第20話
俺はあのあと、朝飯を頂戴するべくシフォンとともに食堂へ来ていた。
さぞ混んでるかと思いきや、みんな普通に席について食べていたので驚いた。食堂のおばちゃんによると、二回目のスキルの選択でビビらせる効果の【威圧】を貰ったそうで、それがかなり役立ってるんだとか。
俺も試しに使ってもらったら、おばちゃんが当時の殺し屋のライバルに見えて背中に冷や汗が流れた。こりゃ大人しくなるわけだ。
でもそのおかげで在庫のパンやおにぎりを独り占めにしようとするやつらが減るだろうから助かる。スキルで自給自足とかができるなら別だが、そうでないなら食料については死活問題だからな。
「みゃ~♪ トール様、焼きそばパンって本当に美味しくて止まらないですね~」
「そうかそうか、そりゃよかった」
「はひっ。はむはむっ。うみゃうみゃ~」
「ははっ……」
シフォンは相変わらず焼きそばパンが大好きな様子。一応、食堂にはきつねうどんとかもあるんだけどな……。
彼女と一緒に食事する際、別々にしたほうがいいかなとも思ったんだが、この通り隣に座ることにした。
というのも、既にこの子が俺の知り合いなのは知られてるわけだからな。それも、陰キャ友達で相手にされてないとかいう勝手な解釈を添えられて。
ま、それならそれで舐められたままだから却って都合がいい。残り9名のイニシャル持ちも、シフォンを気に入って近付いてくる可能性もあるしな。いじめられっ子の俺からこの子を奪うのは容易いと思うだろうし。岡嶋らは例外だろうが、女の子に一方的にやられた事実なんて恥ずかしくてわざわざ他言しないだろう。
『――お前たちに報告することがある』
お、早速来た。時空の番人の声が響いたことで、食堂のおばちゃんも含めてみんな挙ってスマホやタブレットを取り出すのがわかって微笑ましかった。
『今回、お前たちが選べるのは武器だ。前回は武器とはいえないものも紛れ込んでしまったから申し訳なかった』
「…………」
多分、それって狐色のホウキのことだな。まあ、あれがあったおかげでシフォンを手に入れることができたんだが……って、今回はまた武器なのか。俺は近接用としては桧山から奪ったナイフがあるからいいとして、遠距離用の武器とシフォン専用の武器が手に入れば最高だな。ホウキじゃ物足りないし。
「「「「「……」」」」」
それまで騒々しかった食堂内が嘘のように静まり返る中、スマホが武器の選択画面に切り替わるのがわかった。
おいおい……なんの武器かわからないくらいのスピードで消えていくぞ。ほぼ一瞬で消えたので右方向にスライドしていったら、そこにあったアイコン群もまたたく間に消えてしまった。早押しクイズじゃあるまいし、やはり目についたものを片っ端からタッチしてるとしか思えなかった。
だが、それでも俺の考えは一貫して変わらない。適当に選ばなかったからこそ今があるはずってことで、上下左右にスライドしつつ慎重に良いものを選ぶことに集中する。
「こ、こんっ!? トール様、早く選ばないと、全部消えちゃいますよ~!?」
「大丈夫だ」
隣でシフォンが画面を見て焦ってるが、俺はこれだと思ったものを見極め、素早くタッチしてみせた。
『手投げ矢を獲得しました』
「あれ……」
見た目のアイコン的に槍だと思ったら、まさかの手投げ矢か……。
手に入れたアイコンをタッチすると、手の平に収まるほどの小さな矢だった。こりゃ、ダーツみたいなものだな。微妙な感じもするが、投擲用として使えることもあるかもしれないので持っておこう。見失ってもアイコンをタッチすれば手元に戻るわけだし。
って、そうだ。俺には【飛躍】があったんだ。画面を再度確認すると、手投げ矢アイコンの隣に弓のアイコンがあった。おお、これは良さそうだな。早速【魔眼】でどんなものか調べてみるか。
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武器の名称 念動弓
効果 自分と味方以外は目視できない念矢を放つことが可能。追尾能力を有し、障害物は貫通し、対象が生物のみ効果を発揮。
殺気を溜めると念矢が大きくなり、威力も上昇する。精神の値が上がれば上がるほど弓手の持つ殺気がそのまま反映され、最初から溜めずに強力な念矢を放つことができる。
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「「おおっ……」」
シフォンと驚きの声が被ってしまった。【飛躍】のおかげで最高の遠距離武器を手に入れることができたな……。
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