竜の瞳で見る世界 番外 ~少女の想い~

かににっぱ

竜の瞳で見る世界 サイドストーリー ①

 みんなが、私を覗きに来る。

 ひとりぼっちの私を、色々な顔で覗き込む。

 嬉しそうに、悲しそうに、楽しそうに、面白そうに、不思議そうに、つまらなそうに。

 そして、決まって最後は去っていく。

 私は、またひとりぼっちに戻る。


 それが繰り返される。

 ずっと。

 ずっと。


 だけど、一人だけ違った。

 その子は、一人で私を覗きに来た。

 また私を覗いて、気が済んだら帰るのだろうと思った。

 でも、その子は帰らなかった。


 長い時間、私を覗いていた。

 ずっと。

 ずっと。

 明るくなって、暗くなって、また明るくなって。

 だんだんその子は寂しそうになった。

 悲しそうになった。


 来た時も寂しそうだった。

 泣きそうだった。

 それがもっと、もっと。


 私は気になった。

 だから、手を伸ばしてみたくなった。

 私は覗かれるのは好きじゃないけど、嬉しそうな顔は好き。

 ずっとひとりぼっちの私には、できない顔だから。

 だから、ずっと私を覗いているあの子に、嬉しそうな顔をしてほしかった。



 ◆◆◆



 村長は、あの子が死んだと言った。

 死体が上がったと。

 見るに堪えない姿だったから、先に埋葬したと。


 そんなの嘘だ。

 嘘。

 嘘。


 真実なら今、戸を叩いたのは誰?

 目の前にいる、小さな手を伸ばすのは誰?

 私に抱き付いて、頭を撫でられるのを待っているのは誰?

 数日ぶりに帰ってきたのは誰?

 あの時のまま、いなくなった時のままの姿。


 嘘を吐いたの?

 それとも、私が夢を見ているの?


