第4話若様と少年のレベルを上げる
街に近付き次第に大きくなってくる城砦。
「セバスチャン殿、このまま城門をくぐっても大丈夫ですかな? また若様のお命を狙われるのでは?」
「左様です、跡継ぎである兄上様は執念深い方でしてな、母上が商人出身である若様を許すはずがございません」
三郎太の兄を思い出し、身震いするように語るセバスチャン。
このまま城門を潜って城まで行くと命を狙われて詰む、街中で襲われても多人数に囲まれては守るのも難しい、吹き矢で毒針でも放たれると守りようがない。
「では、このまま姿をくらませて死んだと思わせるのは如何かな?」
「いえ、先代のご領主様の葬儀にも出ないとあれば面目も立たず、逃げ出したと知られれば追手がかかり廃嫡では済まず、ご親族にも迷惑がかかるかと……」
セバスチャンは口ごもってしまったが、命より大事な面子でもあるのだろう、抜け忍より厳しい侍の世界などくそったれだ。
「どうかこれからも若様の護衛として、登城する時もご同行願えませんか? 金子なら弾みますゆえ」
当面の目標としては、少年の父親の治療と、命を狙われている若様の護衛か。
「承(うけたまわ)った、このような無頼漢、登城できるとも思えぬが、護衛と言えば何とかなろうか? うむ? 聖男を名乗れば城まで入れようか、まずは着物だけでもご用意願えるかな?」
現在の俺の姿は、全裸の上に熊の毛皮を着込んでいるだけ、ふんどしすら装備していなコマンドー状態。
セバスチャンと若の手引きが無ければ、不審者として城門さえ潜れなそうだ。
「手配させていただきます、武士としての二本差しは許されないかもしれませぬが宜しいか?」
「結構、手前は素手が一番、下男として同行する」
若様護衛のクエストが開始された。
それ以前に若様とセバスチャンが弱すぎる、熟練者が現れれば一刀のもとに切り伏せられて歯向かうことすらできない。
リザレクションも絶対ではない、心まで切り伏せられて死ねば復活もならない。
「若様、まだ日も高いので、お命を守るためにももう少し格を上げてから帰りましょう」
「はい、上人様」
若からの呼び名が上人様に確定してしまった。どうもケツの穴がこそばゆいが聖男様よりはマシなので我慢することにした。
「セバスチャン殿も宜しいかな?」
「ははっ、仰せの通りに」
まずは森に近付いて魔物を呼び寄せる事にして、魔法?で地獄狼の遠吠えを真似て鳴き、魔法?で腋からもフェロモンを出して誘因する。
「あちらの方から土煙を上げて何か来ます」
馬上の若様が先に気付いたようで、地獄狼と地獄猪が数十匹、豚鬼(オーク)も数匹こちらに殺到してくる。
名前に「ホモ」が冠されていないが、俺のオスの匂いに呼び寄せられるのは大抵ホモだと思われる。
鑑定 豚鬼(オーク)
ゴブリンと同じようにメスの個体は存在せず、若い男を襲って子どもを産ませ繁殖する魔物。
騎士の天敵で犯される前には「くっ、殺せ」と言わなければならない決まりごとがある。らしい。
催淫作用を持つ唾液の攻撃に耐えられるものはおらず、オークの子を喜んで産んでしまう。
生殖能力が非常に強く数分で「産まれる~~」と悲鳴を上げて数匹のオークを産み落とす羽目になる。
メスブタ化して以降は社会復帰もできず、オークの巣で飼われるため非常に恐れられる魔物。
腕力だけでなく精力の恐ろしさからBランクモンスターとして扱われ、かなり格上のパーティー単位での討伐が望まれる。
なんて恐ろしい魔物だ、この解説も結構腐っている。
「ああっ、あれは豚鬼将軍(オークジェネラル)ではないですか? 若様っ、お逃げ下さいっ」
セバスチャンは早速恐慌状態に陥り、オークジェネラルを見てションベン漏らす勢いで逃げ出そうとした。
家康みたいに戦場から逃げる時、切な糞を漏らしながら逃走するかもしれない。
地獄猪も結構大きく、普通の猪の倍はあり、地獄狼の方もゴブリンが騎乗できるぐらいデカい。
一般人なら瞬殺される敵編成だが、レベルが3200もある忍者には敵いはしない。
「まあ待ちなされ。カゲヌイ~~! 風下に立ったウヌの負けよ」
影縫いと春花の術を馳走してやると、オークジェネラル以外の全部の敵が状態異常になり、麻痺どころか石化するものまでいた。
「変移抜刀霞切りっ((C)白土三平 カムイ外伝 )
ニンジャとしてオークジェネラルに霞切りを放ち、クリティカルで首を切り落としてやった。
いずれ「飯綱落とし」などの大技も試さなければならない。
「討伐完了。ささ、残りは若様が仕留めて格を上げて下され」
失格紋もないのに、つい討伐完了してしまった。レベル差があり過ぎるので瞬殺できたな。
「はい」
倒れている魔物にとどめを刺すため下馬して向かう若。
「まさか、豚鬼将軍(オークジェネラル)を素手で? 一瞬で?」
豚鬼(オーク)が恐ろしすぎて、その場にへたり込んで震えているセバスチャン。
この辺りに素手でオークジェネラルを仕留められる者はいないようだ。
「タロウも狼を何匹か仕留めておけ、森の中でも魔物から逃げられるようになる」
「うん、おじちゃん」
テイムしておいたゴブリンから刀を借り、拾った少年もレベル上げさせておく。
セバスチャンの方は後回しでもいいが、すぐにオークに負けてしまいそうなので一緒にレベル上げさせておく。
「さあ、セバスチャン殿も遠慮せず」
「ひっ」
