第4話 スカラ

鷹の頭をした有翼の人型精霊は地上に降り立ち、周りが草木で囲まれていることに感動しているようだった。


「精霊樹様から神託があり、確認に来たがこれほど草木が芽吹いているとは」


そこへピクシー三人娘が言葉を投げかける。


「これは世界樹の落とし子がなしたことなのよ」


「だから勝手に持って行ってはいけないんだから」


「・・・なにしにきたの?」



突然話しかけられた精霊は驚いた後、ピクシー三人娘に挨拶する。


「突然の訪問、大変失礼した。私はスカラ。精霊樹様の身の回りのお世話を任されている者だ。今回は精霊樹様からの神託により、世界樹の周りに自然が芽吹き始めていることを知り確認するために訪問した。それで先程の世界樹の落とし子なる者に合わせてはもらえないだろうか?」


スカラの丁寧は挨拶に三人娘は毒気を抜かれてしまった。そして三人そろってゆりかごの方を指さす。


スカラは指さされたゆりかごをのぞき込むと悠真と目が合った。スカラは本当に落とし子と呼ばれた存在が本当に赤子だったことに驚いた。まだ話せる年齢ではないと判断したスカラはピクシー三人娘へと話しかける。


「この子が世界樹の落とし子か。それでこの子はどのような力を持ち合わせているのだ?」


「なんだか、植物を成長させる魔力を持っているらしいよ」


悠真は自分の相手をしてもらえないことに少し苛立った口調でスカラへと念話で話しかける。


「ほう。その歳で念話を使えるのか。流石は世界樹の落とし子だな。それでその力はどの程度の効力を持つのでしょうか?」


「世界樹の周りの草木を一年かけて芽吹かせる程度だよ」


スカラは少しがっかりした表情を見せた。確かにこの辺りは今は失われた自然が芽吹き始めている。しかし、一年でこの範囲しか回復できていないとなるとこの世界の自然を取り戻すためにはどれだけの年月がかかるのかと考えたからだ。だが少なからず今までよりは事態が好転していると考え、悠真にお願いをすることにした。


「世界樹の落とし子殿。大変不躾なお願いではあるが、この周辺の草木の少し私に持ち替えさせてもらえないだろうか」


「いいよ。それと世界樹の落とし子じゃなくて悠真って呼んで」


そこへピクシー三人娘が話に割って入る。


「そんな簡単に決めていいの?」


「この植物たちの種は世界樹が作り出したものなのよ」


「・・・それに何か対価が欲しい」



三人娘の言い分もわかるスカラは何か対価になるものを考えていると、草の芽吹いた地面の一角が急にひび割れた。それを見てピクシー三人娘は諦めたようにこう話す。


「どうやら世界樹の許可が下りたようなのよ」


「こうなっては私たちには止められないわ」


「・・・もうすぐ人間たちが目覚める・・・護衛が欲しい」


最後のヒニーカの言葉にスカラは反応した。


「人間が目覚めるとは本当なのか?」


「たしかもうそろそろだったわよね?」


「私は覚えてない」


「・・・あと一年くらい後には」



「では、お礼に護衛の精霊を悠真の元に連れてくることを約束しよう。急の訪問にも関わらず植物を分けていただき大変感謝する。それでは私は一旦帰らせてもらう」


そう言うとスカラは割れた地面を両手で抱え、空へと飛び立っていった。


「それより人間が目覚めるのがあと少しなのを忘れていたわね」


「もう兵器の類は残っていないはずだからこれ以上状況が悪化することはないとは思うけれど」


「・・・万全は期すべき」


珍しく三人娘がこそこそと話していて暇になった悠真はゆりかごの中で眠りに落ちていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る