 どちらでもいい。

 夢でも現実でも、この子がいてくれる方が、私の生きる世界なのだから。



 ◆◆◆



「……傭兵ってのはこんな仕事までしないといけないのか? 兄貴」


「……そうだ」


「……命令だから、か。何とも胸糞悪くなる話だ」


「……」


 とある村。

 傭兵ギルドに登録して半年、傭兵団に誘われて数ヵ月。

 そんな俺に、団長は仕事を申し付けた。


 内容は村の内偵。

 隣にいるのは傭兵団の兄貴分。

 組んでから一ヵ月かそこらだが、なかなか気の合う男だ。

 ちょいと変な思考をする時もあるが、仕事に忠実、団に忠実、それでいて仲間想い。


 俺はあまり傭兵団に思い入れは無い。

 誘われたから入って、言われるままに仕事をして、金をもらえればそれでよかった。

 ハンター稼業はできなくなったが、メシは食わにゃならない。

 盗賊になるには一端の良心があったし、騎士団に入るにはやる気が足りない。

 腕っぷししか能の無い俺には、傭兵が丁度良い。


「見たところ、落ち着いた村だな。女将さんのメシも美味いし、手伝ってるミーも可愛げがある」


「……そうだな。村長の裁量がいいんだろう。統率性を上方修正する。だが、あまり肩入れはするなよ」


「正直言って、あのタヌキ野郎はぶっ殺したくなる」


「同感だ。だから俺達がいる。団長もそこはわかっている。傭兵ギルドが指名依頼を出したのも、団長の正義感の強さを買ってだろうからな」


 依頼主は二つ。

 一つは領主をしている貴族。

 税を出し渋っている村があるから、他の村の見せしめに皆殺しにしろという依頼。

 当然そのままじゃ傭兵ギルトの窓口は通らないから、嘘で塗り固めた建前がある。


 もう一つは王国。

 領民に暴力を振るう貴族がいる。

 近々また動きがあるようだから、取り入って内偵し、騎士団が動く時間を稼げという依頼。

 要するにこれは、二重依頼だ。


 建前は領主のタヌキ野郎の傭兵。

 本音は王国の使いっ走り。

 正直俺は、どちらも乗り気じゃない。


 タヌキ野郎は自分の手を汚さず、傭兵にやらせて終いには盗賊の汚名を着せ闇に葬るって裏が透けて見えてる。

 王国の方も人命は二の次で、タヌキ野郎の領地を没収し、集めた金を回収する事しか頭にない。

 とばっちりを食うこの村はたまったもんじゃないだろう。

 割を食うのはいつも、弱い立場の人間。

 だが、どんな事情でも仕事は仕事だ。


「……間もなく領主の騎士団が到着する。団長は村人を逃がせと言っていたが、騎士団の数が多い。奴らは村を包囲し、実行は我々に押し付けるだろう」


「すると、逃がすのは難しい。騎士団なら魔術師もいるだろうし、どうやって包囲を掻い潜る?」


「……王国の騎士団が到着するまで粘る、か、いざとなったら包囲を食い破るしかないだろうな。仲間が外側から機を窺っているだろう。問題はいつどこを食い破るか、俺達にはわからないってことだ」


