第40話
「…………」
俺は恐る恐る、自分のスマホの画面に視線を移してみると、そこには『魔女の帽子を獲得しました』というメッセージが表示されていた。
なるほど。ふんわりとした輪郭が一瞬見えたのはそのためか。防御力と魔力が少々上がるとのこと。そんな帽子の隣には、【飛躍】スキルの影響か不敵な笑みを浮かべた少女のアイコンが表示されていた。
まさか、狐色のホウキがシフォンになったように、魔女の帽子が従魔まで【飛躍】したんだろうか? 彼女と比べると獣耳とかはなくて、よりあどけない印象を受けるが。
とりあえず、どんな子なのか確認するべくアイコンをタッチしてみよう。
「――あ、あれえ……? なんでわたし、こんなところにいるのぉ……?」
その第一印象は、黒いローブを身に纏った迷子の幼女だった。大胆不敵な感じのアイコンとは違い、涙目になって周りをキョロキョロと見回してることから、俺は無理矢理彼女をここまで連れてきた誘拐犯のような気分になってしまう。
というわけで、俺はまず自分たちの事情から話すことに。
「――と、こういう事情があったんだ……」
「なのです……」
「…………」
話の途中までは露骨に警戒している様子の幼女だったが、説明が終わる頃にはこっちの言い分を大分理解してくれたのか、表情も次第に柔らかくなってきた。
「なるほどねぇ……。トールだっけ? わたし、あなたの従魔になっちゃったってことだね。ま、一応魔女の血を引いてはいるけれど。おもしろーいっ」
先程までとは打って変わって余裕の笑みを見せる小さな魔女。割りと人懐っこい子なんだろうか。
「わたしね、マジェリアっていう名前で、立派な魔女を目指しておばあちゃんの家がある森の奥で修行中だったんだけれど、なんだか飽きちゃって」
「「飽きた……?」」
「うんっ。刺激が足りないっていうかぁ、もっとこう……殺伐としたものが欲しくって、それで退屈な森を抜け出そうかなあって思ってたとこなの」
「「なるほど……」」
いわゆる、魔女の血が騒いだってやつなんだろうか。ただ、それなら迷惑になってないどころかちょうどよかったのかもしれない。この学校ほど
「あ、そうだ。これいるか?」
俺は手に入れたばかりの防具のアイコンをタッチし、手元に出現させる。
「え、何それ、超かわいーっ!」
大きな魔女の帽子を嬉々として被る幼女。体格的にアンバランスなのに妙に似合ってるのは、彼女が幼いとはいえ魔女だからなのか。おまけに、ウィンクしたかと思うと俺の膝に乗ってくるほどの喜びっぷり。
「あはんっ……。わたしのこと、マジェって呼んでね?」
「ちょっ……」
おまけに股間まで触ってくるのは、さすが魔女ってところなのか。
「みゃっ。いけませんよ、マジェさん? まだ子供なのにそんなことしちゃ――」
「――うるさい、狐のおばさん」
「こ、こんっ……!? これでもまだ十代前半ですよっ!」
「ふん。わたしからしてみたらおばさんだもん。ね、旦那様ぁ?」
「お、おいおい……」
しかも旦那様って……なんだか凄くマセた子だなあ。口も悪いし……。まあよくよく考えたら彼女、バイオレンスを好む魔女だし仕方ないのか。
って、そうだ。俺はすっかりシフォンが平野のためにアイテムを選択してたことを忘れてた。それだけこのマジェリアって子の存在感が鮮烈すぎたっていうのもあるが。
「ところで、シフォンは何を獲得したんだ?」
「……え、えっと……それが……」
「ん? まさか取れなかった?」
「どうなの、狐さん? まさか、取れなかったなんて言わないよね。んー?」
なんか俺がマジェリアと一緒にシフォンを責め立ててるみたいな空気になってしまった。
「……みゅ、みゅうぅ……取れたのは取れたのですが……こういうものでして……」
シフォンからためらいがちにスマホを渡され、画面を確認してみると、なんとも際どい防具のアイコンがそこにはあった。一見ふんどしにも見える、いかにも軽そうでそれでいて防御力は何故か高そうな、お尻やおへそが丸出しになる腰布だった。【魔眼】で調べると、やはり予想は当たっていて防御面で特に優れてるらしい。まあ目に毒だしな……。
「……で、ですが、トール様が望むのでしたら、着ますっ……」
「お、おいおい、それは平野の装備だし、別に無理しなくても……」
「わたし、よく知らないけれど、それってヒラノって人のものなんでしょ? なんで狐さんが着ることになってるのー?」
魔女っ子の鋭すぎる突っ込み。これにはシフォンも恥ずかしかったのか耳まで赤くなった。
「うー……。せ、責任は取らないといけないと思いましてぇ……」
「ふん。旦那様を悩殺したいだけのくせして」
「そ、そんな――」
「――わたしが着るから、それちょーだいっ」
「「えぇっ……」」
そういうわけで、マジェリアが際どい格好をすることになったのだが、何故かこれも妙に似合っていた。これも、エロさとあどけなさが巧く調和されて魔女っぽくなってるからかもしれない。
「ああんっ。そんなに見ないでぇっ……」
「「……」」
セクシーなポーズを取る小さな魔女に対し、俺はシフォンと苦い笑みを向け合った。また騒がしい仲間が一人増えちゃったな……。
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