第11話 戦闘

魔物の話をしてから一年が経過した。世界樹の周りはかなり自然が増えているがそのほかの地はまちまちといったところだ。悠真の能力も向上し、草木を芽吹かせられる範囲が増えてはきているがそれでも世界は広い。そんなことは些細なことと言わんばかりだ。


「悠真、人間たちのコロニーを観察してきたがどうやら魔物と戦闘しているみたいだぞ」


たびたび人間たちの様子を見に行っているグリフォンからの報告だ。


「それで戦闘はどんな状況だったの?」


ドライアドとして数年に渡り生活してきたことで人間への関心は少し薄れ気味の悠真であったがそれでも他の生物よりは心配している。そのため一応戦況を聞いた。


「人間側の圧勝だな。相手はゴブリン。戦闘力は低いが数で攻めてくるタイプの魔物だ。それに繁殖力が強い。今は捕食者が少ないためどんどん数を増やしていくだろうな。それに巻き込まれないとも言い切れないな」


「魔物が増えるってそれは魔力の淀み的には大丈夫なの?」


「あまり好ましくはないな。魔物が増えると自然を破壊することも多い。過剰に破壊することはないが魔力は淀みやすくなるだろうな」


悠真は何かうまい方法がないか考えるがそういう時はたいていがうまくいかない。


「よし。少しずつ援護してゴブリン達は埋めて草木の栄養源にしてしまおう」


「それが良いか。それで悠真はついてくるのか?いくら格下の相手とは言え子供を連れて行くのはどうかと思う場所なのだが」


「僕はいかないよ。後処理が終わって草木を芽吹かせられる状態になったら呼びに来てくれればいいかな」


そう言うとグリフォンは明らかに安心していた。流石に血や死体などを子供である悠真に見せるのは気が引けていたのだ。


「あ、でもあまり人間たちのコロニーの近くで暴れるのはよしてね。援護しているのが分からない範囲、かつギリギリ人間が生き残れる範囲でお願い」


悠真の言いたいことは分かるグリフォンであるが念のため理由を聞いておく。悠真の返事はこんなものだった。


「人間たちに加担している僕達という存在が認知されたくないからね。ばれるとなにかと崇拝して助けを求めるようになりそうだし、そんなのはゴメンだからね」


グリフォンも同意見だった。そして、悠真も何か考えて行動しているんだなと感心してしまうグリフォンたちであった。


「それでは今晩にでもデュラハンとともにゴブリンを討伐してくるぞ」


「よろしくね。あと話は戻るけどなぜ人間がゴブリンに圧勝できているの?」


「それは人間が栄えていた際に用いていた兵器の一部を保管していたようだ。遠距離から攻撃ができるようでゴブリンがバタバタと倒れていたぞ」


悠真には拳銃が思い浮かんだ。しかし、それならば弾数に制限があるはずである。それをこんなところで大量に消費するような真似をしてよいのだろうかと考えた。しかし、ここは自分がいた世界とは異なり魔力や魔石といったものが存在する世界だ。何か供給する手立てでもあるのだろうと思い、考えることを止めた。


そして夜、グリフォンとデュラハンがゴブリンの討伐に向かっている時、悠真はカーバンクルのモフモフを堪能して眠っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る