第49話


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 名前 山野辺やまのべ 春香はるか

 性別 女

 年齢 17

 レベル 8


 生命 1

 身体 1

 精神 2

 技能 1


 所持装備

 ホーリーステッキ

 十字架の首飾り


 所持スキル

【回復師】【超魔力】


 所持マップ

《神秘の森》


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 ステータスを確認してみると、まさに回復役としてはこれ以上ないといえるようなスキルや装備を持っていた。これだけのものを彼女一人で揃えるのは難しそうだし、誰かの協力もありそうだな……って、なんかがあると思ったら、これは……。


「透さん、どうしたの? そんなにびっくりした顔して……」


「い、いや、なんでもないよ」


「そう。よかった……」


「…………」


 残り6名のイニシャルの中に、H・Yとあったんだ。この山野辺春香とかいう女の姓名と一致してるが、これはただの偶然なんだろうか? 今のところ、陰湿ないじめをやってるようには到底見えないが……。


「ねえ、透さん、あれから元気にしてた?」


「ん、あ、あぁ、なんとかね。そっちは?」


「私なら大丈夫だよ。大泣きしちゃって、自傷行為リストカットまで至ったんだけど、もう全然平気」


「そ、そうか……」


 あのあとっていうのがよくわからないのでなんともいえないが、彼女の台詞の端々に混沌カオスなものを感じるのも確かだった。


 それにしても、やたらと俺のほうに体を寄せてくるのが気になる。教室前の廊下という人目につくような場所だから居心地が悪いが、今の俺はあくまでもいじめられっ子の浦間透だからな。相手のなすがままにして様子を見るしかない。


「ごめんね、また性懲りもなく甘えちゃって。でも、許して……」


「あ、あぁ」


「よかった……。私、やっぱりといるより、透さんといるのが一番落ち着ける気がする」


「あんなやつ……?」


「あ、ごめんね。あいつのこと、透さんは思い出したくないよね……」


「そ、そうかもしれない、かな」


 あんなやつというのが誰かわからないので言葉を濁すも、段々と彼女との間に何があったのかが見えてきたな。


「でもね……ああ見えて実はいいところもあるんだよ」


「そうなの?」


「うん。はぁ……こういうところが私の悪いところだよね。何度も喧嘩しても、たまにあいつが優しいところを見せてくるもんだから許しちゃう。別れたほうがいいよって友達にもよく言われてるのに……」


「そ、そっか。春香さんも大変だね」


「ぐすっ……。辛いけど、一応恋人同士だからね。でも、今度また何かあったら、次こそは別れて透さんと付き合おうって思うの。前にも言った気がするけど――」


「――おい、春香っ!」


「「あっ……」」


 まるで図ったかのように、そのタイミングで一人の男子生徒が怒鳴り声とともに現れた。


「どこにいるのかと思ったら、またそいつと会ってたのかよ! そんなクソみてえないじめられっ子の蛆虫、どこがいいっていうんだ!?」


 この激怒具合はもう、女の恋人とやらで間違いないだろう。


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 名前 谷口たにぐち 翔也しょうや

 性別 男

 年齢 17

 レベル 9


 生命 1

 身体 2

 精神 1

 技能 1


 所持装備

 トマホーク

 アイアンメイル


 所持スキル

【怪力】【防御力上昇】


 所持マップ

《霧の渓谷》


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 やつのステータスをチェックすると、谷口翔也といってS・Tというイニシャルと一致していた。ビンゴだ。一人なら偶然の可能性も考えられるが、つがいなら話は別だ。


「おい、黙ってないでなんか言えってんだよ、てめえ、また他人の女に手出してんのかよっ!?」


 男が俺のほうに詰め寄ってきたかと思うと、酷く興奮した様子で胸ぐらを掴んできた。


「ち、違うのっ、翔也君っ! 透さんには相談に乗ってもらってただけ――」


「――うるせえっ! 春香、お前は引っ込んでろってんだよ! 前にもおんなじこと言ってたけどよ、べったりくっついてまるで恋人同士みたいだったじゃねえか!」


「……そ、それは、そのぉ……」


 気まずそうな顔で口籠る山野辺春香。いや、なんでそこで黙るんだよ。まるで火に油を注ぐかのような対応の仕方だ。


「どうせ、この浦間透っていうクソ野郎が寝取ろうと思って声かけてきてんだろ、なぁ、おいっ!」


「ぐあっ……!?」


「いやあああぁっ!」


 俺は谷口とかいう男から一方的に暴力を受けるも、女は悲鳴を上げるばかりで庇ってくれることも、ましてや回復してくれることもなかった。


 さらに奇妙なのが、こういう人目につく場所でこれだけの騒ぎを起こしてるというのに、通りがかるやつがいても誰一人止めるどころか気に留める素振りすらないってことだ。


「おらぁっ、死ね、くたばれっ! クソのいじめられっ子の分際で、俺の彼女を寝取ろうなんて、100年はええってんだよおおおぉっ!」


「も、もうやめてよおおおぉっ!」


「…………」


 ってことは、この光景は日常茶飯事ってところなのか……? 壁や床に叩きつけられる際、バレないように受け身を取っているから大丈夫だが、それでもダメージが結構重く感じるのは、男の所持スキル【怪力】のせいもあるのか。


 それにしても、こんな見え透いた悲劇のお姫様ごっこと王子様ごっこが続けば誰もが目を逸らすはずだし、オリジナルの浦間だって死にたくもなるだろう。


 もう充分だ。こいつらの罪状については痛いほどよくわかった。前回はモンスターに邪魔をされたが、今回は俺の手で確実に仕留めてやる……。

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