第10話 魔物

グリフォンから人間についての報告を聞いた後、(ちなみに悠真はカーバンクルをモフるのに夢中でやはり聞いていなかった)とりあえずは人間の周辺の土地へは出向くことを止め、もっと広範囲に草木を芽吹かせていくことにした。


その理由は、人間以外にも動物や魔物といった生物が他の地に点々と見受けられるようになったとのグリフォンからの報告があったためだ。まずは海の近くに草木を少しずつ芽吹かせることになった。


悠真は魔物について全く知らなかったためグリフォンに質問する。

「魔物ってどういう存在なの?」


「魔物とは魔力の淀みに動物などの生物が長くいると進化を促されて誕生した生物だ。この世界では、魔力の淀みが多くあるため今は魔物が誕生しやすい環境ともいえる。動物との違いは魔石の有無の一点だ。しかし、魔石を持っていることで周囲の魔力を蓄える力を持っている。並みの動物では手も足も出ないのが通常だ」


「僕も魔力を持っているよね?それって魔物ってこと?」


「魔力と魔石は違う。魔力は周囲の魔素を取り込んで自分の属性に変化させ使用する力のことを一般に言う。魔石とは魔素を取り込むだけで使用することは一般的にはない。その常識の範囲から出たものを神獣と呼ぶのだ」


「つまりグリフォンには魔石があるの」


「あるぞ。体内の奥深くにあるため、見せることはできないがな」


ほうほうと頷く悠真であったが周りのみんなは本当にわかっているのかという目で見つめている。


「じゃあ魔力の淀みって何?」


悠真の話の確信を着くような質問に先程見つめていた者たちの目が見開かれたが悠真はいたって気にせずにグリフォンの話に集中する。


「魔力は地水火風と光闇の六属性に変異しやすい。そして生物の負の感情、まあ弱肉強食の世界だ。そのような感情など数えられない程あるのだが、その感情の闇の属性になってしまった魔力を淀みという。昔であれば草木などの自然や感情のない微精霊や妖精がその魔力を使っていたのだが、今は荒地となっており微精霊などもほとんどいない。そのため魔物が現れやすい状態となっているのだ」


うんうんと頷いている悠真であったが緊張の糸が切れたのか近くにいたカーバンクルを捕まえてモフモフし始めた。それを見てやはり分かっていなかったとなぜか安心してしまうピクシー三人娘だった。


グリフォンは悠真の顔を見て、一応自分の役目を理解していると判断した。まあ等の本人は気長にやればいいかと楽観的に考えていたが・・・


しかし、世界に空白地帯が多い今、魔物は繁殖能力を最大限に強化し生存領域を広めていた。助けた人間たちに魔物が近づくのはそう遠くない未来であった。

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