの力で生き残れるかもしれない。
「何と恐ろしい」
「それは真か? 聖男殿っ」
法念和尚と副団長の張り付いたような笑顔がダブルで崩れた。
これ以降の魔物はもっと恐ろしいので、五階層までの魔物を脱酸素で全滅させず、一体づつ倒させて全部経験値にした方が良かったかもしれない。
「また脱酸素魔法で生きている魔物は全滅させることができるやも知れん、それよりは全員降りられるようになるまで五階層までで鍛えた方が良いだろう」
今日はここまで全滅させておいても、ダンジョンマスターを倒さない限り魔物が生成されるか、地獄の底から湧いて来て、出られる範囲まで登って来ることだろう。
「うむ、ここまでか、無念」
「命あっての物種、今宵はここまでとしようか」
外の状態は分からないが、そろそろ日が暮れ始めていることだろう、一旦退却しないと死ぬものが多く出始め、復活できないものも出てくるだろう。
「それでは本日はここまでとし、明日以降鍛え直す方針で宜しいか?」
「うむ、帰って祝杯でも挙げようぞ」
「それに越したことはない、先代団長達が返ってきた祝宴じゃ」
信用してもらえたようで、六階層以降の侵攻は見送られた。
「それではこの下の強力な魔物が上がって来ぬように一手間掛けておきましょうか?」
現場ヨシッ! 現場猫行為が行われないように、ここから下を封鎖する。
「脱酸素魔法(オキシジェンデストロイヤー)、水魔法」
雑兵が抜け駆けして降りないように、六階層以降も脱酸素して、さらに水魔法でドップドップ給水して封鎖しておく、これで五階層までをうろついてもゴーレムの力で全滅は免れ、行き来が楽になる。
「武士団撤収っ!」
また点呼が取られ五階層から退く、六階層に一人で向かうような無謀なものはおらず、先に今日の儲けを金に換えたい連中が多かったようだ。
帰路でも何度か新しく生み出された魔物と出くわしたが、ヴァンパイアやストーンゴーレムの従魔に敵う者はおらず、問題なく撤収できた。
「魔窟に入っても外に出れて、またお天道様を拝めるなんてよう」
「今日も十人は死ぬと思ってたけど、これだけ稼げるなんて聖男様様だぜ」
かなり日が傾いて薄暗くなり始めている外界、死なないで定時近くに退社できるなんてなんてホワイトな環境だろう。それでも朝六時から十八時までと言う戦後の定時退社だ。
そこで最前列がダンジョンから出始めると、先頭でもめ事が怒り始めた。
「控えよっ、下郎どもめっ、武士の面体に泥を塗るかっ!」
「何事だ? 出られないではないか」
先頭がつっかえて渋滞が起こり、三番隊以降が出られない。
「返せっ、俺の魔石だ、これ売って故郷に仕送りするんだよっ!」
それでもじりじりと進んでいくと、雑兵たちが別の武士達に装備を改められて、魔石や良い物を持っていれば没収されている。
「聖銀の武具など下郎に渡せるかっ、たわけがっ!」
丸裸にされる勢いで、ふんどしやケツの中まで改められている一番隊二番隊。
「あれは? 馬廻役(うままわりやく)の佐伯様」
「もう一度言うっ、魔窟で得られた金品は全て提出せよっ、お主らは武士団としての俸禄を得ておるっ、ここで得られた金品は領主様の物だっ!」
どうやらミスリルの品が出たと聞いた奴らが、手柄と金に目が眩んで子供の小遣いやお年玉を取り上げることにしたようだ。
「嫌だっ、これは俺らが命懸けで魔窟に潜って取って来た物だっ!」
基本的に、魔窟と死体を漁って取って来た品物と魔石は、武士団で集めて金に換え人数分で案分すると決めていたので、個人で持ち出すと違反なのだが、元から金に困っている連中なので団長も隊長も目を瞑って、懐に収められる程度の品物は見なかったことにしてやり、町で売ろうが持ち逃げしようが罪に問わないとしていたが、城の連中はそうは思わなかったようだ。
「たわけがっ、お主らのような下郎が魔石や聖銀を持ち込んでも、盗んで来たとしか思われんっ、さっさと提出せよっ!」
大勢の徒武者の中で馬に乗ったまま叫んでいる馬鹿がいる、あれが馬廻役なのだろう。
それでも奥から進んで来るものに怯えたのか、馬は盛んにその場で回ったり、嘶(いなな)いて立ち上がろうとしていた。
「動くなっ、どうっ、どうっ」
馬が動き回らないように苦労している佐伯様(プゲラ)、この後ションベン漏らして腰を抜かして驚くことになるだろうが、その前に一言言っておくために順番を抜かして外に出た。
「貴殿、子供の小遣いを取り上げるような真似はやめんかっ、武士団が苦労して魔窟の奥から取って来た品を奪うとは、恥ずかしくないのかっ?」
「何者だっ? 髷も結っておらん、着物は襤褸(ぼろ)、下郎は黙っておれっ、馬廻役に直言する許可など出しておらんぞっ、うつけがっ!」
盛んに下郎だのたわけ、うつけと叫んでいる馬鹿なので、余り気に食わないが身分で圧してやる。
