第8話 モフモフ(願望)

カーバンクルたちが現れてから三日が経った。その間、悠真はリンゴの木一本を集中して育てていた。まだまだだがこの木が実をつけるようになればカーバンクルたちの食料が安定すると思ってのことだ。


他には世界樹の近くに大きな湖ができた。そのため、悠真やカーバンクルたちは水浴びの習慣ができつつある。悠真はまだ歩くことができないため移動はデュラハンに任せている。ときおり、グリフォンも背中にのせて空を飛んでくれることもあり、前世では体験できなかったことが体験できている。


荒廃した世界の夜はかなり寒い。今までは世界樹のゆりかごで生活していた悠真であったが仲間が増えたことでゆりかごから降りて生活することが多くなった。眠るときもグリフォンを背にしてカーバンクルたちに群がられて眠る。しかし、悠真にはまだ不満があった。カーバンクルたちの毛がまだ硬いのだ。悠真はモフモフを欲していた。そのため、目下の目標として木を加工して櫛を作ることとしている。しかし、リンゴの木を育てるのに魔力を全力で注いでいるためまだ一歩も踏み出せていないのだが・・・


そんなのんびりとした日々を過ごしていたが、グリフォンから人間について話がでる。


「今、人間のコロニーの様子を見てきたが、どうやら人間たちは地面を掘って住居を作り始めたようだ。周りには湖があり、食料はどこから手に入れたのかはわからないが何かを口に入れているようだった。しかし、それでも長くはもたないであろう。それで質問だが悠真は人間を救う気があるのか?」


その問いに悠真は悩む。悠真は人間が今苦しんで生活しているのは、人間の自業自得だと思っている。一方で元は人間の悠真だ。助けたいという気持ちもあった。


「人間は近くに草木が芽生えたとして、それを大切に扱うと思う?」

悠真はグリフォンへと問いかけた。グリフォンは悩んだが返事を返す。


「ある程度の時が経つまでは大切に扱うだろう。だがかつて人間の周りに自然が身近にあった時のように豊富に草木が繁殖していた場合は同じことを繰り返すだろう」


悠真はそうかもしれないと感じた。だが今、この草木を大切に思う可能性があるのであれば助けてもいいかもしれないと感じた。


「僕は、人間を助けてもいいと思うよ」


そう言うと全員が驚いたような、それでいて納得した顔をした。


「それでどうやって助ければいいのかな?」


悠真のこの言葉を聞いて、グリフォンを除く全員が唖然としていた。


「まずは、夜に人間のコロニーから少し離れたところに草木を芽吹かせてみようか。人間の食料がどれだけ持つかわからないので、できれば食べられるものが良いだろう」


他に案もないため今夜グリフォンの案を決行することとし、それまではいつも通り過ごすのであった。

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