 そんな話をしていると、階下から声が聞こえた。


「お客さーん。ご飯できましたから、食堂へどうぞー」


 ここの女将さんだ。

 数日泊っているこの宿を切り盛りしている女性。

 割と好みなんだが、子持ちだ。


「……行くか。まだ猶予はある。今は英気を養うべきだ」


「……そうしますか。兄貴」


 誘われた傭兵団では、先輩を兄貴と呼び、敬う。

 新米は先輩と組まされ、仕事に当たる。

 今は俺と兄貴の二人で組んで、仕事中ってわけだ。


 階下に下りると、美味そうな匂いが鼻をくすぐる。

 テーブルには埋め尽くすほどの料理と、小さな少女。

 既に座ってまだかまだかと待っている。


「遅いよー! 早く早くー!」


「わりいな、待たせちまって」


「こら、ミー。お客さんに失礼でしょう」


「……気にしない」


 ミーは女将さんの一人娘。

 ガラの悪い俺たちにも懐いていて、飯の時はこうして一緒に食事をする。

 小さな村だし、泊ってるのも俺達だけだから、女将さんに一緒でいいかと言われたのだ。

 別に断る理由もない。


「ねーねーおっちゃん。また外の事聞かせてよ」


「だから、俺たちゃまだおっさんって年じゃねぇよ」


「ミー、食事の時は静かにするものよ」


「お母さんだって聞きたいでしょ? 私は話したもん。じゅーんーばーんー!」


「5日も迷子になって帰ってきたってヤツか。ホント、運がいいな。森が近いこの辺じゃ魔物も出るだろうによ。なんつったっけ? 泉を見に行ってたんだっけ?」


「森の奥にあるんだよ。綺麗な水面みなもで、私は見たことないけど鏡っていうのみたいなんだって」


 大体食事の時にはこうして話をせがんでくる。

 別に悪い気はしないし、隠す必要もない。

 兄貴もそう思ってるようで、俺と話す時よりも饒舌になる。

 肩入れするなって話はどこへ行ったんだか。


 食後、ミーが食器洗い係でいなくなると、女将さんが俺達を呼び止めた。


「……ごめんなさい。あの子、少し前に父を亡くしたんです。ちょっとでも気が紛れればと思って、食事にお誘いしたら……」


「……大丈夫だ。気にしていない。団欒を楽しませてもらっている」


「そう言って頂けると……ありがとうございます」


 父ってことは、女将さんの旦那ってことだ。

 女将さんだって参っているだろうに、子の心配をする。

 頭が下がるってもんだ。


 そんなこんなで数日が過ぎた。


「……ダメだな。既に包囲が始まっている。数はおよそ3000」


 伝書役の虫に括り付けられた団長からの報告書に目を通した兄貴がぼやく。


「……とてもじゃないが、数が多すぎるな。1000かそこらならいけそうなんだが」


「……お前は飛竜殺しも成したことがあるんだったな。人間は勝手が違うぞ。狡猾で、魔術師もいる」


「わかってる。だが、ぼやぼやしているとこっちも危ないんじゃないか?」


「……団長が粘ってくれているはずだ。村長あたりはもう気付いているだろうが、数の差がありすぎるな。水面下で交渉はしていると思うが……動きがあるまで待つしかない」


 そこから更に二日が経った。

 夜明け、怒号で飛び起きる。


「起きろ! 奇襲だ!」


 蹴破る勢いで鎧戸を開くと、窓の外から戦火の赤が覗く。

 同時に焦げ臭い匂いに、遠くで悲鳴が聞こえてくる。


「!? どうなってんだ!? 団長は!?」


「……動いているのは騎士団だ。団長は……しくじったのか。急いで逃げるぞ」


「包囲されてんだろう? どうやって逃げる?」


「混乱に乗じて包囲の薄い部分を突き崩すしかない。飛竜殺しの腕、期待している。行くぞ!」


 急いで装備を身に着け、客間を出る。

 階下に下りると、暗い食堂。

 息を殺し、周囲の気配を窺いながら慎重に進む。


「……まだ夜明けまでかなり時間がありそうだな」


「闇に乗じるには丁度いいが、村人はどうする?」


「……助けられると思うか?」


「……チッ」


 兄貴と食堂から野外へ出ようとしたところで、小さな悲鳴が耳に入る。


「……今の声、ミーか」


「……構うな。俺達もやられるぞ!」


「……クソが! ……悪い、兄貴」


「……ムゥ……しょうがない」


 そっと扉を開け放つと、銀色の鎧に身を包んだ一団が篝火に浮かび上がる。

 逃げ出してきた村人に容赦なく剣と矢を浴びせ、抵抗しようと農具を振るう男たちに魔法を放つ。

 タヌキ野郎の言い分は、流行り病で村は全滅した、だったか。


 割って入るには数が多すぎる。

 ここは見捨てるしかない。

 即座に建物の影に身を隠し、周囲を窺った。

 視線を走らせると、見知った姿が映る。