「我は聖男、御仏より選ばれてこの世に下生した仏の使いなり、下馬してその場に平伏せよっ!」
馬廻役と言うのは領主の護衛でかなりの身分らしく、嘲笑ってから答えた。
「何を言うかと思えば聖男だと? そのような者がおるかっ、ははっ」
昨日からの騒動を聞いていないか、報告を受けても信じないで自分だけの常識で判断する馬鹿のようだ。
「己の頭の中では、仏の使いよりも馬廻役の方が偉いらしいな、お主の態度次第ではこの魔窟を閉めずに放置して、街の守護結界も解いてやっても良いのだぞ? 下馬して平伏(ひれふ)せっ、下郎がっ!」
怒鳴ってやっても街の守護結界すら知らなかったのか、ごそごそと動き回る馬の上で偉そうに笑う佐伯。
「はっ、そのような身なりの下郎が聖男を騙るかっ、痴れ者を引っ立てい!」
周囲の徒武者に命じたので、俺を取り押さえて城まで引っ立てようと徒武者たちが迫って来る。
本来、任侠転〇的に次のコマでは全員ぶっ倒されていて、地面に突き刺さっていたり、木に引っかかってぶら下がっていたり、川に突っ込んでスケキヨポーズで倒立しているのがお約束で、前のページと間違い探しになっている所だったが、もう少し後続を待つことにした。
「万両を越す聖銀を、下郎の集まりの武士団になど処理されてたまるかっ、良い品物は領主様や上様に献上するのが当たり前だっ!」
言っていることは正しいのかもしれんが態度が気に入らん。地獄に侵食されて餓えた民に食わせるのが先決だとは思いもしないのだろう。
そこで馬が腰を抜かして小便を漏らした。後続の殿(しんがり)、吸血鬼(ヴァンパイア)の一団とストーンゴーレムが四十体ほど出現したからだろう。
「吸血鬼だっ、ケツを吸われるぞっ!」
「ぎゃああっ、石の魔物っ、逃げろっ、あの数なら全滅させられるっ!」
叫び声をあげて一目散に逃げだす徒武者達。
持ち物を奪われていた武士団も物品を奪われないよう言い訳するのが先決で、デカいお仲間とかケツを吸う従魔を説明していなかったのだろう。
その隙を狙って、売り物を持って逃げだす目利きがいたので、とりあえず全員留まらせておく。
「まあ待て、カゲヌイッーー!」
影縫いの効果により、周囲二十ヘクスの武士団までが停止した。持ち逃げ野郎を止めるのに見境なく団長や若にまで掛けてしまった。
「う、動けぬ……」
佐伯様が動けないようなので、馬上から蹴り降ろして顔を踏み潰し、馬の小便の中に漬けて土下座させてやった。
「聖男とはこういった者だ、平伏せよ、下郎が。痴れ者はお主じゃ」
番組終了間近なのか「この紋所が目に入らぬか」と菊花紋の肛門全開で見せてやったが、佐伯は馬の小便が気に入らないらしく真っ赤になって怒り狂った。
「誰か、たれか有る、この痴れ者を斬り捨ていっ!」
影縫いの効果で武士団を含めて誰一人として動けなかった。
「石の魔物に踏みつぶされて皮一枚と血だまりになるのと、豚鬼(オーク)か旅小鬼(ホモゴブリン)にヤられて子供を産まされるのとどっちが良い?」
「「「「「「「「「「ひいいいっ」」」」」」」」」」
佐伯を含めて徒武者の一団も悲鳴を上げ、ストーンゴーレムの体重で踏み潰されて、骨まで皮一枚に圧縮され哀れな血だまりになるか、身動きできないで自決すらできないまま、ホモゴブリンやオークにヤられてから切腹と言う末路を選ばされているのだと思い知ったようだ。
「武士団を騙らせておけば、お主らの行方など誰にも分からん、魔物に踏みつぶされて死んだことにして、名誉の戦死であったとでも言っておこうか」
「やめろおっ、そんな事をすれば武士団も三郎太もただでは済まぬぞっ!」
若を呼び捨てにした所からも、こいつも若への刺客であったようだ。
「ほほう、若を呼び捨てにしたな? まだ生きていると知って殺しに来たのだろう。しかしな、今は若の護衛の従魔として石の巨人を十体ほど付けてある、これが今から城まで行って城砦も城も粉砕する、お主の無礼な物言いで佛罰(ぶつばち)が下って街が滅ぶのだ、街も城も大火で消える所をその目で見ておけ」
ゴーレムにも知能があるようで、主人である若の命が狙われたので自動的に侵攻を開始する。
数を増やしたゴーレム同士で相談して、護衛に二体残り、残りの八体で城攻めするようだ。
重い足音を響かせてプチ地ならし部隊が出動する。
「やめさせろっ、次郎衛門っ!」
団長まで呼び捨てなので家柄も身分も領主の覚えも目出度いのだろう、きっと元服するまでは前領主の寵童で、体を売って身分を上げたのだ。
過去の武将も幼い頃は、高い身分の者の寵童になるのが一番の出世コースで、城主や君主の寵童になれれば出世は約束されたもので、城主にまで直言出来たり、その子には重鎮として先代城主の夫や妻として意見まで出来る立場となる。
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