第14話


「浦間透、さっきは中々格好よかったわよ!」


「えっ……?」


 俺が自分の席でスマホを眺めていたら、クラスのアイドルの平野迅華に声をかけられた。


「え、じゃないわよ。とぼけちゃって……」


「いや、純粋にわからないんだが。格好良かったって、何が?」


「あんたね、その歳でボケちゃってる!? 梶君に冷やかされて反撃してたでしょ!」


「あー、あれか……」


 梶とかいう不良っぽいやつに煽られて、口でやり返したことか。


「やっぱり、あんたの中身違うんじゃないの?」


「え……?」


「だって、高校生とは思えないくらい妙に落ち着いてるし、【飛躍】スキルで性格が変化したんなら、あたしの【剣士】スキルみたいにすぐ元に戻りそうだし、これだけ長続きするのはおかしいわよ」


「…………」


 この子、やっぱり勘が冴え渡ってるな。けど、俺の中身が元殺し屋のおっさんだって知ったら少なからずショックを受けるだろうし、何より説明するのが面倒だから言わないでおく。


「あんたの言う通り、無抵抗のままじゃいけないと思って勇気を出したんだよ。それとも、元のいじめられっ子のままのほうがよかったのか?」


「そ、そうじゃないわよ! ただ、人はここまで変わるものねって驚いてるだけ。こっちのほうがいいに決まってるわ!」


「そうか」


 でも平野のやつ、どことなく寂しそうなんだよな。もしかしたら、口じゃ俺に抵抗しろなんて言ったものの、本音としてはいじめられっ子の世話をして少しずつ成長する姿を見たかったのかもしれない。


「てか、浦間透はどんなスキルをゲットしたわけ?」


「ん、これだよ」


 平野にはもう今更隠す必要もないだろうと思い、俺は自分の獲得したアイコンを見せつけてやる。


「す、すごっ! やっぱりあたしの思ってた通りね。そういうわけだから、この【飛躍】っていうスキル、今すぐあたしに頂戴!」


「嫌だ。てか、やりたくてもやれないだろ……」


「冗談に決まってるでしょ! というかね、【覗き】スキルって……なんてもん獲得しちゃってるの……!?」


「おい、声が大きいぞ」


「これでも控えめよ。このドスケベ……!」


 恥ずかしそうに両手で体を隠そうとする平野。【覗き】スキルって口にしたところで小声になるところなんかは気を使ってる感じが伝わってきた。


「そう言われてもな……。もう見ちゃったもんはしょうがない」


「え、え? あたしのも見たってこと?」


「さあなあ? 見たかもしれないし、見てないかもしれない」


「あ、あんたねえっ! じゃあ、こっちもあんたの大事なところ、見せてもらうわよ!?」


「お、おいおい。見てないかもって言ってるのになんでそうなるかな」


「男子の言う見てないは見てるのと同義よ! 逃げようたって無駄よ? ほら、あたしのスマホも見なさい。【武闘家】スキルをゲットして身体能力が上がったんだから、無理矢理脱がしてやるわ!」


「ほうほう。【武闘家】スキルか。身体能力が上がるってことは、手が滑って剣を落としたとしても素手で戦えるだろうし、筋力が強化されるわけだから【剣士】スキルとも相性が良さそうだな」


「ふふっ。でしょお。もっと崇めなさい――」


『――体育館にてモンスターが発生したゆえ、お前たちに報告する』


 平野が腰に手を当ててしたり顔をしたタイミングで、時空の番人の声が脳内に轟いた。今回はスキル獲得からモンスターが出現するまであまり時間がかからなかったな……って、俺の腕を平野が引っ張ったかと思うと走り始めた。【武闘家】スキルがあるためか、凄い力だ。


「浦間透っ、行くわよ!」


「お、おい、平野迅華、組むのはお前がもう少し強くなってからって言ってただろ!」


「そうだけど、早く【武闘家】スキルが【飛躍】スキルでどうなるのか試してみたいし、こうして一緒にいるんだからいいでしょ! それに、シフォンだっているんだからなんとかなるわよ!」


「それって、結局俺たちに頼ってるんじゃないか……?」


「いいから! それともあたしを見殺しにする気!?」


「はあ……」


 まあいいや。俺も【魔眼】スキルをモンスターに試したあとシフォンを召喚して倒すつもりでいたし、平野もいたほうがいいかもしれないしな。

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