 女将さんとミーだ。


「あそこだ」


「……バレてるな」


 女将さんはミーを抱きながら物陰に隠れていたが、鎧を着た一団はそれに気付いているようだった。

 小隊長らしき男が気付いていない振りをしながらも、包囲するように指示を飛ばしている。


「逃がすには、やるしかない」


「……わかった。一宿一飯の恩だ。乗ろう」


 騒げば他の連中も集まってくるだろう。

 一瞬で片付けて、女将さんとミーを連れ出さなけりゃならない。

 死角から鎧を着た連中が女将さんのいる場所に近付く。

 数は五人。

 後方にも三人。


 影に乗じ、俺は駆けた。

 旅人を装ってはいたが、装備はちゃんと持って来ている。

 商売道具であり、俺の相棒。


 闇の中から、女将さんに近付く一番前の騎士に、相棒を振り被る。

 相棒は先頭のヤツの頭を捉えた。

 長首の蛇槌が、兜ごと騎士の頭を叩き潰す。


 反応される前に、続けて後ろの奴に狙いを定める。

 メコッという音と共に、潰した頭から槌を引き抜くと血振るいもせずに次の標的に振り下ろす。

 二人目の肩口を粉砕し、鎧ごと腕をもぎ取った。

 ここまでは順調だったが、ここまでだった。


 連中もプロ。

 奇襲に混乱することなく動いてきた。

 そこに割って入る影。

 兄貴だ。


「……二人死亡。脅威度を修正」


 何の縁か、兄貴の獲物も槌だった。

 戦槌バトルメイス

 それが三人目の頭を砕く。

 脳漿が飛び散り、目玉が転がる。


「急げ。援軍が来るぞ!」


「わかってる!」


 言葉少なく、背中を兄貴に任せる。

 女将さんに駆け寄ると、腕の中のミーもこちらに怯えた視線を向ける。


「急げ! こっちだ!」


「……!! ミーを、この子をお願いします」


「いいから二人とも行くんだよ!」


 女将さんの手を取るところで、背後で兄貴が更に一人仕留める。


「ミーを抱えろ。柵を越えて森の方に行くぞ!」


「あいよ!」


 背後に控えていた三人が仲間を呼びに走っている。

 もう猶予は無い。

 うずくまるミーを抱え、女将さんを引っ張る。


 そのまま建物の裏手に回り込んだ。

 魔物除けの柵を乗り越えるのに時間がかかっちまったせいで、騎士団の連中に回り込まれる。

 このままじゃ捕まっちまう。


「行け! 俺が抑える。二人を逃がせ」


「……数多いぜ。一人でいけるのか? 兄貴」


「……無理だ。だが、せいぜい暴れるさ」


「……組めて、楽しかった。ありがとう、兄貴」


「……俺もだ、……行け!」


 呆然とした女将さんの手を強く引き、森に引き込む。

 ミーは不思議な目で、兄貴の背中を見詰めていた。

 木々で兄貴の背中は見えなくなったが、やがて剣戟が聞こえてくる。

 それに振り返ることなく、闇の森を駆ける。

 やがて剣戟も届かなくなる頃、女将さんが膝を付いた。


「ハァ……ハァ……も、もう、無理です」


「まだダメだ。ここじゃ捕まっちまうぞ!」


「私は……いいので……ミーを」


「兄貴を無駄死にさせる気か!? 立て!」


「……!!」


 それを聞いた女将さんは震える膝で立ち上がった。

 だが。


「逃げられると思うな」


「……!」


 森の中から、騎士が歩いてきた。

 そうだった。

 包囲されてるってことはこの森にも……。


「ミー、ちょっと下りてろ」


「……おっちゃん」


「せめて兄ちゃんって呼べって」


 心配そうなミーを腕から下ろすと、女将さんに渡す。

 そのまま背に庇うように相棒を構える。


「……知っているぞ。蛇め。竜を屠った実力。ならば近づくものかよ」


「……!!」


 騎士の背後から、銀色の物が飛んできた。

 普段の俺なら余裕で躱せる。

 のに……。

 避ける、わけには、いかない。

 後ろには───。


「ぐお!! ……ジャベリン……!?」


 長大な投げ槍が、俺のどてっ腹を貫いた。

 ただの投げ槍じゃない……この貫通力は、魔法の……。

 そして気付く。

 これだけの長さが俺に……。

 なら……。


「か、母さん……?」


 ミーの声に、首だけ振り返る。

 俺の腹を貫通したジャベリンは、女将さんの胸を貫いていた。

 最悪だ。

 これじゃ心臓を……。


 既に事切れた女将さんの虚ろな目がミーを見ている。

 それを見つめ返すミーの瞳。


「ぐっ! ミー……走れるか?」


 腹を貫通したジャベリンを抜くために体を前に倒す。

 半分以上が刺さってる上に、女将さんにまで届いている長槍。

 引き抜くよりも貫いちまった方が早い。

 無理に体を前に動かし、背中から槍の束縛を外す。