文官で世話係なのか、以前ゴブリンやオークに負けてしまい、どこかの剣の乙女みたいに巣で飼われていたトラウマがあるのかも知れない。
魔物達の麻痺が覚めないよう気を付けながら、若やタロウのレベル上げが終わった。
タロウはレベル2から一気にレベル10に、若もレベル20程度まで上がって、そこそこの使い手になった。
セバスチャンは、この程度で腰を抜かしているのでもう駄目かもしれない。
「どれ、拙者が「ていむ」して進ぜよう」
「「「「「「「「「「アッーーーーーー!」」」」」」」」」」
当方の軍勢?がさらに増えた。このまま増やしていけば城を攻め落としてしまえる勢いだ。
それから何度かモンスターハウス並みの訓練を繰り返し、仲間を呼ぶ系統の魔物を大量に倒してテイムもして、従魔が二百頭超えになった頃、夕方に関所が締められる前に入城するために向かった。
「若様は格(レベル)40か、そろそろ剣の達人とも相手できそうですな」
「そんな、まだわたくしなどまだまだ若輩で(///)」
若は何故か「こんな大きな黒船が入港したら、拙者の浦賀港こわれちゃうよ(///)カアアッ」のコピペの武士みたいに顔を赤らめた。
「タロウも結構強くなったな、これでもう森の中でも心配ない」
ちょっと強くなりすぎてレベル25「解体ってのはこうやるんだ」とか言い始めて、生きたままのウルフを安物の奈良刀(刀型にしただけで折って叩いて鍛えていないただの鉄)で解体し始めたのは驚いた。
どこかのフィナちゃんも領主の娘も、クマと同じパーティメンバーとしてレベル上げしたので、村人のスキルやステータスをカンストするぐらい強くなっているはずだ。
「お主たちは流石に城門からは入れん、拙者のケツベントの中に入っておれ」
テイムし終わった従魔たちをポ*モンボール的なケツベントリに収納して門に向かう、街中でも襲撃されるようなら放出して城まで攻め上るしかないだろう。
城に近付いたが、この辺りなら従魔を使わず人間の襲撃があるだろうか? 街に入ってから襲われるよりは、迷惑の掛からない外の方が良いだろう。
「あれは? 野盗か冒険者ですかな?」
予想通り若を待ち伏せしていた者達が数十人出て来て周囲を取り囲んだ。
月城を剃ってあるセバスチャンや若と違い、髪を後ろで纏めて上に乗せてあるだけの浪人スタイルの丁髷(ちょんまげ)だ。
「ふっ、まだ生きておったか、命冥加(いのちみょうが)な奴め、今度こそ三途の川を渡らせてやるっ」
やられ役の三下のセリフを言う浪人、全員レベル30程度の初級職で雑魚ばかり、影縫いから何か魔法でも繰り出せば一瞬で全滅させられる。
「ここにおわすをどなたと心得るっ? 先のご領主様の三男、三郎太様なるぞっ! それと知っての狼藉かっ?」
セバスチャンがお約束のセリフを言ってくれたが、浪人どもはニヤニヤと笑って刀を抜いて囲みを狭める。
「ふざけた奴だ熊の毛皮など着込みおって」
「殺しちまうには惜しい若武者ぶり、たっぷり楽しませてもらってからでも良いよなあ?」
どうせ雇い主の顔も素性も知らんのだろう、面倒なので全滅させよう。
「影縫い……」
「なっ、何をしたっ?」
「体が動かん?」
処理が終わったようなので一応尋問して見て、その後の末路を選ばせてやる。
「誰に頼まれた?」
「知らんっ、金を貰っただけだ」
とりあえず全員の懐を探って集金タイム。ついでに武装解除して出来るだけ背が高い奴から着物と袴も接収する。
「小さいのう」
この時代の成人平均身長は150センチ以下、明治村にもある大日本帝国陸軍の制服が子供服でしかない。ゴールデ〇カムイの登場人物も全員150センチ以下だ。
この時代で身長180センチあるのは、横綱の雷電為衛門一人ぐらいしか存在しない。
「追剥で人殺しが、逆に追剥される気分はどうだ?」
「くそうっ」
「このままただで済むと思うなよっ!」
全員ふんどし一丁になるまで追剥してやって着られそうな着物に着替えてみる。
どうやらクマの毛皮で城門に入らずに済みそうだ。安物の刀も小刀も取り上げて後で売る。全部ケツベントリに収納してから、こいつらの末路を知らせてやる。
「豚鬼(オーク)と小鬼(ゴブリン)、どっちにヤられるのがいい?」
「は?」
「何を言っとるのだ貴様?」
まだ自分の末路が分かっていないようなので、ケツベントリからオーク達とゴブリン達、ホモゴブリンを全員出してやり、お好みの男を選ばせてやる。
従魔にもご褒美は必要だね。
「うわあっ、やめろおっ!」
「ひいいっ」
殺しても惜しくはないような雑魚だし、ゴブリンにヤられるのも恥とも思わないだろう。
ここは一つ、オークの唾液の味を味わって天国に行って貰うとしよう。
「あっちの茂みにでも連れて行って好きなようにして来い。明日には迎えに来る」
「ブヒーー」
「ゴブゴブ」
「いやだあああああっ!」
「助けてえええええっ!」
このような輩なので、今までにも男や少年を泣かせて来たのだろう、今日はお前たちが鳴く番だ。
タップリ可愛がってもらって「くっ、殺せ」から「産まれる~~~!」まで全部こなしてもらうとしよう。
「「「「「「「「「「アッーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」
男達の哀れな叫び声が草原に響き渡った。
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