第6話 今後

どこか遠くを見つめている悠真にグリフォンが尋ねる。


「精霊樹に持ち込んだ草は、枯れはしないが成長もしなかった。その原因を知りたいので悠真よ。一度力を使い草木を芽吹かせてくれないか?」


悠真は無言で頷き、まだ荒地となっている部分に力を使い草木を芽吹かせた。その様子を見てグリフォンは納得のいった空気を醸し出していた。


「悠真の力には草木を芽吹かせるのと同時に魔力を植物に必要な栄養素に変換する力があるようだ。そのため精霊樹の周りは草木が多少なりとも成長しているのだろう。逆に精霊樹の元に持ち帰った草は必要最低限の栄養素しかないために成長することを諦めて、命をつなぐことに力を注いでいるのだろう」


それを聞いたスカラは残念がっていたが、ピクシー三人娘が刈り取った草木を見て不思議そうに尋ねた。


「この草はなぜ刈り取ってしまったのですか?」


その質問にはピクシー三人娘が答える。


「肥料にするのよ」


「土は枯れた草を埋めて微生物が分解することで養分を蓄えるの」


「・・・命の循環」



それを聞いたスカラは目から鱗が落ちた。普段は精霊樹の世話しかしないスカラは植物や土地についての知識は少ない。そのため土地が痩せているという考えを持ったことはなかったのだ。


「それではその肥料が完成したら私に分けてもらえませんか?」


「それは構わないのよ」


「世界の自然を取り戻すためには当然のこと」


「・・・だけどまだ成功するかわからない」


ヒニーカの言葉にスカラは少し残念そうな顔をしていたが、悠真がそこへ助け船を出す。


「枯れたものでいいのなら木の葉が落ちたものがたくさんあるから持って行ってもらえば?季節がくればまた落ちるだろうし少しなら持って行ってもらっても問題ないんじゃない?」


その案は皆に賛成されスカラは早速と言わんばかりに木の葉を集め始めた。しかし、運ぶには袋のようなものが必要だと集め終わってから気づき、スカラは落胆、他の皆は苦笑いをしていた。


その時、世界樹も不憫に思ったのか、蔦で編んだ袋をスカラの前に放り出した。スカラは感謝してその蔦の袋に木の葉をつめた。


「悠真殿、ピクシーたちよ。世界樹よ。協力感謝する。草の様子は定期的に来て知らせることにするが今日はこれで退散させてもらう。この御恩はいずれ返すので覚えておいてくれ」


そう言い残し、スカラは飛び立っていった。残ったみんなはスカラの態度の変化にやはり苦笑いしていた。


しばらくの間、そのような弛緩した空気が漂っていたが、グリフォンの言葉でみんな真面目な空気へと変化する。


「あやつのことはさておき、今後の予定はどうする。今のままでは草木を回復させるのに何百という年月が必要だろう。我はそれでも回復するのであれば構わないが悠真達にはそれほどの年月生きられるとは限らんだろう」


「僕は神様から不老にしてもらったから殺されなかったり、病気にならなければ生きられるとは思うけど」


その言葉にその場にいた全員の顎が外れていた。

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