 途端に血が溢れた。


「ミー、俺ががんばっからよ、その間に走って逃げろ。この森に泉があんだろ? そこまで行け」


 そこに仲間がいるわけでもない。

 行ったからどうなるでもない。

 でも、そう言うしか思い浮かばなかった。

 他にもっといい方法があったのかもしれないが、傷の痛みで朦朧とし、頭が回らなかった。

 だが、ミーは答えない。


「ミー、気持ちはわかるが、今はそれしかねえんだ」


 過酷な現実を見詰められないのかと思って、そう言った。

 だが、ミーの目は違った。


「……ミー?」


「奪ったな……私から」


「ミ、ミー……?」


 子供とは、思えない声だった。

 体温が消えていく女将さんの顔を覗き込み、話しかけた俺の苦悶の顔を見たミーから、表情が抜け落ちる。


「お、おい! ミー!」


 ミーは立ち上がると、ジャベリンが飛んできた方に歩き出した。

 俺は慌てる。

 状況は最悪だが、何とかミーは逃がしてやりたいと思ったから。


「……悪いが、子供だからと言って手心を加えることは出来ん」


 後ろの木々の影から、ゾロゾロと騎士が現れる。

 数は……。


「チィ! 戻れ! ミー!」


 俺は傷を庇うのも忘れ、構えた。

 ミーに追いつくために一歩踏み出そうとしたところで、またミーが言葉を発した。


「約束……私に託された……よくも!」


 初めて聞いた、激情の声。

 それと同時に、ミーの腕が伸びた。


「!? うがっ!!」


 ミーの腕が鎧ごと、騎士を貫く。

 ミーの腕は貫いた騎士を玩具のように持ち上げ、そのまま隣の騎士の頭に狙いを定める。

 二人目の眼球を貫き、頭を串刺しにし、そのまま後背の三人目の腹を貫通する。


「ま、魔物!?」


「やれっ!」


 騎士が構えるが、遅い。

 ミーの腕は更に伸び、枝分かれし、逃げ惑う騎士を的確に捉えていく。

 瞬く間にこの場にいた騎士全員を串刺しにしてしまった。

 敵がいなくなるとミーの腕はシュルシュルと元に戻り、死体となった騎士を湿った土に放り投げていく。


「……ミー……お前?」


「私は……彼女じゃない。頼まれたの」


「頼まれた? づっ!」


 状況に痛みを忘れていたが、腹に風穴が開いていたんだった。

 ミーはそんな俺に歩み寄ると、しゃがみ込んだ。


「じっとして」


「……!!」


 ミーは俺の腹に手を置く。

 嫌に冷たく感じたが、痛みにその冷たさが心地いい。

 そんなことを思った矢先、ミーの手が変化する。

 透明に、水のように。


「……これは」


「あの子は言った。私に」


「……あの子?」


「ミーという少女。私のところにきて、彼女も覗き込んだ。悲しそうな目で。顔で」


「……」


「私は手を伸ばした。ずっと私を見続けるあの子に。あの子は私を見て驚いたの」


「お前は……?」


「驚いたあの子は落ちた。そのまま冷たくなってしまった。知らなかったの。人は水の中では生きられないって。ずっとひとりぼっちだったから」


 徐々に痛みが引いていく。

 ミーの手の下から溢れる血も、無くなった。


「手を伸ばす前、あの子は言っていた。どうしてみんな笑っていられないのかって。ずっと笑えればいいのにって。

 だから思ったの。無知なばかりに死なせてしまったあの子の代わりに、せめて私が笑う手伝いをしようって。私が、あの子の代わりに、人になって……」


「ミー……」


「私はミーじゃない。人間じゃない。水の、流れの、結晶」


「……」


「もう大丈夫。傷は塞がった」


 ミーが手をどけると、腹の傷は無くなっていた。

 まだ違和感があるが、動くには問題ないだろう。


「……すまん。ありがとう」


「あなたは、笑顔をくれた。私に、あの子に、母さんに。ありがとう」


「……これからどうすんだ? 帰るのか?」


「……わからない。でも、帰りたくない、と思う。またひとりぼっちになるのは、嫌なの」


「……なら、お前の仲間がいる場所を知っているんだが、一緒に行くか?」


「……え?」


「どうする?」


「……嬉しい。ありがとう。行きたい。でも、私は、仲間よりも……」


 ミーが何か言いかけるが、背後から連中の足音が聞こえてくる。


「先に逃げようぜ。俺は、カラム」


「私、名前無い」


「じゃあ、勝手だがミラって呼ばせてもらう。俺達の仲間はこの様子じゃ全滅だな。傭兵団はこれで退団。フリーに戻るとする」


 俺はミーの、いや、ミラの手を取った。

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